国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 通巻1898号 (令和8年5月1日)

迫る今世紀 最後の総選挙 21世紀のビジョンを問え

思想新聞2000年6月1日号

マルクス・レーニン主義掲げる共産党に未来は語れない
一方で不気味に進む保守層切り崩し

 政局は総選挙に向かって本格的に動き出した。共産党はこの選挙を「日本を変える選挙」と位置づけ、議席倍増をステップにして「21世紀の早い次期に民主連合政府の樹立」を目指している。不破委員長は1998年参院選を前に、野党連立政権の下では日米安保条約破棄を一時凍結する構想を提唱し、さらに「憲法を守る限りは天皇の存在と役割は否定しない」との見解も表明した。着実に「ハードル」を下げ、「厚化粧」戦術を駆使して政権に近づこうとしている。
 
 20世紀最後の年に行われる総選挙の最大の意義は、21世紀の日本のあり方の選択にある。したがって各党にとり最も重要な責務は、憲法や安全保障、経済・財政、年金・医療などの社会保障、教育などの将来像と具体的な政策を政権構想として明確に提示することである。
 しかし、自民党内には故・小渕前首相の「弔い選挙」を強調する声があり、野党側には森喜朗首相の「神の国」発言への批判を初め、宮沢喜一蔵相の三百万円問題(中村喜四郎元建設相が5月15日、東京高裁で開かれたゼネコン汚職事件の公判で、自民党独禁法調査会会長代理だった平成3年12月、当時の宮沢首相に呼び出され、執務室で宮沢氏から現金3百万円を渡されたと証言した問題)、「青木証言」問題(故・小渕前首相が入院した4月2日夜、前首相から青木幹雄官房長官が臨時代理の指定を明確に受けたかをめぐり、野党などから疑義が出ている問題)の「3点セット」を真っ先に掲げ、「敵失」を狙う戦術にでようとする動きがある。
 中傷合戦や、票狙いが透けて見える甘い公約ばかりでは、日本の将来を考える選択肢とは決してなりえない。とくに森喜朗首相自身が明確に否定した「皇国史観の復活」や「国民主権の否定」などをことさら強調して批判票を狙う態度は、徒に有権者の判断を狂わせるだけと言ねばならない。将来に向けた建設的な問いかけとはいえない。
 1989年の参院選では、政官界への未公開株譲渡が問題化したリクルート事件、消費税導入、農産物自由化という「3点セット」が問題となり、結果として自民党が大敗している。しかし今回の新「3点セット」は政策とは関係なく、内閣中枢のスキャンダル的要素が強い。ポイントを稼ぎやすいという判断からの攻撃ばかりが前面に出てくると、今回の総選挙でなにが問われるべきなのか、本質的な意義が見失われてしまう恐れがあり、一層の政治不信を招きかねない。
 新世紀日本のあり方を問う総選挙を前にして、5月19日に与党三党(自公保)の共通公約が発表された。しかし、互いに牽制しあって具体性がなく、特に「有事法制」を初めとする安保政策において自自公連立時代より後退している点が気になる。より明確なビジョンの提示を望みたい。
 また野党第一党の民主党は、「寄り合い所帯」のゆえに「競争」か「弱者重視」かの軸が見えない。財政悪化を重視する鳩山代表やその周辺が競争重視の「小さい政府」の発想から「財政健全化10ヵ年計画」を打ち出せば、「歳出カットは無理」との党内の声に押され、「財政再件は予算配分を変えること」との主張に軌道修正を強いられる、といった具合。まことに頼りない状況である。
 一方、注視すべきは共産党の動向である。同党の『日本を変える』シナリオは《総選挙で与党とその補完勢力を過半数割れに追い込み、共産党は議席を倍増。さらに民主党などと政策協定をおこない、「野党連合政権」を樹立する》というものである。そのためには一層の保守層への食い込みが必要との認識から積極的な戦術を展開している。そして一定の「成果」を挙げつつあるのだ。
 志位和夫書記局長らのアイデアで共産党は、去る5月18日、大阪で経済シンポジウム「関西経済の発展を語る・日本共産党との経済懇談会」を開催している。そこに関西経済同友会の萩尾千里・常任幹事事務局長が招かれ、「個性生かした関西経済の発展」「大型開発バラマキが経済発展と活力をそいでいる」などと発言し、志位和夫書記長から「まったく同感です」と持ち上げられている。参加者は大企業幹部や中小企業経営者、自治体関係者ら約1200人と党機関紙「赤旗」は報じている。
 また、前回の衆院選で共産党が小選挙区で議席を得た高知1区(高知市)では、県庁近くの「高知城ホール」に4月7日、約百人の建設業者や従業員が集まった。県建設業協会役員を務める建設会社社長が開いた安全講習の会合だった。「応戦する人に挨拶をいただく。共産党の浦田宣昭さん。バリバリの共産党です」と、講習に先立って社長はあえて「共産党」を強調しつつ同区から新人で出馬する浦田氏を紹介している。建設業界は本来「保守」の牙城であったはず。しかし、会合に招かれた候補予定者は共産党の浦田氏ただ一人だったのである。このように共産党の保守層切り崩しは成果を挙げつつあるといえよう。
 自民党は「総選挙の争点は民主、共産両党の連立を許すか否か」(野中広務幹事長)と、民主党内の共産党アレルギーに訴えかけている。これに反応した民主党は「共産党と組んで政権を担当しようとは微塵も考えていない」と、最近は対決感さえ漂わせ「連立否定」はすでに公約化している。しかし、「天皇陛下が出席する国会開会式に共産党が出ればがらっと変わる。これは心の問題だ」(渡部恒三衆院副議長)などの声もあり、不破委員長の予測するように「今は(野党連合は)机上の話だが、(総選挙で与党が過半数割れすれば)生身の話になる。野党がばらばらで自民党政権の延命を許すのか、野党連合で道を切り開くのか選択を迫られる」となる可能性は否定できない。
 この総選挙が21世紀の日本のあり方を問うものだとの視点から各政党の公約に注目し、選択しなければならない。

解散総選挙へ向けて厳しい国会運営を迫られる森首相

 しかし、もう一つのより重要な選択があるはずである。それは19世紀の遺物、20世紀の悲劇を生んだ最大要因の一つであるマルクス・レーニン主義からの完全決別だ。マルクス・レーニン主義を理論的基礎とし、生産手段の共有による資本主義の枠の解体をめざし、伝統的倫理・道徳を「市民道徳」などというわけのわからない言葉に置き換えようとする政党が、その勢力を伸ばしている国などどこにあろう。日本人の無思想性を露呈しているようなものである。マルクス・レーニン主義政党に、21世紀を語る資格などないことを、声高に叫ぼう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました