思想新聞1998年8月5日号
「躍進・共産党」の正体 Part【1】
党綱領と基本政策で明白に
日本共産党は先の参院選で比例区で820万票を獲得するなど史上最高の勢力を持つに至っている。各種世論調査によると、共産党が獲得した820万票のうち400万以上はもともと他党支持者や無党派層で、その大半は「自民党にお灸を据える」ための投票だったことが明らかになっている。しかし、96年の総選挙、97年の東京都議選、そして今回の参院選を通じて共産党は一段と支持層を広げてきており、これら獲得票が「共産党は変わった」として定着する危険性が高まっている。はたして日本共産党は過去の共産党から「国民の党」に変化しているのだろうか。共産党の綱領や政策を分析してみよう。
自民党の小渕総裁が総理大臣に選ばれた臨時国会開会の7月30日。この日の衆院本会議と参院本会議は異様な熱気に包まれた。マドンナ旋風によって自民党が参院で過半数割れを起こした89年以来、9年ぶりに衆参両院の総理指名者が異なったからだ。その立役者のひとりが共産党。同党が第1回投票から他党党首に投票したのは60年の浅沼稲次郎社会党委員長(当時)以来のことだ。結局、総理には小渕氏が選ばれたが、この臨時国会の開会劇は共産党の「柔軟路線」を一段と引き立てる場になった。
昨年7月の都議選で共産党が躍進した際、不破委員長は「偏見が根強かった共産党に対する誤解の壁が解け始めた」(読売新聞97年7月17日付)と自信を深めていたが、昨秋の第21回党大会で宮本顕治議長が引退。柔軟路線への自信を一段と強めてきていると言われる。今回の参院選の躍進で共産党は「共産党と国民との関係は質的にも変わった」(志位書記局長)として「21世紀の早い時期に民主連合政府を樹立するという大目標に向けて着実な一歩をしるす」と意気込んでいる。
だが、共産党に対して国民の多くが抱いてきた「偏見」と「誤解」は、はたして文字どおり偏見と誤解だったのだろうか。
共産党が首相指名で菅直人氏に投票した7月30日、朝日新聞などの全国紙に共産党系の新日本出版社の出版広告が掲載された。「いま話題 日本共産党の路線・政策を知る本」とのコピーのもとで、『現代日本における大衆的前衛党』『綱領路線の今日的発展』『マルクス、エンゲルス百年』『エンゲルスと「資本論」』など、いずれも不破委員長の著作が紹介されている。
これらの著作からも明らかなように、共産党は「消費税を3%にもどす」だけの政党ではない。『綱領路線の今日的発展』で、不破委員長は「日本共産党の綱領で大事なことは、日本共産党はただこういうことをやりたいという願望にたって、運動の目的や方針を書いているわけではない、という点です。日本共産党が、科学的社会主義の党であることは、ここであらためて強調するまでもありません」と述べている。
その科学社会主義は『マルクス、エンゲルス百年』『エンゲルスと「資本論」』の著作で明らかなように、マルクス・エンゲルス・レーニンの思想と革命路線を継承する、共産主義であることは論を待たない。その意味でも「消費税を3%にもどしたい」などといった願望だけで共産党を選択するのは間違いなのだ。
「(共産党は)党の活動をすすめる、政策をたてる、いろいろな局面で情勢分析をおこない課題を提起する、そういうときには、たえず綱領にもどり、綱領にもとづいて、情勢の見方、方針や考え方の展開をおこないます」(不破委員長)。日本共産党綱領を理解しないかぎり、共産党は理解できないのである。以下、日本共産党綱領を軸に共産党の正体をさぐっておこう。
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■正体1
ソ連共産党の「支部」として共産革命を目指し創立された
日本共産党綱領は冒頭で次のように述べる。「日本共産党は、わが国の進歩と革命の伝統をうけついで、日本人民のたたかいとロシア十月社会主義革命など世界人民の解放闘争のたかまりのなかで、1922年7月15日、科学的社会主義の理論的基礎にたつ党として、創立された」
