思想新聞1998年11月5日 主張
防衛庁は、さきごろ北朝鮮のミサイル発射問題で人工衛星打ち上げ失敗の可能性を留保しつつも、ミサイル発射実験であったとの結論を下した。これを受けて政府は、独自の情報衛星を2002年までに4基打ち上げる方向で検討に入っていると伝えられている。情報の重要性が高まっている中で、ますますスパイ防止法制定の必要性が高まってきた。
情報の保護体制が安保には不可欠だ
北朝鮮のミサイル発射問題では情報音痴・日本をさらけだした。日本独自の情報収集が十分に行われておらず、しかも米国側からの情報もスムーズに入ってこなかった。情報に対する日本の甘さを浮き彫りにした格好だったが、米国が情報提供を怠ったのは、日本に防衛機密保護法が存在せず、米軍情報が北朝鮮に筒抜けになることを警戒したからだと指摘されている。
これは以前から問題視されていたことだ。米国側には厳しい防衛機密保護法があるにもかかわらず、日本側には存在しない。したがって重要情報であるほど、米国側は日本に流すことをためらってきたとされる。そうした不信感が、今回の北朝鮮ミサイル発射問題で情報の流れを遮断したと見られているのである。
この問題点を放置したまま、仮に独自の情報衛星を保有したとしても収集した情報が保護されるのか、きわめて疑問だ。軍事にまつわる情報は、収集、分析、保護の三つの体制が整備されていてこそ、はじめて生かされるからである。
イラクのクエート侵略のように、米国がイラクの不穏な軍事行動を収集していても、示威行為と分析して侵略を許してしまった前科がある。収集とともに分析能力をもたないと、情報は死んでしまう。と同時に、情報保護体制を整備していないと、せっかくの情報収集や分析も反古となってしまう。
今回のミサイル問題では情報収集面に焦点が当てられ、情報衛星の保有へと動いている。むろん、これは重要なことであり、米国との協力体制の整備も含めて必要不可欠なことであろう。
しかし、すでに述べたように情報収集ばかりでは片手落ちである。分析力と保護能力をどう身につけるかを十分に検討しなければならない。その意味でも、スパイ防止法制定は避けて通れない。
おりしも、防衛庁の装備品納入をめぐる背任事件の一環として航空自衛隊のバッジ(自動防空警戒管制)システムの秘密情報漏洩事件が発覚している。
機密漏洩やスパイの暗躍が続く日本
これは90年6月に起こった事件だが、バッジ・システム全体の概念図や関連部品の設計図のほか、レーダー・システムの性能諸元や89年から運用が始まった新バッジ・システムを整備するための情報など安全保障上、きわめて重要な情報が漏洩した。
これらの文書の中には防衛庁の防衛秘密指定の「秘」(防衛秘密としては「機密」「極秘」「秘」の三段階がある)にあたるものもあった。だが、スパイ防止法がないために注意処分といった微罪扱いで終わっており、再発防止に不安を残しているのである。
また、北朝鮮のミサイル開発に日本の技術者が関わったり、韓国への侵入用の潜水用具に日本の製品や技術が利用されていると指摘されていることからも、スパイ防止法の制定が必要となっている。
北朝鮮によるこうした事件の背景には、必ずといっていいほどスパイ工作が存在している。「日本にはスパイ防止法がないから安心して潜入できる」との亡命工作員の証言もある。スパイ防止法制定が急がれる。


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