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自民党凋落への対策

思想新聞2000年7月15日号【主張】

 第二次森内閣がスタートしたものの、国会が開催されていないこともあって、政策に特段、森カラーは出ていない。沖縄サミットという国際舞台が待ちかまえており、すべてはサミット後といったところである。だが、森内閣が「日本新生」ビジョンを国民に明確に提示しない限り、森内閣と自民党の支持率は低迷を続け、懸案問題の早急解決もおぼつかなくなるだろう。

◎六百四十五兆円の負債をどうするか

 森内閣の支持率低迷が続いている。総選挙後の各種世論調査は森内閣支持率が二〇%台と低迷しているのに対して、不支持率は軒並み六〇%台で推移しており、国民は相変わらず森内閣に厳しい態度を示している。とくに都市部における不支持率が高く、先の総選挙で自民党が都市部で凋落した傾向をそのまま続けている。
 なぜ自民党の凋落に歯止めがかからないのだろうか。
 その第一は、新しい時代への対応に適切さが見られないことである。国際的にはグローバル化やIT(情報技術)革命が急ピッチで進み、既存の産業を守るといった旧来の経済政策では貿易立国・日本が成り行かないとの危惧が広がっている。そこから規制緩和や新たな法制の必要性が求められていながら、その対応は遅々として進んでいない。
 そんな中で「そごう」債権放棄問題などで見られるように、相変わらずの護送船団方式によって、巨額の負債を抱える民間企業は救い一般の中小企業は切り捨てるかのような不公平感が広がっている。それは即、政権与党である自民党批判につながっている。
 第二には、六百四十五兆円にも膨れ上がった債務残高への疑問を解消しないからである。
 平成不況を克服するとして公共投資を軸に巨額の財政出動を行ってきた結果、国と地方合わせた債務残高は平成十二年度末で六百四十五兆円にのぼる。この公共投資は地方優先の印象を都市住民に抱かせており、財政出動型の景気対策への疑問が強まっている。にもかかわらず自民党は従来の手法を踏襲し、かつ中尾栄一元建設相の汚職事件が発覚したように公共投資に不純なものを感じさせている。
 第三は、膨大な借金が残るなかで少子高齢社会が到来するが、その将来に不安を感じさせているからである。
 六百四十五兆円の借金は子孫に残るばかりか、現役世代が高齢者になったときに大きな問題を抱えることになる。税金や年金、医療保険、介護保険など社会保障をめぐる財源に陰を落とし、将来の生活設計を難しくしている。これらに対する将来ビジョンをきちんと示さなければ、不安を解消できないにもかかわらず、政府・与党はそのビジョンづくりすら先送りしている始末である。
 そんな中で四月から介護保険制度がスタートした。保険料収集は小手先の棚上げ状態にあるが、その負担はどう推移するのか、少子高齢社会への展望を示さない政府に国民は批判的だ。
 第四は、「十七歳の闇」と呼ばれ多発する少年凶悪事件に対して確固たる政策を示していないことである。
 少年法改正案は先の通常国会で廃案になってしまったが、同改正案は必ずしも国民の望む内容ではなかった。同案は裁判所が必要と認めた場合には三人の裁判官による合議制を導入するほか、弁護士と検察官の関与を認め検察官に抗告権を付与するとしている。だが、保護だけでなく処罰を厳しくして罪の自覚と清算をきちんとさせたり、低年齢化に対応するという面では何ら改正点が見られなかった。
 少年凶悪事件は愛知の五千万円恐喝事件や佐賀県の高速バス・ジャック事件など一段と凶悪化しており、少年法が喫緊の課題である。これに対して何ら手を付けない政府に国民は苛立っている。
 第五は、青少年の教育問題、健全育成に対して確固たる方針を示さないことである。
 いうまでもなく教育は国家百年の大計である。戦後の青少年教育の最大の問題点は宗教・道徳教育が欠落しており、これを克服するには教育基本法を改正し宗教教育ができるようにすることである。小渕前首相は三月に「教育改革国民会議」をつくり、教育改革を学校教育に限定せず家庭や地域社会の見直しにも着手し、森首相もこれを踏襲している。だが、「神の国」発言への批判を払拭するために教育基本法改正に踏み切れれるのか疑問を残している。
 教育改革への取り組みが遅いというのが国民の偽らざる気持ちで、煮え切らない政府に焦燥感を抱いている。
 いずれにしても、森首相は国民の目に見える形で「日本新生」ビジョンを提示する必要がある。この提示がなければ、国民の将来不安、自民党不信を払拭することができず、来夏の参院選に多大な影響をあたえるだろう。

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