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File-82 リプロダクティブ・ヘルス/ライツ問題

思想新聞2003年7月1日 共産主義は間違っている!!

摩訶不思議な「人権真理教」国・ニッポン 36

「保守化した」米国だけが反対している?

紛糾・対立する国際会議

Q 米テキサス州で、人工妊娠中絶を希望する女性に対し、医師が「中絶は乳ガンのリスクを高める」と警告することを義務づける州法が近く成立する、と読売新聞が報じています(6月12日付)。
 また先頃、日本でも厚生労働省が「魚のキンメダイなどは体内のメチル水銀が胎児に影響するから妊婦は極力食べないように」という異例の通達を出し、波紋を呼んでいるようですが…。

 
 後者については、「産経新聞」などのメディアで最近取り上げている「ジェンダーフリー」問題の中で言われている「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)の「ヘルス」の方に該当する問題ですね。かつての水俣病の悪夢(メチル水銀中毒が原因)を繰り返さないための予防策とも言えます。しかし、喫煙による影響が肺ガン誘発の圧倒的な原因という説が完全に定着したように、こうした内容も時間と共に明らかになっていくでしょう。
 前者の読売の記事に関しては、これを報じた読売新聞ロス特派員の森田清司記者によると、「中絶に対するブッシュ大統領の厳しい姿勢も追い風になり、米国内の中絶反対派が勢いづく中、法制化される新たな規制強化策だが、専門家の間には『中絶と乳ガンは無関係』との指摘もあり、激しい論争を巻き起こしている」としています。 
 記事では続いて「米国では1973年、中絶を犯罪とするテキサス州法の是非をめぐる裁判で、妊娠3カ月以内の中絶を禁止するのは違憲だとする司法判断を連邦最高裁が示した。しかし判決から30年たった現在も、中絶反対派と賛成派の対立は根深く、米社会の保守回帰が進むなか議論は激化している。…近年は伝統的な道徳的価値を重視するキリスト教右派が政治力を増す中で、中絶希望者に対し24時間の『再考期間』を義務づけるなどの規制を実施している州も多い。その中でもテキサスの新法案は、中絶を思いとどまらせるよう希望者に胎児のカラー写真を見せるという規定に加え、乳ガンに関する警告義務が盛り込まれ、ひときわ中絶規制色が強い内容だ。だが米ガン学会が『乳ガンと中絶の間に確定的な関連は見つかっていない』とするなど医学的には疑問もあり、中絶賛成派は『地球が平らだというのと同じくらい非科学的』と批判。一方、反対派も『関連がないと最終的に決着したわけではない』と引かない」とし、法制化されることは確実な情勢と伝えています。
 さてこの記事はどうも、宗教的バックボーンを持たない、あるいは解さない日本人らしい視点で書かれているようです。アトランタ五輪テロ事件で5月末に逮捕された白人至上主義の「極右」思想を持ったE・ルドルフ容疑者が妊娠中絶クリニックの二件の爆破テロ事件も起こしたとし、中絶反対派が過激なテロリストに結びつける誤解を招くような文脈になっており、読売にしてはかなり偏った内容のように思われます。
 米のガン学会は「乳ガンと中絶に相関関係があると確実に断言はできない」と言っているだけであり、無関係とも言えないわけです。事実、個別には相関性を認める医師もいるから法制化の動きがあるわけでしょうし、中絶を全く禁じたものでもありません。
 しかし例えば、「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」推進の動きに関し、米国は02年の国連子供総会などの国際会議において、バチカンやイスラム諸国と共に、推進を掲げる欧州と鋭く対立することになりました。
 この権利はそもそも1994年にカイロで開催された「国際人口・開発会議」(ICPD)においてはじめて公式に提唱された、女性の権利に関する理念です。この会議は、発展途上国の高出生率(人口爆発)の解決の為の方策として提唱されたものです。
 この「国連子供総会」での米国は、決議草案で「リプロ~」に関する部分に、未成年の女性の中絶を容認するニュアンスが含まれると指摘し、削除を要求。トンプソン米厚生長官は、性感染症や十代の妊娠を防ぐため「(性行為を)自制すべき」と総会で演説したが孤立したと各メディアは報じています。しかし、ウガンダの例のように、決して米国のみが突出しているわけではありません(「視点論点」参照)。

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