思想新聞 2001年2月15日号【視点論点】

元米国上院議員
ラリー・プレスラー 氏
私は、旧ブッシュ政権の技術委員会というのを担当していたが、新政権でも移管委員会というのを担当している。特に共和党の方々はビジネスのトップが多く、それを辞めて政権に入るのが難しい。チェイニー副大統領も大きな会社を辞めて入った。ところが民主党は、大学の教授などが多く、職を辞して政権に入りやすいということがある。
まず言論界というのは、非常に強力で、大統領以上に強い権力がある。ニューヨーク・タイムズにしろワシントン・ポストにしろ、CNNなど巨大化したメディアは比較的束になって歩調を合わせることが多いが、ワシントン・タイムズだけが別の道を採り、アジア情報で特ダネを連発してきたことは特筆すべきだ。
私は二つの大学でジャーナリズムを教えるが、これほどまでマスコミが国や政治の行方に大きな影響を与えた時代はない。それでメディアにとりクリントンは民主党だから、よりリベラルな自分たちの意見が反映されると考え、民主党寄りの報道をし、クリントン大統領もそれを利用した。
そうした意味ではブッシュ新政権は選挙報道でも厳しかったが、政権発足するこれからは、景気停滞もありもっと難しくなるだろう。しかし、ブッシュ大統領は非常に有能であり、パウエル国務長官やライス国家安全保障担当補佐官をはじめ、閣僚も非常に経験豊かで人種的宗教的に多様性をもった人たちが集まっている。その意味で米国の歴史が凝集したような統治能力のある新政権が誕生することになろう。
次に議会の動き。司法・立法・行政の三権が分立する米国は、最高裁長官、大統領と議会の議長を務める副大統領と、三者が同等の位置にあるとされている。
例えば上院では現在、共和党と民主党で50人ずつ半数を占めている。過半数は60票近く必要だが、それが得られない場合、政府の機能上、両者が協議することになる。だが、ブッシュ新大統領はテキサス州知事時代、民主・共和という党派的利害を超え一つにする州政治を展開したので大いに期待している。歴史的にも、ルーズべルト政権やその後のトルーマン政権においても、それが実現した時代があった。
それでは、いろいろな哲学をもった人たちをどのようにまとめていくのか。私が思うに、米国は次第に英国がそうなったように、右と左との対局的位置から政治的な考え方が「中央」(中道)に集まるようになってきつつある。例えば、地方分権化を進めたり、いろいろな「妥協」を進める。
大統領選挙で選挙人団を選ぶという現行制度を私は支持したいが、例えばインドで「選挙人委員会」があるように、国ごとに独自の選挙システムがあっていいと考える。
ただ、選挙後、最高裁の決定にメディアは党派的な判決を下したと批判したが、そうではなく、最高裁判事団は政治的見解ではなく、良心の声に従って判決を下したと思う。そして米国の国民自身がそれを支持したのだ。
例えば、今の議会では議長が民主・共和両党から共同議長という形で選ばれる。司法委員会や、私の所属していた商務委員会もそうだ。景気後退期にある今こそ、民主・共和両党が共に一つになることが望まれている。
外交政策について言えば、ブッシュ新大統領は外交に対し神経質になってきたと言われる。しかし、州知事時代に彼はメキシコとの間で非常に良好な関係を維持してきた。
むろん、州知事という立場で完全な「外交」が成り立つべくもないが、ただ彼は、外交手腕に優れていて、非常に優秀なチームに恵まれている自由貿易主義者だ。WTO(世界貿易機関)での発展途上国の様々な問題もあるが、自由貿易を推進するという意味では、私と全く同じ立場に立つ。彼は政権発足後、アジア歴訪など主要な外遊を行うのではないか。
アジアでの大国、中国やインドに対しての見解は、民主主義が機能している国とそうでない国、人権を保障できる国か否かという一貫した観点で戦略を立てており、新政権が、外交では期待以上の実績を上げるのではないかとみられる。
手続き上の遅れもあって、新政権が本格的に活動するのは、6カ月後になるのではないか。閣僚人事が決まり政権がスタートするに際し、メディアが公平な態度で報道することを望みたい。(第18回世界言論人会議のスピーチより、文責編集部)


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