この記事は2011年1月11日に投稿されました。
前原誠司外相とクリントン米国務長官が1月7日に会談し、日米両国の新たな「共通戦略目標」の策定を目指すことや外交・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)を数カ月以内に開催することで合意した。また北沢防衛相は10日、韓国の金寛鎮国防相と会談し、日韓の防衛協力を強化するため、国連平和維持活動(PKO)などで派遣された自衛隊と韓国軍が水や食料などを相互提供できるようにする物品役務相互提供協定(ACSA)の締結協議を開始することで合意した。いずれも朗報である。だが、考えてみれば、こうした話し合いが今まで進んでこなかったことが異常だった。
日米外相会談では、懸案の普天間問題で移転先の沖縄県名護市辺野古に建設する代替施設の位置と配置、工法について「検証および確認を次回の2プラス2までに完了させる」ことで一致。今春の日米首脳会談では▽安全保障▽経済▽文化・人材交流の3本柱で同盟深化の共同声明を取りまとめるという。また周辺事態や日本有事における日米協力を強化させるための協議も加速化させるという。これらは当たり前の話だ。だが、菅政権は肝心のことを棚上げにしている。共通戦略目標を定めるにしても、周辺事態・日本有事の日米協力を強化するにしても、避けて通れない課題があるはずだ。それは集団的自衛権行使と武器輸出3原則の問題である。
集団的自衛権行使から逃げるな
国連憲章は51条で個別的自衛権と集団的自衛権を国家の固有の権利として認めており、これを行使するのは国際社会では正当かつ常識的な行動と解される。それが憲法によって行使できないとする政府解釈は国際法から逸脱している。これに決別しなければ、日米同盟だけでなく、国連による国際平和維持活動にも支障をきたす。このことを想起しておかねばならない。
08年6月、集団的自衛権の憲法解釈を検討する「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は福田首相(当時)に4つのケース(類型)をもとに行使容認を求める報告を提出している。4類型は①公海上での米軍艦船への攻撃に自衛隊が応戦②米国を狙った弾道ミサイルを日本のミサイル防衛システムで迎撃③国際復興支援で共に活動する多国籍軍への攻撃に自衛隊が応戦④武器輸送などの後方支援―で、前の2つは日米同盟、後の2つは国際貢献に関わるものである。いずれも現在は違憲としている。
これに対して報告は①について「日米が公海で共同活動している際に米艦に危険が及んだ場合、防護しうるようにすることは同盟相互の信頼関係の維持・強化に不可欠である」として、集団的自衛権を認め共同活動中の米艦防護を可能にすべきとする。②については「わが国が撃ち落す能力を有するにもかかわらず撃ち落さないことは、日米同盟を根幹から揺るがすことになるので、絶対に避けなければならない」として集団的自衛権行使を認めるべきとする。
また③については現在のPKO(国連平和維持活動)の自衛隊の武器使用が自己の防護や武器等の防御のみとしていれば、国際社会の非難の対象になるとし、「PKO等の国際的な平和活動への参加は憲法で禁止されていないと解釈すべきで、自己防護に加え、他国の部隊や要員への駆けつけ警護および任務遂行のための武器使用を認めるべき」としている。④については補給、輸送、医療等の本来、武力行使ではあり得ない後方支援と、他国の武力行使との関係を「一体化」論でくくらないで、政策的妥当性の問題として総合的に検討して政策決定すべきとの判断を示した。いずれも現行の憲法解釈を改めて、足かせを取り外すことを促しており、正当な提言である。これを自民党政権も民主党政権も棚上げにしてきた。国際法から見れば4類型は何ら問題のない行動である。
これらは早急に憲法解釈を改めるべきことは論を待たない。前原外相はどう考えるのか。当然、そうすべきと内心思っているに違いない。菅政権がここに踏み込めば本物となれる。
不毛の空論「武器輸出3原則」を破棄せよ
菅政権は昨年12月に決めた防衛大綱で、武器輸出3原則の見直しを先送りした。愚策である。だが、読売新聞によると(1月9日付)、その代案として日米両政府がミサイル防衛(MD)システムの一環として共同開発中の次世代型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」について、政府は米国から第3国への移転を可能にする基準の策定に着手する方針を固めたという。これは武器輸出3原則に触れず日米協力を進める、言って見れば裏技である。
