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プーチンのアジア外交「米国一極支配」に対抗

【思想新聞2001年3月15日号ニューススコープ】

 ロシアのプーチン大統領のアジア外交が活発化している。2月には韓国、3月初めにはベトナムを訪問、さらに今後、日本、中国と首脳会談を予定している。
 プーチンのアジア外交の狙いは、「米国一極支配」に対抗しつつ、沿海州やシベリア地方の経済活性化を促すところにある。そのために対中関係を強化する一方、韓半島では北朝鮮と韓国双方への発言力を強め、ベトナムに対しても影響力を増大、このことを通してブッシュ米政権が推進するNMD(ミサイル防衛網)への反対戦線を拡大しようとしている。また中朝越などに対しては武器輸出を強化し、また日本と韓国からは沿海州やシベリア方面への投資拡大を取り付け、東方経済のテコ入れにしたい意向だ。

反NMD・武器輸出めざす

 プーチン大統領は2月26日から二日間、就任後初めて韓国を訪問した。同大統領は昨年七月に旧ソ連・ロシアの最高指導者として初めて北朝鮮を訪問し、南北首脳会談後の韓半島情勢に存在感を示したが、今回の韓国訪問でも「韓半島情勢は国際的な意味を持ち、韓半島の平和と安定がロシアの対外政策の最優先課題である」(韓国国会演説)と強調、南北双方に「仲介外交」の影響力を発揮できるロシア外交の重みを印象づけようと試みた。プーチン大統領は金大中大統領の太陽政策に賛成し、韓国との関係強化に一定の成果をあげた。

対韓債務を武器供与により償還

 27日に発表された韓露共同声明では、「弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の維持・強化」が盛り込まれ米国を驚かせた。これは韓国がロシアの反NMD戦線に同調した格好となったからだが、韓国政府は「米国のNMDに反対したわけではない」としている。だが、ロシアが北朝鮮のミサイル問題をテコに反NMD戦線に韓国を巻き込もうとしていることは確実で、米国を牽制する効果はあげたといえる。
 ロシアが対韓政策で得点をあげたもう一つは、兵器・武器供与を実現したことだ。これはロシアが対韓債務約17億ドル(約1972億円)の一部を兵器・武器の供与で償還するというものだ。報道によると、ロシアは新鋭の戦車、戦闘ヘリ、戦闘爆撃機など約7億ドルから12億ドル分を予定しているとされており、武器供与によって米韓関係にくさびを打ち込む一方、将来の対韓武器輸出の道を開いた。
 さらに経済再建をめざすロシアにとっては韓国との協力強化は不可欠で、韓国は有力な経済パートナーだ。プーチン大統領は韓国訪問にわざわざアムール地方のベロノゴフ長官とサハリン州のファルフトジーノフ長官を同行させ、冷え込む極東地域に韓国からの投資拡大をめざす意欲を示した。共同声明ではイルクーツクでの天然ガス開発、ナホトカでの工業団地建設などでの協力を決めたほか、シベリア横断鉄道と韓半島縦断鉄道連結の協議機関設置で協力することになった。これもロシアの得点だ。

進む中露両国の軍事面での協力強化

 プーチン大統領は韓国に続き3月1日、ベトナムを訪問した。ロシアの最高指導者がベトナムを訪問するのも初めてのことだ。露越首脳会談では「戦略的パートナーシップ宣言」に調印し、その中で日米両国が共同研究を進めるTMD(戦域ミサイル防衛網)のアジア太平洋地域への配備反対をうたった。同時に露越両国が軍事分野での協力の継続を決め、軍事的関係強化を印象づけた。
 また経済面ではロシアは水力発電所の建設、原子力発電所建設をめざした技術者の教育、南シナ海での石油・天然ガスの共同開発への協力を約束、露越の経済関係を強化することになった。ロシアは昨年9月に約110億ドルに上るベトナムの対露債務のうち、8割以上を帳消しにしたばかりだが、これら経済支援によってカムラン湾でのロシア基地(2004年まで使用期限)の継続使用を目論んでいるとされる。
 こうした韓国・ベトナム訪問で明らかなようにプーチン外交は「米国一極支配」の対抗に腐心していることがうかがえる。その二本柱が反NMDと武器輸出だ。前者は米国を牽制でき対米外交の有力な交渉材料になり、後者は現在のロシアが持つ唯一ともいえる戦略輸出品である。この二つをもってEU、NATOの西方拡大による閉塞感を打開し、経済的にもアジアとの関係を強化したいというのがプーチンの思惑だ。その意味でロシアのアジア外交の要は中国ということになる。
 プーチン大統領は今春に中国を訪問し中露首脳会談を開催することを決めている。中露首脳会談では、80年に自動失効した中ソ友好同盟相互援助条約に代わる新たな両国の基本条約の締結をめざしている。ここでも大きな狙いは中露関係を軍事、経済両面で強化し「米国一極支配」に対抗してNMDおよびTMDへの反対包囲網を形成することだ。
 軍事面での中露協力強化はすでに進行中だ。2月20日にモスクワで中露軍事技術協力委員会の第8回会合を開催、2007年までに軍事協力方針を策定するほか、中国へのロシアの武器輸出を合意した。それによるとロシアは今年前半期に早期空中警戒機A50を2機から4機、今年末までにスホイ30戦闘機を20機以上、さらに機雷敷設艦や核搭載可能な潜水艦などを輸出する。
 張万年・中国軍事委副主席とヤルゲーエフ・ロシア国防相は2月21日にモスクワで会談し、米国のNMDに反対し、これに対抗する中露の軍事協力強化で意見が一致した。
 プーチン大統領の訪中による中露首脳会談では両国の「戦略的パートナーシップ」をうたい、米国のNMDへの反対共同歩調を確認し、より一層の軍事強化と経済協力をぶちあげることになるだろう。

「北方領土」カードで日本の援助を目論む

 一方、日本に対しては何としても経済支援を取り付けたい意向だ。そのためには北方領土問題でロシアが返還に前向きの考えがあることを示して日本の期待感をつなぎ、サハリン、沿海州への援助を実現したい考えだ。こうした思惑がプーチン大統領の「二島返還発言」(ロシア側は否定)になっていると見られる。具体的な経済援助としてサハリンの石油・天然ガス開発に対するインフラ整備、シベリア鉄道の輸送力拡大への整備などがあげられている。
 しかし日本に対してはNMD反対など「米国一極支配」に対抗するといった刺激的な提案は行わず、経済一本に絞っていこうとの考えだ。
 このようにロシアのアジア外交は中国との関係強化を柱に据え、北朝鮮、ベトナムの共産国とは「戦略的パートナーシップ」を再編し、一方、韓国や日本の米国同盟国に対してはロシアへの投資拡大などによって経済関係を強め、あわよくばNMD問題などで米国との関係にくさびを打ち込みたいと考えているわけだ。日本としては日韓米の「戦略的パートナーシップ」を念頭に置いた対露交渉が不可欠であろう。
 

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