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北朝鮮の「拉致」工作の全貌 その2

特集・拉致問題と日朝交渉

思想新聞2002年10月1日号【特集】

ラングーン爆弾テロと大韓航空機爆破

 83年10月9日、ビルマを訪れていた全斗煥・韓国大統領一行がラングーンのアウンサン廟で爆弾テロに遭遇し、主要閣僚4人を含む21人が死亡する事件が起こった。ビルマ政府は北朝鮮の工作員2人を逮捕した。
 この爆弾テロは金正日書記指揮下のチェ・チャンス少将の命令で全大統領暗殺を狙って行われたもので、北朝鮮工作員グループは人民武力部偵察局傘下の「特殊第8軍団」の工作員らであった。工作員グループはラングーン入りに使ったのは、朝鮮労働党対外連絡部所属の特殊工作指令船「東建愛国号」(約五千トン)で、北朝鮮の援助で建設中の陶磁工場の建設資材を運搬するという理由で、事件直前にラングーン港に入港していた。
 同船は朝総連傘下の朝鮮画報社長の文東建が金日成に献上したもので、大阪の仲介会社の岡田海運を通じ四国の今井海運から9億2千万円で買い入れられたものだ。
 「特殊第八軍団」は72年に創設されたといわれる。それまでのゲリラ養成機関である「124軍部隊」と「第17偵察旅団」、さらに労働党対外連絡部傘下の「対南遊撃訓練所」を統合して組織されたもので、労働党中央軍事委員会直属の「偵察局」の指揮下で動いている。偵察局の最高指揮官が金正日書記であった。
 87年11月29日、大韓航空機がビルマ・アンダマン海域上空で空中爆発して115人が犠牲になったのが、大韓航空機爆破事件である。同事件は「蜂谷真一」と「蜂谷真由美」の偽装日本人親子が同機に爆弾を仕掛け爆破させたものだ。「蜂谷真一」は朝鮮労働党調査部に所属する特殊工作員である金勝一、「蜂谷真由美」も同部の金賢姫である。
 金勝一は70歳で長期間、海外活動を行ってきたベテラン工作員で、日本語をはじめ4ヵ国語に精通し電子技術の専門知識をもつ精鋭工作員である。一方、金賢姫は25歳。父は外交部に所属するエリート党員の娘で、平壌外国語大学日本語科在学中に家庭的背景、容貌と才能がすべて優れているとして労働党調査部所属の工作員に選抜された。
 金賢姫は80年4月からスパイ養成機関「クムソン政治軍事大学」で1年間、政治思想理論と撃術(格闘技)と射撃術、行軍などの軍事訓練を受けた後、八一年四月から八三年3月までの2年間、「平壌トンブクリ招待所」で日本人女性である「李恩恵」と一緒に生活をして日本語と日本の風習、生活礼節など、日本人に偽装するための日本人化教育を受けた。
 この「李恩恵」が今回、死亡が確認されたとする田口八重子さんである。田口さんは78年6月、東京・高田馬場の託児所に幼児を預けたのち、北朝鮮工作員に拉致され、日本人化教育の教育係にされていたのである。
 金勝一と金賢姫は87年10月7日、金正日の「親筆指令」を調査部長から受けた。それは「党は南朝鮮側の2つの朝鮮策動とオリンピック単独開催策動をやめさせるために大韓航空機1機を爆破することを決めた。時期的に重要な今回の行動は世界すべての国家のオリンピック参加意思に冷や水をかけることであり、南朝鮮のカイライ政権に致命的打撃を与えることである。必ず成功させ絶対に秘密が保障されなければならない」というものである。
 この指令を実行するために二人を調査部のサイ課長が支援した。87年11月28日にベオグラードでサイ課長から日本製ラジオと時限爆弾などを受け取った二人はバグダッドで大韓航空機に搭乗して爆弾を仕掛け、途中のアブダビ空港で降りた。大韓航空機が爆破されたのち、バーレーンで逮捕され、金勝一は服毒自殺に成功したが、金賢姫は失敗し韓国に護送され、そこで事件の全貌を自白した。
 この事件はいかに日本人が利用されたかがわかる。蜂谷真一さんは東京で実在の人物で、「宮本明」を名乗る人物からパスポート取得を奨められて作成。そのデータがそっくり利用されて偽造パスポートが作られていたのである。「宮本明」は本名、李京雨という在日韓国人の北朝鮮スパイで、71年9月に警視庁が摘発した北朝鮮スパイによる「足立事件」に関わっていたが、証拠不十分で逮捕を免れていた。前述の「小住健蔵」グループの一員で、西新井事件発覚後、行方をくらませており日本国内にいるのか海外逃亡したのか現在も不明のままである。「蜂谷真由美」はまったくの偽装パスポートである。