共産党は大正11年(1922)7月15日、創立大会を開き結党したが、同大会で満場一致で決めた最も重要なことは、コミンテルン(国際共産党=レーニンによって世界共産化のための国際組織)への加盟である。創立当初の共産党の文献はすべて「国際共産党日本支部(日本共産党)」と、日本共産党が「かっこ」のなかに書かれていたにすぎない。
もともと、共産党創立は上海に置かれていたコミンテルン極東委員会の指導と資金によって行われた。コミンテルンがソ連の指導下にあったことは論を待たず、したがって日本共産党が事実上の「ソ連共産党日本支部」として創立された事実は消えない。

この事実を共産党は恥じないどころか、毎年7月15日に盛大な創立記念事業を行っている。今年の創立記念日には『赤旗』に1面特集で「生まれて76年 日本共産党はこんな歴史をもっています」を組んでいる。
(右写真)記念講演会は7月29日に東京・有楽町の東京国際フォーラムに6千人を集めて開催、この様子は通信衛星を通じて全国13カ所の会場と全都道府県委員会と地区委員会にも中継。いかに共産党が創立を祝っているかが知れよう。
■正体2
暴力革命を実際に試みた歴史的事実は消えない
共産党綱領は戦前の共産党の活動について次のように述べている。
「天皇制権力の野蛮な弾圧のなかで、党の活動には重大な困難があり、つまづきも起こったが、すくなからぬ日本共産党員は、迫害や投獄に屈することなく、さまざまな裏切りともたたかい、党の旗をまもってたたかった。このたたかいですくなからぬ党員が弾圧のため生命をうばわれるにいたった」
昭和7年、共産党はコミンテルン極東部長クーシネンの指導で「32年テーゼ」を採択、「議会主義的幻想を培うような方向に向けず」「帝国主義戦争を内乱に転化して、ブルジョア=地主的天皇制の革命的転覆を招来する」として、暴力革命路線に転じて各地で過激な闘争を展開した。
たとえば、昭和7年10月には革命資金を得るため川崎第百銀行ギャング事件を起こし、また昭和8年には党内にスパイが潜入したとして宮本顕治氏や袴田里見元副委員長らが、同じ党員の仲間をスパイ容疑で査問し、死にいたらしめた「赤色リンチ事件」を起こしている。綱領で言う「重大な困難」とか「さまざまな裏切り」がこれらのことを指すのか、いっさい明らかにしていないが、暴力革命の歴史を消し去ることはできないはずだ。
戦後も韓国動乱直後に「56年テーゼ」を採択し、各地で火炎ビン闘争を繰り広げたことは周知の事実。このことからも機会があれば暴力革命を行おうと虎視たんたんとねらっていることは疑いないところである。
■正体3
宮本路線の「日本革命」論を堅持し革命の機会をうかがう
宮本前議長のもとで昭和36年に採択した「日本共産党綱領」(その後一部改定)を現在も堅持していることはすでに述べた。綱領は「日本革命」について次のように規定している。
「日本の当面する革命は、アメリカ帝国主義と日本独占資本の支配に反対する新しい民主主義革命、人民の民主主義革命である。この革命をなしとげること、すなわち、アメリカ帝国主義と日本独占資本を中心とする勢力の反民族的、反人民的な支配を打破し、真の独立と政治・経済・社会の民主主義的変革を達成することは、当面する国民的な苦難を解決し、国民大多数の根本的な利益をまもる道であり、それを通じてこそ、労働者階級の歴史的使命である社会主義への道をも確実にきりひらくことができる」
つまり、民主主義革命の後に社会主義革命(事実上の暴力革命)を目指す「二段階革命論」である。もともとこの二段階革命論を“発案”したのはレーニンで、コミンテルン第2回大会(1920年)で「民族および植民地問題に関するテーゼ」に明記されている。共産党は現在もなお、コミンテルンの方針に忠実に従っていると言える。
■正体4
天皇制廃止をはじめとして日本の伝統文化の抹殺狙う
日本共産党綱領は第2次世界大戦が終了した直後の党の活動について次のように述べている。
