思想新聞2003年2月15日号 共産主義は間違っている!!
摩訶不思議な「人権真理教」国・ニッポン ―27
一切を性衝動に帰し精神的基盤を破壊
フランス現代思想が継承
Q 構造主義・ポスト構造主義のフェミニズムへの影響は少なからぬものがあるということはわかりましたが、フロイト主義が与えた要因も無視できないと思いますが…。
A 実は心理学との結びつきが強いのが、現象学でありポストモダンの思想であると言えます。しかし、G・フロイトの打ち立てた「精神分析学」は心理学においては、特殊なケースと言ってよいでしょう。さらに付け加えるなら、科学哲学者カール・ポパーによれば、フロイト精神分析学がマルクス主義と同様に「科学ではない」ことになります。
さて、フロイトは、「人間は単なる生物で、常に肉的快楽が最大になるよう行動する」との人間観に立ち、「愛」とは「性的交合を目標とする性愛」にすぎないという一種の還元主義を説きました。親子・兄弟の愛も、性交の目的が「疎外」されて生じた情念と断定するのです。これは一切をリビドー(性衝動)に帰す「汎リビドー論」とでも言えるでしょう。
こうしたフロイト思想のさらなる問題は、宗教全般を「神経症」「ヒステリー」と断じてしまったことです。ですから人類が歴史をかけて築きあげてきた「伝統」と呼ばれる知恵とか規範(文化全般と呼ばれるもの)を、「抑圧要因」としてことごとく排除するのです。結果的に精神的な営みを否定し破壊するわけですから、まさに唯物論的還元主義と呼んで差し支えありません。そこからさらに過激なライヒ、マルクーゼといったフロイト左派が現れたのです。
精神科医のライヒは、フロイト思想をさらに推し進めて「あらゆる神経症は性器性欲の障害から発生する」として、そこから解放された人間は何の罪悪感も恐怖や不安もなく「性器愛」を貪る「性器的人間像」を提唱しました。彼の人間観に立てば、一切のタブーを排して近親相姦もホモ・セクシュアル、乱交もすべてが「許される」。それどころか彼は「青年の性行動を単に容認するだけではなく、積極的に奨励する社会」を実現せよとした。そのうえで「ファシズムとの闘いと革命は、性器性欲優位の確立をめざす性器的人間によって担われる」と共産革命を位置づけたのです。
一方、社会学者マルクーゼは、エディプス・コンプレックスなどフロイトの社会文化論を発展させ、マルクス主義を先進産業社会に即して再把握し、各時代の「社会的抑圧は大衆のエロスを搾取して成り立つ」とし、その「支配からの解放」と「自由なエロス社会の実現」を目指す「エロス文明論」を展開しました。
1960~70年代にかけ、ライヒとマルクーゼらの主張する「性解放」の思想は、欧米や日本などの新左翼や共産党などの青年層に大きな影響を与えました。
そしてこうした考え方は、さらに理論的な装いが施されて「ポストモダン」の思想へと受け継がれました。その主要な舞台は、ドイツからフランスへと移ったのでした。
フランス現代思想の中でも、とくにマルクス主義と結びついたのは、先に述べたマルクス主義的実存主義のJ・P・サルトルのほか、構造主義的マルクス主義によって世界や経済システムを解釈したフランス共産党員ルイ・アルチュセールや、「最大の欺瞞は救済の信仰だ」(『無神学大全』)と断じたG・バタイユらがいます。


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