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スパイ防止法がなければ国民の安全が守れないことが明確となった。

思想新聞 2003年1月29日号 アピール2003

 警視庁は1月28日、元朝鮮総連幹部の北朝鮮工作員の男が他人名義の外国人登録証を所持していたとして「公正証書原本不実記載」で近く書類送検することを明らかにした。だが、同罪(刑法157条)は五年以下の懲役または50万円以下の罰金にすぎない。スパイ工作を行い、韓国にも多大な被害を及ぼしたと見られるのに、この男は「公正証書原本不実記載」で書類送検されるだけである。このことに多くの国民が疑問を抱いていよう。他国ではスパイ行為に対して厳罰で臨んでいるのに日本だけが微罪で済ませており、こうした甘い態度が拉致を許してしまったのである。その反省が日本の政治家にはない。国民の生命・財産を守るにはスパイ防止法を制定するしかない。

1、昨年9月に公表された『警察白書』によると戦後、日本国内で北朝鮮の諜報活動を約50件摘発している。拉致の目的について白書は「北朝鮮工作員が日本人のごとく振る舞えるようにするための教育を行わせることや、北朝鮮工作員が日本に潜伏して拉致した者になりすまして活動できるようにすること」と断定している。諜報活動の任務を「対韓国工作の拠点としての活動、在日米軍に関する情報収集活動」としており、このような詳報活動いわゆるスパイ活動のために拉致が行われたとしている。警察庁は約50件摘発したが、肝心の拉致事件では1件も摘発していない。北朝鮮工作員の日本潜入はほとんど失敗したことがないといわれている。つまり摘発が氷山の一角にほかならず、判明している拉致事件も氷山の一角にしかすぎないのである。北朝鮮の特殊機関による諜報活動は日本人の想像に絶するほど多数勃発している。今回、警視庁が摘発した元朝鮮連幹部の工作員のその一人にすぎない。

2、なぜ北朝鮮の工作員はやすやすと日本国内に侵入し活動できたのか。なぜ警察は摘発できなかったのか。佐々淳行氏(元警察官僚、初代内閣安全保障室長)は次のように釈明している。「我々は精一杯、北朝鮮をはじめとする共産圏スパイと闘い、摘発などを日夜やってきたのです。でも、いくら北朝鮮を始めとするスパイを逮捕・起訴しても、せいぜいが懲役1年、しかも執行猶予がついて、裁判終了後には堂々を大手をふって出国していくのが実体でした。なぜ、刑罰がそんなに軽いのかー。どこの国でも制定されているスパイ防止法がこの国には与えられていなかったからです。…もしあの時、ちゃんとしたスパイ防止法が制定されていれば、今回のような悲惨な拉致事件も起こらずにすんだのではないか。罰則を伴う法規は抑止力として効果があるからです」(『諸君』02年12月号)

3、今回の北朝鮮工作員も執行猶予がついてそれで終わりであろう。だから日本はかねてから「スパイ天国」と呼ばれてきたのである。わが国の防衛、外交、政治など重要な国の命運のかかわる国家機密を外国のスパイが勝手に盗み出しても取り締まる法律が存在しない。外国のスパイの手先になって外国に通報する目的をもってこれら国家機密を不法に探知、収集しても、あるいはその情報を外国に売り渡しても、これを取り締まる法律がない。国際テロ集団がテロ目的で国家機密にかかわる情報を盗み出しても取り締まれない。1980年、宮永元陸将補と現職自衛官の3人がソ連に防衛機密を売り渡していたスパイ事件が摘発されたが、この3人は自衛隊法59条違反(懲役1年以下または3万円以下の罰金)で起訴され、宮永は懲役1年、他の2人は懲役8カ月の実刑判決を受けたにすぎない。同法違犯の最高刑懲役1年は軽すぎるというので警視庁は当初、窃盗罪(懲役10年以下=刑法235条)を適用しようとした。しかし窃盗罪は有体物または管理可能の「物」(電気、ガスなど)を保護法益するもので、防衛庁が盗まれた「紙」に適用できてもそこに印刷された情報は該当しないとして結局、窃盗罪での起訴は見送られた。ちなみに懲役1年以下の犯罪というのは、道で拾った他人の物を自分のものにする(遺失物横領罪違反)、無許可でバーを開いた(風俗営業取締法違反)といった軽犯罪の範ちゅうに入る。だから「スパイ天国」と呼ばれ、北朝鮮スパイは本国で「日本で捕まっても死刑にならないから安心して日本に潜入せよ」との指導を受けていたのである。

4、他国では国防機密を漏えいした場合、米国やフランス、ロシア、中国、韓国は最高刑が死刑、ドイツは無期懲役といった重罰で臨んでいる。これと比較すると「スパイ天国」の日本は国家の体をなしていない。だから早急にスパイ防止法を制定する必要がある。ところが70年代から始まったスパイ防止法制定運動に猛反対し、結果的に北朝鮮のスパイ工作、そして拉致を手助けした朝日新聞や共産党、社民党は今なお「冷戦思考の国家秘密法復活」などと主張してスパイ防止法に反対している。彼らは国民を欺き続けているのである。

5、政府・与党、そして健全野党は、国民の生命・財産を守ろうとする決意があるなら、そして自由諸国の安全を守る国際貢献を果たす決意があるなら、総結集して今通常国会でスパイ防止法を制定しなければならない。

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