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File-76 マッハ実証主義と唯物論が連繋

思想新聞2003年4月1日号 共産主義は間違っている!!

摩訶不思議な「人権真理教」国・ニッポン 30

全体主義の危険暴くポパー

Q この「現代思想の系譜」図(前回参照)は、マルクスとフロイト、ニーチェの影響が現代思想に与えた影響について、確かにわかりました。が、全体的に煩雑でわかりにくい。少し解説してもらえませんか。

 この図(講談社「現代思想の冒険者たち」編集部作成)は、あまり精確なものとは言えず、混み入っていてわかりにくいものですが、大まかな流れとしては理解できると思います。
 これらの中では、とくにファシズム・スターリニズムなどの全体主義的立場(マルクス主義を含む)を徹底的に究明し、異を唱えたのが、カール・ポパーとハンナ・アレントでした。
 ここに欠けているものとしては、ダーウィニズムとエルンスト・マッハの実証主義にもとづく機械論的自然観と言えるでしょう。実はこの立場は、20世紀初頭においてはきわめて有力な考え方、価値観でした。
 しかし第一次世界大戦でのヨーロッパを中心とした世界的荒廃によって、「西欧の没落」が露わになると、ヨーロッパでは一様に「(文明・文化の)危機」が唱えられるようになりました。哲学では、現象学を拓いたフッサールや神秘主義の流れを汲み有機体論的思想を説くベルクソンなど、そしてキリスト教神学ではカール・バルトらによる「危機神学」(弁証神学)が登場し、時代的思潮をリードしました。危機神学のバックボーンにあったのは、キルケゴールの実存主義で、実存主義哲学も20世紀前半の思想界に大きな影響を与えました。
 しかし実存主義のもつ理屈よりも非合理的なものを認め、観念よりも実践を重んじるスタンスは、宗教性を排除しマルクス主義的唯物思想と結びつくことによって、「社会運動」を引き起こしました。

イラク・フセイン体制とQOL

 とにかく「生きることが即、善」のように見なされているのが、現代社会のコンセンサスとも言えます。しかし、20世紀も終わりになってようやく「生きることの質」(QOL=Quality of Life)が指摘されるようになってきました。しかし、QOLという場合のそれは、例えばかつてソクラテスが説いたところの「よく生きる」とは重なり合いません。せいぜい医学生理学用語としかみなされていないのです。「どのように生きるのか」というとき、そこには倫理的なものは現れてきません。ですから今日、「バイオエシクス(生命倫理)」(Bio-Ethics)という言葉も、用いられるには用いられていますが、あくまで「生命」についてであって、「人生」(Life)については、倫理的なものの「介在」というのはきわめて困難になってきていると言えます。
 例えば、ついに戦端が開かれた米英のイラク攻撃ですが、唯々諾々と独裁者サダム・フセインの意のままに体制を維持することが、果たしてイラクの人々にとって高いQOLを得られることになるのでしょうか。そして「米英憎し」のあまり、いわゆる「人間の盾」としてイラクに赴く人々は、それこそ「人権意識」のかけらすらないフセインに「人質」として利用されるのを承知で行くのでしょうか。仮にそうした行為によりフセインが感動し「改心」するならすばらしいことですが、宗教的背景がない限りあり得ないでしょう。

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