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ステルス技術 中国のスパイ活動を見逃すな

この記事は2011年1月30日に投稿されました。

米ハワイ州の連邦裁判所は1月24日、巡航ミサイルをレーダーに探知されにくくするステルス能力に関する軍事情報を違法に中国政府に提供したとして、元技術者ノシル・ゴワディア被告(66)に対し禁錮32年の判決を言い渡した(AP通信など)。それによると、ゴワディア被告は2003~05年にかけて、レーダーに捕捉されにくい巡航ミサイルの設計に必要な情報を中国政府に伝え、見返りに少なくとも11万ドル(約900万円)を受け取った。外国政府に軍事情報を提供した罪と資金洗浄などの罪で逮捕され、昨年8月に同裁判所の陪審が有罪評決を出していた。中国のスパイ活動が露見した事件である。さきに仏ルノーのEV技術(すなわち日産の技術)が漏洩した事件で中国の関与が取りざたされているが、中国は世界中でスパイ活動を行っているのだ。この動きを見落としてはならない。

中国は次世代ステルス戦闘機の開発に血眼だ

ステルス技術は今、関心の的である。中国は覇権を拡大しようと軍事力の増強に血眼になっているが、その焦点のひとつが戦闘機の能力向上で、その中核となるのがステルス能力を持つ次世代戦闘機の開発である。今年に入って中国は次世代ステルス戦闘機「殲20」の情報を自らリークし、ゲーツ米国防長官の訪中に合わせて1月11日、試作機の試験飛行を四川省成都の人民軍系航空機メーカー「成都航空機工業集団」の飛行場で行った。ゲーツ長官は胡錦濤主席との会談の場で不快感を示し直接、説明を求めたが、胡主席はまともな返答ができなかった。ゲーツ長官は後日、「胡主席を含め文民は誰も試験飛行を知らされておらず、軍の独裁が懸念される」と発言している。それはともあれ、中国が次世代ステルス戦闘機を開発し、現実的に配備するとなると、東アジアの軍事バランスは大きく揺らぐ。ステルス技術獲得を目指す中国のスパイ活動は自由世界の安全保障に大きな影響を与えるのだ。
 AP通信(1月23日)は、「殲20」のステルス技術は1999年のコソボ紛争で撃墜された米軍のステルス攻撃機F117の技術が盗用された可能性が高いと報じている。同機は99年3月27日、北大西洋条約機構(NATO)がコソボ紛争でセルビアを空爆した際、ユーゴ軍が発射した旧ソ連製のSA-3ミサイルで撃墜されたもので、当時のクロアチア軍参謀総長は米軍ステルス機F117の墜落現場周辺で、中国の情報当局者が住民から残骸を買いあさっていたとの情報があるとし、「(残骸の)データから中国がステルス技術を分析したと信じている」と語っている。現職のセルビア軍高官も、F117の残骸が地元民らに持ち去られた後、「外国の駐在武官の手に落ちたことがある」と認めたという。ロシアのステルス戦闘機の試作機スホーイ「T-50」も撃墜されたF117から技術が転用された可能性があるとしている。それに加えて、巡航ミサイルのステルス技術が軍の元技術者から中国政府にわたった。このように中国はスパイ活動を激化させているのである。

航空自衛隊の次期戦闘機(FX)とも深く関係

ステルス技術漏洩問題はわが国と無縁の話ではない。航空自衛隊は目下、次期戦闘機(FX)の選定作業を進めているが、このFXとも密接に関係している。すでに機種選定は2年も遅れている。航空自衛隊はステルス能力と超音速巡航能能力を有する米空軍の「5世代機」である最新鋭戦闘機F22を配備したい意向だった。古くなったF4戦闘機の後継機として、将来の日本の空の守りの主力戦闘機にしようというわけだ。中露もF22を凌駕する戦闘機を保有しておらず、米空軍の切り札となっており、わが国の空の守りにも不可欠との判断からだった。ところが、米軍は日本に輸出することを拒んだ。それは日本からの情報流出を恐れたからである。
 2007年4月の日米防衛首脳会談で九間防衛相(当時)がゲーツ国防長官にF22の性能情報の提供を求めたが、ゲーツ長官は「情報保全は防衛省のみならず日本全体の課題だ」と述べ、提供を拒否した。09年5月に浜田防衛相(当時)がゲーツ国防長官と会談した際にも、F22の輸出が困難であるとして拒否された。すでに米議会は軍事歳出法オービー条項でF22の輸出を禁止している。米議会調査局の「F22日本売却に関する報告書」(07年)は、輸出解禁によって①雇用確保や量産化、コスト削減など米軍事産業にとり利益となる②最新鋭機を使った自衛隊と米軍の相互運用性が向上する③自衛隊のF22配備で米軍の同機を地域外に配備できる―との利点を挙げる一方、「不注意による米軍の技術や知識の漏洩は脅威になりえる」と指摘、イージス艦情報漏洩事件を「その一例」として警告を発している。いずれにしても米国はスパイ防止法を始めとする防諜体制が不備な日本にはF22を輸出しない。そしてオバマ政権は08年、高額を理由にF22の調達を打ち切り、開発中の高性能戦闘機F35に予算を集中する考えを明らかにした。これで航空自衛隊がステルス戦闘機F22を保有する道は閉ざされた。だが、F35の開発を待っているだけでは日本の防衛に穴が開いてしまう。ここがFX選定の難しいところである。

スパイ防止法制定、武器輸出三原則見直しが不可欠

この問題で我々に大きな課題が突きつけられている。F22はステレス性で優れているが、忘れてはならないのは航空機技術で日本は最先端技術国に位置づけられていることである。07年7月、米航空機大手ボーイング社の次世代主力旅客機「787」(通称、ドリームライナー)の1号機が完成し、ワシントン郊外の同社工場で御披露目が行なわれたが、機体の主力素材は日本企業の東レの最先端炭素繊維が使われているほか、主翼の製造は三菱重工が行なうなど、機体製造の約35%は日本企業が担当した。これら最先端技術は当然、戦闘機に応用されてしかるべきものである。米国はF35戦闘機の開発を英国とオランダなど西側諸国と共同で行なっており、国際的な共同開発の潮流が広がっている。ボーイング・エアバスの米欧両社とも機体製造は日本の化学繊維メーカーに依存しており、ステレス技術も特殊な合成繊維のもつ電波吸収効果にあるとされ、この分野でも日本の国際協力は必須なのだ。当然、それら技術を中国は「スパイ天国」日本から盗み出そうとするだろう。
 以上のことから、中国の次世代ステルス戦闘機に対抗して東アジアの平和と安全を守り、かつ中国のスパイ活動を制するために必要不可欠な2つの政策が浮き彫りにされる。第1はいうまでもなくスパイ防止法制定であり、第2は武器輸出3原則の見直しである。このことは航空自衛隊のFX選定と表裏一体の関係にある。政府は直ちに政策転換を図るべきである。

2011年1月30日

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