国やぶれて崩壊した家族が残るロシアの教訓
思想新聞2000年9月15日号 シリーズQ&A 共産主義は間違っている!!
フェミニズムの仮面を被ったマルクス主義 2
人智放擲する「らしさ」の否定
ジェンダーフリー思想が露わに
Q
しかし、専業主婦が家庭の中のいわば「奴隷」であるかのような言い回しは、それこそ「人権侵害」にあたるのではないでしょうか。
A
いわゆるプロレタリアート、つまり低所得の労働者層からするなら、家庭を持っても共働きをするのが当然だ、あるいはそうしないと生活が営めない、という事情があります。農家などの自営業は特にその傾向があります。それは確かに、農耕が基幹産業だった時代には当てはまったかもしれません。
専業主婦という「仕事」は、本来マルクスの「労働価値説」から言っても、家事や育児など、「重労働」であるはずです。でも、それを「賃金がもらえない」からといって、主婦が「抑圧されている」ことにはならないでしょう。それはひとえに「家庭を守る愛情」が根底にあるからです。契約とか労使階級といった次元の話ではありえません。全く別方向の価値基準なのです。
『父性の復権』『母性の復権』などで知られるユング学者の林道義東京女子大教授は、前掲の『国を売る人びと』(PHP研究所)の中で、「フェミニストが敵と考えているのが《母性》と《家族》です。なぜその両者を否定するかというと、フェミニズムは《外で働く女性》のイデオロギーだからです」と言っており、その根底にあるのは、たとえばフェミニストが税制での「配偶者控除」や年金制度での保険料徴収などで専業主婦に対して「不公平」「不平等」だと叫んでいるのは、まさに専業主婦に対する「嫉妬」にほかならない、と看破しています。
ですから、「ジェンダーフリー」の発想というのは、「性差」をなくすということですから、「男らしさ」「女らしさ」という「区別」すらなくそうというものです。でも「らしさ」という範疇は、それ自体あくまで「区別」であって、決して「差別」ではないのです。
前掲書の中で、渡部昇一上智大教授は、「ジェンダーというのは社会的文化的につくられた性差を指していますね。それをフリーにするということは、実は人間の知恵を放擲(ほうてき)するのと同じだと私は思います」と述べています。
ほうてき はう― 【放擲・抛擲】(名)スル ほうってしまうこと。うちすてること。「地位も名誉も―して隠棲する」

マルクス主義家族観がもたらす失敗
このように、エンゲルスの『家族・私有財産・国歌の起源』に述べられた内容やフェミニストの言っている内容を実行に移したと言えるのが、まさに共産主義体制です。
ここに、旧ソ連体制下のロシア社会で、「家族」というものがどう扱われてきたかを示した、ユーリ・オシピアン博士(ロシア連邦軍縮局長)の興味深い報告があります。
「ソビエト連邦という社会主義社会の中で、プロパガンダにより《高いステータス》を与えられたはずの家庭が、実態としてはいかに不幸な状況におかれていたかを検証することは、将来の世界に貴重な教訓を与える」として、大きく三つの観点から論じています。
「第一に、正統的なマルクス・レーニン主義では、社会が革命的社会主義へ移行していく上で、家族は最も反動的な社会制度。特に、女性は《家庭の奴隷》状態から解放されて社会的生産活動に参加しなければならない。それが女性に《真の社会的平等》を保証するとされた。だがこの理論を実践した結果、女性は実質的に家庭と産業界という双方での役割を求められ、遙かに過酷な《奴隷状態》に置かれた。しかも、夫婦が働いて帰っても家庭には、経済的非効率から基本的な生活物資が不足。これら環境は、より本質的問題として家族間の調和に影響し、社会の基礎単位としての家庭を文字通り破壊した」
(世界平和会議99より)
【2】こうした環境の下、子供たちは成長の最も重要な時期の人間性教育が阻害され、社会主義的な人間観のドグマがそれに拍車をかけた。20年代、共産党指導者ブハーリンは《両親には自分の子を育てる権利はない》とまで言った。国家が子供の《管理者》だという思想は、子を早い時期に《社会主義化》するため、家庭よりも学校を教育の基本的機関として重視。国家教育は次世代を《共産主義理想への献身的な帰依者》に養成した結果、スターリン時代に何百万人の親たちが自分の子供に《国家の敵》として告発され、KGBに引き渡された。このような《社会主義的発展》のための《社会的遺伝子工学》による教育の後遺症は、自由民主主義を目指している今日のロシア社会に重大な心理的障害となった。
【3】ポスト・ソ連時代のロシアは、国連『児童権利宣言』に示された民主主義社会における家庭の理想と、現実の家庭が直面している経済的環境との間の極端な矛盾に苦しむ。社会主義経済の崩壊の影響と近年の金融危機は、社会保障制度の不備と相まって、教育環境にも深刻な状況をもたらしている」(99年世界平和会議・世界平和連合分科会の基調講演から)


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