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エイズ対策 なぜ「純潔」を言わないのか

この記事は2011年2月10日に記述されました。

厚生労働省のエイズ動向委員会は2月7日、エイズウイルス(HIV)感染に気づかず発症したエイズ(後天的免疫不全症候群)患者が2010年1年間に新たに453人報告された過去最多だったとの速報値を発表した(これまでの最多は08、09年の431人)。感染に気づかず発症する人が増加傾向にあるという。発症前に感染が判明した人は1050人で、合計1503人は2008年に次ぎ2番目に多かった。昨年第4四半期(10~12月)ではHIV感染者は303人、エイズ患者は119人で、合計数と感染者数はいずれも四半期ベースで過去最多を更新したという。
 ところが、昨年1年間に保健所などで実施したHIV検査件数は13万930件で、前年(2009年)の15万252件より1万9322件(12・9%)も減った。09年も過去最多だった08年(17万7156件)より約2万7千件減少しており、2年連続の大幅減である。このため自分の感染に全く気づかず、相手を感染させるケースが増えている可能性があるという。検査件数が大幅に減ったのに新規の感染者数が増えた点についてエイズ動向委員会の岩本愛吉委員長(東大教授)は「潜在的な感染が広がっている可能性が高い」とみており、「HIVへの認識が薄らいでいる。早期発見し治療を始めれば発症を抑えられるので、積極的に検査を受けてほしい」と訴えている(2月8日付各紙)。

性的接触が感染経路の大半を占める現実を見よ

なぜHIV感染者が増えているのか、新聞はほとんど報道しない。感染経路について書いたのは日本経済新聞だけだった。それによると「同性間性的接触」が219人で半数を占め、「異性間」も126人に上っている。感染経路が分からない「不明」は87人で、前年の71人から増えた。母子感染者が4年ぶりに確認(2人)されたとしている。岩本委員長は「治療薬は進歩しており、HIV検査で早期に感染が分かればエイズの発症はほぼ防げる。早期の治療は感染の拡大防止にも結びつく」として、無料・匿名で受けられる保健所などでのHIV検査の積極的な利用を呼びかけている。
 だが、それだけでいいのだろうか。確かに検査で早期発見すれば、新たな感染を防止できるかもしれない。しかし、それはエイズ対策としてはあまりにもお粗末すぎる。周知のようにHIVは体液(血液・精液など)から感染する。輸血や血液製剤は2次感染で、厳重監視で防ぐことができる。わが国も薬害エイズの悲劇を招いたが、これは今日、防げていると考えてよい。途上国などでは1本の注射の使いまわし(特に麻薬針が多い)で感染を拡大させているが、これもわが国ではさほど心配ない。問題は昨年の感染経路から明らかなように性感染である。つまり、エイズは「性感染症」なのである。だから、エイズ対策の基本は「性」つまり「純潔」であることは火を見るよりも明らかなことだ。それを新聞も厚労省もまったく言わない。性の自己決定権などを振り回し、フリーセックスを容認するような社会風潮がHIV感染を増やしていると言っても過言ではない。

同性愛者のゼロ号患者には250人の性パートナーがいた

エイズについて何が問題なのか、いま一度、確認しておこう。エイズが初めて確認されたのは1981年で、83年にその正体がHIVと判明した。最初のエイズ感染者(ゼロ号患者と呼ぶ)こそ、エイズの本質を端的に物語っている。ゼロ号患者は31歳の同性愛者の米国男性で、彼はニューヨークやロサンゼルスなど8都市で40件以上のHIV感染を引き起こした。それは患者自身とのセックス、あるいは患者とセックスした男性とのセックス、つまり性感染として広がったものである。米国の医療ジャーナリストのロビン・アランツ・ヘニッグ女史は『ウイルスの反乱』(青土社)の中で、その経緯を次のように述べている。
 「彼自身によると、彼には年間250人のセックス・パートナーがいて、それは病気が始まってからも続いていたという。無防備なセックスがパートナーにも危険を及ぼすことを1982年に知らされてからも、彼はエイズをうつす恐れのあることを言わなかった。むしろ逆に駆り立てられるように制服を続け、行為が終わってから『俺は死ぬことになっている。おまえもだ』と男たちに話していた」。
 当時の米国社会について米スクリップ研究所のウイルス免疫生物研究部長のマイケル・オールドストーン博士は次のように述べている。
 「1970年の終わりから80年代の初めは、同性愛が社会的に容認された劇的な時期であった。(とくに)サンフランシスコは性的自由の約束の地となり、74年から78年にかけて2万人近い同性愛の男が移住し、その後も毎年約5000人の流入が続いた。サンフランシスコで献血される血液の5ないし7%がゲイからの献血と推定されている。エイズを起こすHIVは血液の中にある。やがて輸血を受けた患者、外科治療を受けた患者、そして血液製剤を定期的に輸血しなければならない血友病の人々にエイズに似た症状が見られるようになった」(『ウイルスの脅威』岩波書店)
 オールドストーン博士は性別の嗜好にかかわらず、際限のない野放しの性的自由はエイズのほかに、B型肝炎、アメーバ感染症、ジアルジア症、淋病、梅毒、カリニ肺炎、カポジ肉腫などさまざまな性病をばらまいていると指摘している。HIVは体液(血液および精液など)から感染するから同博士が言うように「野放しの性的自由」が爆発的感染の主要な原因なのである。だから70年代の米国のように倫理的退廃が進むとエイズ禍が爆発的に広がる。昨年の感染経路の半分以上が「同性間性的接触」であることがそのことを端的に物語っている。

