思想新聞2003年2月1日号【マスコミ論壇ウオッチング】
『朝日』には、地下に潜った日本共産党幹部の伊藤律の架空会見記を載せたり、非人間的な社会主義国を労働者の天国のように称えたり、北朝鮮を「地上の楽園」のように描くといったファンタジー創作の伝統がある。
十数年前の巨大テーブル・サンゴ損壊事件も、自然保護キャンペーンに自縄自縛となった水中カメラマンの自作自演だったことが露見し、栄えある『朝日』の伝統に1ページを加えることになった。
ところで、『週刊朝日』1月24日号の「本誌独占インタビュー・地村夫妻が語った『真実』」というスクープ記事も、『朝日』の中では良識派と思われた同誌が、やはり『朝日』の伝統から無縁でなかったことを示すものとなった。
今回の事件は、すでに報じられているように、昨年12月29日に福井県小浜市を訪れた同誌の記者が、地村夫妻との会話を承諾を得ずに録音しただけでなく、記事化しないことを求めていた同夫妻の意向に反して、同誌の巻頭目玉記事として掲載したというものである。
これに対して地村夫妻や保志さんの父親の保さんは、「本人の承諾がないまま記事にした」と『週刊朝日』に強く抗議したが、同誌の行為はたんに地村保志・富貴恵夫妻、父親の保さんと同誌の間の信頼関係を裏切っただけでなく、同誌に掲載されたインタビューの内容が、北朝鮮に残る地村夫妻の子供たちの境遇に影響を及ぶすかも知れないと考えると、あまりに悪質だ。
今回の不祥事に対して同誌の鈴木健編集長は、当初、「取材の承諾を得たものだと理解して記事にした」と語り、地村さん側からの抗議に対しても「取材・記事化について認識の違いがあった」と回答していた。
ところが鈴木編集長は、1月31日号に同誌編集部と『朝日』社内の他部門とが合同で調査した結果を「地村夫妻インタビュー記事についておわびします」と題する1ページ全面の謝罪記事として掲載した。鈴木編集長は、地村夫妻が記事にすることを承諾していなかったことは明らかであり、「記事にしたこと、会話を無断で録音したことを含め、この日の記者の対応は取材の基本的ルールを逸脱し、信義に反するものでした」と非を全面的に認めて謝罪したのである。


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