「戦後公然と活動を開始した日本共産党は、ポツダム宣言の完全実施と民主主義変革を徹底してなしとげることを主張し、天皇制の廃止、軍国主義の一掃、国民の立場にたった国の復興のために、民主勢力の先頭にたってたたかった。党が『人民共和国憲法草案』を発表したのは、この立場からであった」
同憲法草案は昭和21年6月に発表した「日本人民共和国憲法草案」のことで、この中で共産党は天皇制廃止を強く主張している。つまり、共産党が「護憲の党」などというのは真っ赤なウソで、天皇制廃止をメインに据え、日本の伝統的文化を封建的因習などとして抹殺をはかる「人民共和国憲法草案」を保持し続けているのである。同草案は悪名高い「スターリン憲法」の翻訳もので、スターリンを批判しつつその実いまだ、スターリン憲法日本版を後生大事に持ち続けているのだ。
この考えに沿って、たとえば国会開催に当たって天皇陛下がご出席され、お言葉を述べられる際、共産党は国会出席を拒否する。今日まで同憲法草案を破棄したとは一言も言っておらず、綱領で同草案の発表を誇っているところからも、共産党の本質が知れるだろう。
■正体5
マルクス・レーニン主義を「科学的社会主義」と称する
共産党は自ら則る理念を「科学的社会主義」と称しているが、これはイコール共産主義であることは論を待たない。たとえば前述の『綱領路線の今日的発展』で不破委員長は「マルクス、エンゲルスは、科学的社会主義者として活動をはじめた最初から」(下巻・156頁)といった言い回しで科学的社会主義を表現しており、共産主義イコール科学的社会主義であることは疑いの余地がない。
つまり、マルクス主義の基本思想、すわなち弁証的唯物論、唯物史観、労働価値説と剰余価値論などを現在も堅持しているのが共産党である。不破委員長の『エンゲルスと資本論』(新日本出版社)が、党員の必読書となっていることからもそのことは明らかである。弁証的唯物論(闘争による発展)を基本とする限り、共産党の「革命政党」の本質はまったく変わっていないと言えよう。
したがって、共産党は唯物史観に則って天皇制のみならずわが国の伝統文化、宗教などを支配階級の「上部構造」として否定し、共産主義の唯物文化に染め上げようとしている。
■正体6
結局は日米安保条約破棄 自衛隊解消を目標にする
共産党が今回の参院選用につくったパンフ『この大不況をどうする 21世紀の日本をどうする』は、共産党が実現を目指す政策の大きな柱に「日米安保条約の破棄・自衛隊の解消」を据えている。これからも明らかなように反米反安保政策はまったく変わらない。この通りに行えば、わが国の安全が損なわれるばかりか、日本の経済基盤を根底から崩壊させ、国民の暮らしは成り立たなくなる。それは日米安保条約が軍事面だけでなく経済面でも日米の協力関係をうたっており、総合的な日米関係を築く基本条約であるからだ。これを破棄して日本の繁栄などあり得ないが、共産党はこうした現実を顧みない。革命を目指すために日米関係を断ち切り、さらに自衛隊をなくしてしまいたい、というのが共産党の本音である。
■正体7
「社会化」の表現で本音は大企業の国有化を目論む
共産党は綱領で「社会主義建設を任務とする労働者階級の権力の確立、大企業の手にある主要な生産手段を社会の手に移す生産手段の社会化、国民生活と日本経済のゆたかな繁栄を保障するために生産力をむだなく効果的に活用する社会主義的計画経済が必要である」と述べている。
これが大企業の国有化でなくてなんだろうか。やはり共産党は社会主義計画経済を目指しているのである。
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以上、7つの視点から見てきたが、これだけでも、共産党の本質が明らかとなるのではないだろうか。今回の参院選で声高に叫ばれたような、表面的な政策だけで「共産党は変わった」という判断を下すことが、根本的な間違いをおかしてしまうということを、重ねて強調しておきたい。


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