韓国首脳を襲ったラングーン爆弾テロ

■エピローグ 金賢姫は大韓航空機テロのために7年間にわたって訓練を受けている。金勝一と父娘の工作員としてペアを組まされたのが84年7月のことで、84年8月には現地適応訓練のために2人で欧州を旅行、85年7月から87年1月までは中国広州に滞在し中国人化教育も受けた。

KAL機爆破を告白する金賢姫

 同じ時期によど号グループの妻たちも欧州にしばしば出かけ、拉致人物を物色していた。八尾元店主は87年2月に密かに帰国し横須賀市でバー「アップル」につとめ、同12月に同じ横須賀市にスナック「夢見波」をオープンした。八尾元店主は「日本での活動は自衛隊工作として防衛大学校に入学する高校生を獲得することが任務だった」と証言している。87年の北朝鮮の対韓工作と連動して対日工作を進めていたのである。
 ちなみに八尾元店主が北朝鮮スパイだとわかったのは88年5月のことである。在欧韓国人留学生の抱き込み工作を手がけていた北朝鮮の大物工作員が韓国に亡命し、韓国治安当局に約百枚の写真を提供。その中に八尾元店主の写真が見つかったからだ。後に良心が痛んで転向し有本恵子さん拉致を告白したとしている。       ▼
 以上、「拉致」に関わる70~80年代の北朝鮮の革命工作を見てきたが、拉致事件の根が深いことが理解できよう。これら事件に金正日総書記が直接関わってきたことは疑いもないことだ。それを踏まえて日朝交渉に臨むべきである。

■資料・「拉致」および北朝鮮問題本連合関連・出版物

「朝総連 その恐るべき実態と対日工作」(本連合教宣局編) 北朝鮮の出先機関としてスパイ支援をはじめとして多くの革命工作に携わってきた在日朝鮮総連の実態をあますところなく紹介。
「知られざる北朝鮮 その実態と野望」(本連合教宣局編)北朝鮮のすべてを洗いざらい網羅した小冊子。アベック蒸発事件をはじめとする対日工作も紹介。
「大韓航空機テロ事件 その真相と背景」(本連合編) 大韓航空機爆破テロ事件の捜査結果全文、金賢姫の証言を掲載。同事件の背景に日本に張り巡らされたスパイ網が浮き彫りになり「李恩恵」の存在も明らかに。
『検証・北朝鮮』(ジャプラン出版) 北朝鮮問題の専門家による座談会を収録。北朝鮮という国家の全貌が明らかになる。

「黒猫は誰だ 日本を狙うスパイの正体を追う」
(本連合教宣局編) 北朝鮮の工作船とスパイと治安当局の戦いを描いた映画『黒猫を追え』の解説本。スパイの実態がわかる。
●「反対論への全回答 スパイ防止法案早わかりQ&A」(スパイ防止法制定促進国民会議編) 自民党が作成したスパイ防止法案の条項解説。反対論がいかにデタラメであるか白日に。世界のスパイ防止法も紹介。
「スパイ防止法 反対勢力の実体」 だれがどのようにうごいたか
(スパイ防止法制定促進国民会議編) 拉致を防ぐべきスパイ防止法に反対した共産党、マスコミ、学者らを名指しで批判。だれが「拉致」を手助けしたか全貌が判明する。


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