武器輸出3原則は1967年に当時の佐藤内閣が打ち出したもので、①共産圏②国連決議による輸出禁止国③紛争当事国や恐れのある国-への武器輸出を禁じるものだった。この3原則の①②は当然のもので、何ら異議を唱える内容ではない。③については「恐れのある国」が曖昧で同盟国への輸出を禁じかねない問題を残すが、おおむね妥当なものといえよう。ところが、76年に3原則は変質した。安全保障に疎い三木内閣が適用範囲を拡大し、事実上、武器輸出を一切できなくしてしまったからである。これが現在に続く、悪しき武器輸出3原則である。すなわち①従来の3原則対象地域には「武器」の輸出を認めない②対象地域外の地域は「武器」の輸出を慎む③武器製造関連設備の輸出も「武器」に準じて取り扱う-とする3原則である。
しかも「武器」の定義について「軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるもの」としたため、軍隊で使用されるものはすべて武器扱いにされた。例えばカンボジアでの国連平和維持活動(PKO)に参加した文民警察官の防弾チョッキも武器とみなされ現地警察官に供給できなかった。非武装論に匹敵する不毛な原則と化しているのである。このため83年に日米間で一部が緩和され武器技術供与の道が開けたが、日本の技術で生産された兵器は日米間だけでしか使用できず、第3国への輸出が禁止されるなど足かせをはめた。また同盟諸国への武器提供も違反扱いすることで友好促進も阻害した。ASEAN(東南アジア諸国連合)は海賊対策として海上自衛隊で廃艦となった中古の駆逐艦の購入を希望したが、これを認めなかった。
ようやく96年にインドネシア国家警備本部に小型巡視船を無償供与したが、自衛艦は今なお禁輸処置をとっている。何よりも問題なのは、世界では共同開発が主流になっているにもかかわらず、わが国は共同開発に一切加われず、その結果、防衛産業が衰退し、安全保障を脅かす事態を招いていることである。NATO(北大西洋条約機構)は昨年11月、ロシアまで巻き込んで欧米全域にミサイル防衛(MD)網を張り巡らし、将来は自由世界全域に拡大していくとしている。米国は2014年をめどに日米が共同開発を進める海上配備型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」を欧州にも配備する意向だ。米欧MD計画は核ミサイルの拡散に対応するもので、欧米MDの傘はやがて東アジアとも連動させ、地球規模のネットワークに発展させる。それによって自由と民主主義を共有する全ての同盟諸国の「盾」する。そういう構想だ。
したがって日本が武器輸出3原則を理由に欧州への輸出を拒めば、民主主義陣営の不信を買い、東アジア危機でも協力が得られなくなり、世界の孤児になってしまう。即刻、見直すべきである。今回、政府は基準策定をもって3原則の例外としてMD技術を第3国(すなわちNATO諸国)に提供できる道を開こうとしている。要するに例外だらけで、もはや原則足りえない。こんな原則はいらない。そこまで踏み込むべきだ。
日韓協力でもスパイ防止策が問われる
一方、日韓防衛相会談では物品役務相互提供協定(ACSA)の締結協議を開始することのほか、防衛秘密の保護に関する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)について事務レベルで協議することで一致した。ここは注目すべきだ。なぜ包括的保護協定が必要かといえば、日韓が軍事協力を進めれば、当然、日韓の防衛機密に触れるようになり、情報保護の仕組みを作っておかねば、お互いうかつに情報を出せないからだ。スパイ防止法がない日本への韓国側の不安は大きいと見ておかねばならない。当然、スパイ防止法が必要となる。
東アジアの安全は米国と韓国、米国と日本という2国間の安保体制でこれまできたが、もはやそうした変則的状況を打破しなければならない。米日韓の三国の軍事協力を進め、「日韓米共通目標戦略」を策定し、軍事同盟に昇華させていくべきである。今回の北沢防衛相の訪韓はその一歩とすべきである。
2011年1月11日


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