思想新聞2003年5月1日号【視点論点】
米ヘリテージ財団フィッツジェラルド上級特別研究員
パトリック・フェイガン氏
国連政策に関する「診断と処方」が否定的なものであれ、それが即「反国連」を意味しない。むしろ国連が偉大な機構への潜在力を有すると考える。しかし今のところ社会問題分野で国連は破滅の道を歩んでいる。
まず男女の性行為により子が誕生するという非常に単純だが深淵で力強いテーマから始めたい。どの国もこの問題を正しく扱わない限り、深刻な打撃を受け悲惨な状態に陥る。安定した結婚の上に築かれた欠損のない家庭で、そして父母が一つとなっている時、子供たちはよく育つ。逆に家庭が崩壊すれば、最も弱い立場に立つのが子供たちだ。
この問題は膨大な社会学的データにより明白な結論が示される。もはや学者が徒らに論争する段階ではない。貧困、犯罪、薬物依存、健康、教育、精神衛生等政府予算を費やすあらゆる社会問題に、家庭崩壊が悪影響を与えても、よい影響を与えることは一つもない。
世界中のほとんどの国々が批准しているにも拘わらず、米国が批准しない国連の主要な条約が、「子供の権利条約」と「女子差別撤廃条約」。これらによい点はあるが、これにより推進され、とりわけ国連人権委員会と解釈委員会が各国の状況に関し3年に1度報告し推進していることは到底受け入れ難い。この報告書で推進されている社会政策は破滅的なものだからだ。
例えば、国連事務局は母親が家庭に留まり子を育てるより、外に出て働くよう奨励する。概して女性は働きたいと思い、実際に働いてもいる。しかし、あえて母親を子供から引き離す必要はない。子供が幼いならなおのこと。国連は常に、幼い子供たちの母親を職場に引き出そうとし、それにより増大した収入を、子供たちの世話をする他の機関を「作る」ために転用しようとするが、それはよい社会政策ではない。データ自体は、子供が母親の世話を受けた場合に最もよく育つことを物語っている。
スウェーデンは男性が子育てをする上で環境、文化、社会的認知等すべての条件で最高の国。だが実際、圧倒的多数の男性はそれでも子育てをしない。育児は男性より女性がうまいのは、普遍的な常識のようだ。
次にいわゆる「非嫡出子」について。国連はこの非嫡出子を「正常なもの」にしようと働きかけている。それは本質的に(婚姻関係に限らぬ)あらゆる形態の「家族」に平等な法的地位と経済的支援を与えるものだ。
また「子供の権利」拡大について。子供の権利自体に反対する人はいまい。しかし米国が批准を拒む「子供の権利条約」の危険性は、よき両親の権威をも剥奪する点にある。そして代わりに国家やNGO等の諸機関に「権威」を与え、家庭生活に介入し、子を親に敵対するよう仕向けているのだ。
性的規範について、「避妊の普遍化」は国連のみならず、欧米諸国で推進されているが、あらゆる国を滅亡へと導く政策だ。今から百年後には欧州の文化と人種は見られなくなろう。現在の出生率では、四世代から五世代のうちに欧州の人口の九七%が消滅する。それを逆転させる政策がない限り、事実上欧州は消滅。スペインやイタリアは特に深刻で、次いでギリシア、アジアではシンガポールがこの問題に直面する。また堕胎についても、国連はあらゆる状況における女性の「普遍的な権利」にしようと強力に働きかけている。
そしてきわめつけはジェンダー理論が国連事務局の中に急速に広まっていること。既に地上部隊の配置を終え、発射準備を完了したかに見える。国連は世界各国に法律や教科書を書き換えるよう促し、特にアフリカや中南米の開発途上国に圧力をかける。これは一国の社会事情と主権に対する侵害だ。今の国連戦略は、条約を常に再解釈し、その中にある言葉を無限に拡大解釈しながら、世界中の国々の文化的規範を変えていこうと目論んでいる。
最後に、すべての個人は、性欲との闘いにおいて自由な選択権を有する。それは強力な力であり、抑制されるべき力である。もし抑制されず、正しく導かれなければ非常に破壊的な力となる。あらゆる個人、国家、世界、そして国連が、二つの選択権を有している。私たちが性欲を結婚と家庭の中に限定しようと熱心な努力を傾けるか、あるいは国連がしているように性行為を結婚以外のあらゆる形態に普遍化しようとするか、の二者択一の問題である。
国連は明らかに後者を促進する。前者は家庭および宗教的信条と同盟関係にある。後者にとり宗教的信条は障害物。同事務局の報告を見れば、彼らが婚外の性行為を普遍化する上で、宗教的信条を障害として批判していることは明らかだ。
このように国連と世界は今、大きな選択を迫られている。国連は破壊的な方向に向かっている。世界の国々は、欧米で起こっている危険な傾向をはっきり認識し、それに追随するのではなく、正しい選択をすべきである。(1月23日、ワシントンの国際シンポジウムから、協力=IIFWP、文責・編集部)


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