国連ミレニアム開発目標は「純潔」を掲げる

国連は1985年に初の国際エイズ会議を米国アトランタで開催し、それ以降、2年ごとに会議を開き、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)のミレニアム開発目標の柱の一つに据えている。国連人口基金(UNFPA)は「HIVの新たな感染者の半数は若者である。この感染を防ぐことは、若者たちが性感染症の感染から自らを守ることにつながる。婚外交渉の禁止、結婚相手に対する貞節、コンドーム使用を含め、常に責任ある行動をとることも感染防止策の中に含まれる」と指摘している(2002年版『世界人口白書』)。
 すなわち国連ミレニアム開発目標は「婚姻外での禁欲」と「結婚相手への貞節」つまり「純潔」を強調しているのだ。それはHIV感染が同性、異性を問わず性接触によって感染するのが基本パターンとなっているからだ。このことはエイズ問題の核心が「性」であることを示している。にもかかわらず、国連に巣食う一部の文化共産主義勢力は、「禁欲」や「貞節」を伝統的な家族の価値、宗教的価値とみなして故意に軽視し、ひたすら「コンドーム奨励策」をもってエイズ対策としてきた。わが国のエイズ対策もそれに流され、まるでコンドーム製造企業の宣伝かと目を疑うほど、「予防にコンドームを使おう」と煽っている。エイズ予防と称して高校の正門前でコンドームを配布した団体も現われ、高校生にセックスを奨励するつもりかと父兄から痛烈な批判を受けたこともある。エイズ予防策を解説する学者も「コンドームが普及していないことが感染につながっている」(若杉なおみ・早大教授=読売新聞08年12月1日付)と、まことしやかに語っている。だが、コンドーム使用は感染の確率を減らせても完全に防止することはできない。アメリカの疫病コントロールセンター(CDC)によると、性感染症に罹った女性のパートナーの21%はコンドームを使用していたという。「コンドーム奨励」一辺倒はきわめて危険なのだ(性道徳的にはもっと危険だ)。

「性倫理大国」になればエイズは防止できる

これに対してウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領は「ウガンダが感染者の激減に成功した最大の理由は禁欲や貞節を国民に浸透させたことだ」と述べている。ウガンダでは1980年代からエイズが爆発的に広がり、成人感染率が30%に達したため当初、国連が推奨するコンドーム普及を試みたが、効果があがらなかった。人口の60%を占めるキリスト教徒たち、とりわけ地域の村長や教会指導者らは、コンドーム奨励は青少年に放縦な性行為を勧めるとして反対し、自己抑制策の推奨を唱えていた。そこでムセベニ大統領は86年、ABC作戦を採用した。これはA(アブストナンス=自己抑制の奨励)、B(ビー・フェイスフル=夫婦が貞操を守る)、C(コンドームの使用)で、自己抑制を中心にすえるエイズ対策である。地域指導者は倫理社会の再構築を目指し、大統領に呼応した結果、成人感染率が30%から5%に劇的に減少したのである。
 エイズが性感染症であり、倫理的退廃を背景に拡大の一途をたどっていることを見逃してはならない。だから、防止には医学的手法だけでなく社会的倫理的手法が不可欠となる。このことをウガンダは世界に示したのである。わが国もエイズの爆発的拡大を阻止するには、性倫理大国とならねばならない。その岐路に立たされていると自覚すべきである。

2011年2月10日

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