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国連改革と日本の外交課題 世界のためのビジョンを国際舞台で示せ

思想新聞2000年9月15日号 【視点論点】

初代国連大使 加瀬 俊一 氏

 国連(United Nations)発足当時、母体が連合国だったせいか、国連憲章には「敵国条項」(同憲章107条)がある。これは本来、国連憲章に入れてはいけないものだ。今でこそ188カ国ほどだが、私が大使として国連に行った時、日本は80番目の加盟国だった。それで敵国条項を憲章から撤廃・削除しようという運動を私がやったことがある。賛成者もかなりいてある程度のところまではいったが叶わなかった。実際にできている憲章を、その一部とはいえ修改正することに、どうしても抵抗があったのだろう。
 数が多ければいいように見えるが、実際クジラもいればイワシもいる。つまり国の財力に応じ支払うべき分担金があるが、払えない国もある。そうした国は、大晦日に「これが一部です」と1ドルだけ持っていくと除名されない。国連も除名したくはない。持っていく方もそれを知っているから「どうぞこれでご勘弁を」ということで一年間は大丈夫となる。昔はそれで済んだが、さすがに今はそうはいかない。
 例えば、国連憲章の問題にしろ、この憲章は果たして今のままでいいのか、と。しかし、日本としては今後、国連をどうしていきたいのか、そのスタンスが問題だ。「国連は役に立たない」と言われるが、どうすれば役に立つようになる、世界のためになるのか、というビジョンを考えることである。そのために新しい考え方が出てこなければならない。そういう原理的でかつ実質的な議論をもって、日本は国際舞台に臨むべきだろう。
 そこで、想い出される政治家がいるとすれば、吉田茂(元首相)だ。彼が外相の頃から付き合いがあったが、吉田という人は、細かいことはあまりわからなかったが、大局がわかる人物だった。彼のよさは、物事に対して恐れないという点だ。彼は土佐出身だが、土佐っ子にはそういう気質がある。財産を使い果たし「金は使うためにある」と言ってのけたり、とにかくものの考え方がケタ外れだった。
 日本は資源が何もない国である。その持たざる日本が持っているものは、歴史をたどるとわかることだが、人間、つまり換言すれば人材だと言える。それは教育こそが国力にほかならない。吉田のような人材を輩出するのも国力なのである。
 将来的に、国連はどのような方向に向かうのか。難しい問題だが、国連は今のままではダメだ。ではどう改組すべきかということになるが、日本の新聞などを見ると、国連の緊急総会を開いたなどと、よく勉強してまとめてはいるが、私が見てもわかりにくい。だが国連改組は、現代世界の大きな問題だ。国連が本来のその目的を果たしていない、言い換えれば役に立たない、というのが実状だと言える。
 いったい何のための国連かということを考えると、その目的に合致するような国連でなければならない。だが、国連加盟国はあまたあれど、その国連を自分たちの立場をよくするために使いたい、国益に有利に利用しようという国があまりにも多い。特に、言わば貧乏な国ほどそうした傾向が強い。嘆かわしいことだが、加盟費も納めていない、延滞金をやっと支払うという国が、最も国連を利用しようとする。
 国連の利益を享受しているのは実ところアメリカだ。ところが米国は、あれだけの経済力がありながら理屈ばかりで分担金を滞納している。 逆に一番忠実に払っているのは日本だ。これが小国なら、「払わなきゃ追い出すぞ」と圧力が効くが、アメリカやロシアに「追い出すぞ」とは言えない。政府が悪いというのではなく議会と政府との関係だが、議会は「嫌だ」といって払わない。すると「大金持ち」のアメリカが払わないなら、自分たちのような貧乏な国はもっと払わなくてもいいという理屈になる。
 志がある政治家はいても、そういう人は当選しない。日本の政治家もたくさん知るが、人間やはり徒党を組むとダメになる。今の日本の首相はどうか。やはり日本は大国。大国の指導者たらんとすれば、人が感銘するような思想や行動なりを示さないといけない。それが演説や人柄に表れるからである。(文責・編集部、協力=旧PAX編集部)

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