思想新聞1998年8月15日号
「躍進・共産党」の正体 Part【2】
罰則なき周辺事態法案
革新首長・議会・住民の共闘展開

共産党は中国との新ガイドライン反対の連携と同時に、地方自治体を中心とする反米反基地闘争を本格化させようとしている。周辺事態法案は米軍協力要請の拒否に対し、何らの罰則もない。また「地方自治の本旨」を盾に、自治体首長がこれを拒否、議会と住民運動の共闘を画策する。臨時国会では、実効性ある有事法整備はもちろんのこと、集団自衛権の問題など本質的な論議が求められる。
共産党は、新ガイドラインを実効あるものにする関連法を「アメリカ有事参戦法」と位置付け、立法化阻止をはかっている。しかし、同党は国会で議席を増加させたとはいえ、立法化に積極的な自民、自由はもちろん民主も議論の用意がある。大勢は有事法整備は必要との方向だ。
そこで、全国地方議員が四千人余、八人の党員首長、百二十の与党自治体をもつ地方から、反米反基地の声を高める戦略を全国展開し始めた。
四月に行われた全国地方議員会議で、不破哲三委員長は「米軍の軍事活動が実際にその県で行われているのは、四十五都道府県に上る」として、在日米軍への協力反対を全議員に認知させた。
また、周辺事態に際しての日米協力では、米軍機の補給・輸送・整備のための民間港湾・空港の使用や、傷病兵の治療で自治体病院の使用などが想定される。法案でも「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、地方自治体の長に対し、その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる」とある。
憲法「地方自治の本旨」を盾に
ここで問題なのは、米軍の協力要請に対し自治体首長が拒否した場合、何の法的罰則もないことである。
政府は、要請協力は当然の「義務」と解釈、多くの自治体も基本的に協力するとみられる。しかし、実際には有事における関係法令の現行法政上で、法的措置や補償措置などクリアすべき問題点は多い。あまりの楽観的姿勢では、自衛隊反対や観念的平和論者などが自治体首長の場合、禍根を残すことは否めない。
これについて、軍事評論家の菊池謙治氏は「国家の大事に際しての協力拒否は、反乱に等しい行為」と前置きした上で、「欧米では有事の際の緊急命令、戒厳令の規定を憲法・法律で定めており、日本と同じ敗戦国のドイツにしても憲法に『国会緊急権』を定め、詳細な有事法制を整備している」と指摘する(思想新聞七月五日付)。
共産党はこのような法案に付け込み、現行憲法が規定する「地方自治の本旨」に基づいて、協力要請を拒否できるとする。日米安保条約によって協力すれば地域が攻撃対象となるなど、住民の生存権や福祉などが脅かされるため、憲法の精神に反するという論法だ。共産党が発行する『議会と自治体』六月号で、法政大の佐藤昌一郎教授は、「米軍への給水拒否」の運動の可能性の検討を訴えた。
また同教授は、七月号で「平和・民主団体はいうまでもなく、広範な住民と『阻止』の一点で共同して、反対運動を大きく発展させる必要がある」と説く。さらに「請願運動をもとにした地方議会での反対決議や革新・民主の自治体の拡大」などで「アメリカ有事参戦法を阻止」できると述べた。
臨時国会で国防の本質的論議を求む
早速、自由法曹団や全労連など共産党系の団体でつくる国民連絡会は七月二十三日、臨時国会での新ガイドラインの立法化阻止に向けた署名集めや宣伝・学習活動の強化を確認。審議継続となった周辺事態法案が爼上にのる臨時国会の開会中、反米・反基地の全国闘争を激化させるとみられる。
こうした反米反基地闘争が、同盟国である米国へのマイナスのシグナルとなることが危惧される。
そもそも、日米関係をふくめ国防政策を危うくさせている根本的問題は、「権利は認めるが行使はできない」という集団的自衛権の憲法解釈にある。
前陸自東北方面総監の長谷川重孝氏は、「有事法整備と、同時に平時から有事に至る間の脅威へ対応するための立法を急ぐべき」と指摘する(読売新聞六月二十一日付)。だが、憲法問題にもメスを入れない限り、不足の事態が訪れた時に混乱を来すことは必定だ。臨時国会では、わが国の平和と安全についての本質的論議が待たれるところだ。


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