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中国を厳しく非難する「安倍カラー」版防衛白書

この記事は2013年7月19日に投稿されました。

「わが国周辺の安全保障環境は一層厳しさを増している」
 「中国の動向は、…地域・国際社会にとっての懸念事項である」
 政府は7月9日、2013年版の防衛白書を公表した。中を見ると、中国の膨張路線を非難する厳しい言葉が並んでいる。
 1月におきたレーダー照射事件に対しては、中国当局の対応について次のように指摘した。
 「中国国防部および外交部は、同レーダーの使用そのものを否定するなど事実に反する説明を行っている」
 米国でも問題になっているサイバー攻撃に対しては、「中国の人民解放軍、情報機関、治安機関、民間ハッカー集団や企業など様々な組織の関与が指摘されている」と明言した。
 当然これらの記述に対して中国側が黙っているはずがない。中国国防省の報道官は11日、「日本は自身の誤った行動を反省せずに、逆に中国が現状を壊していると(中国に)罪をかぶせている」と言い返し、「強い不満と断固たる反対」を表明した。

白書全体を「安倍カラー」が貫く

「こんなふうに書いて中国から反論されないのか。」
 白書の概要を事前に聞いたオーストラリア政府関係者は、防衛省の担当者にそう質問した。実際、自衛隊内部からも「中身は事実だが刺激的だ」との声もあったという。このまま公表すれば中国側が反発することは容易に予想がつく。それではなぜ防衛省は、中国に対する「刺激的」な表現を変えなかったのだろうか。
 その最大の理由は、事前に目を通した首相が「いいじゃないか!」と合格点をつけたところにある。つまり今回の白書は安倍首相公認の白書であり、いわば「安倍カラー」版白書ともいえるものなのだ。
 「安倍カラー」の外交における最大の特徴は、「価値観外交」にある。
 「価値観外交」とは、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的な「価値観」を共有する国々との関係を強化する外交だ。裏を返せば、自由や民主主義に反する共産主義国家、すなわち中国や北朝鮮の政治体制に対しては決して相容れない姿勢を明確にしていることになる。
 安倍首相は、第一次安倍内閣の時代から、この「価値観外交」を打ち出していた。当時は「中国の反発を招く」との批判も強かったが、安倍首相は今なおこの方針を変えていない。その具体的な内容は、安倍首相が昨年12月に寄稿した論文、「アジアの民主主義安全保障ダイアモンド構想」に書かれている。

安倍首相が提起した「安全保障ダイヤモンド構想」

この論文は、プラハに本拠を置く国際NPO団体に安倍首相が寄せたものである。論文の内容は、中国の海洋覇権を防ぐために日豪印米の四か国が、インド洋から西太平洋に安全保障のダイヤモンドを形成すべきだと主張するものだ。さらに論文では、英国、マレーシア、シンガポール、ニュージーランド、タヒチのフランス太平洋海軍との連携についても触れている。
 非常に大胆な構想だが、安倍首相は就任後、これを着実に実行に移していった。
 2月にはオバマ大統領との日米首脳会談を行い、「日米同盟は完全に復活した」と宣言した。また、就任からわずか半年の間にASEAN諸国と印豪の30か国に首相もしくは外務大臣が訪問して連携を強化した。さらに東南アジア歴訪の最後に訪れたインドネシアでは、「法の支配」と「自由で開かれた海洋の重視」などを掲げた「日本外交の新たな5原則」を発表し、中国を強く牽制したのである。
 安倍首相の「価値観外交」には、かつては批判の声も強かったが、今は評価する意見も多い。安全保障に詳しい拓殖大学海外事情研究所の川上高司教授は次のように述べている。
 「中国は、相手が強いと対話をし、弱いとみればかさにかかってくる国だけに、正攻法ともいえる。実現すれば硬いダイヤモンドになると思う。」
 こうしてみれば、「刺激的」ともいえる防衛白書も、安倍政権が着実に進めてきた「価値観外交」と何ら矛盾するものではない。むしろここで中国の反応を恐れて曖昧な表現の白書を公表すれば、「弱いとみればかさにかかってくる」中国を勢いづかせることになっただろう。そうなれば、これまでの「価値観外交」の成果が消し飛んでしまったかもしれない。実は今回の「安倍カラー」版白書は、対中包囲網を強化しようとする政府の一貫した外交政策を背景に、きわめて自然な流れの中で出てきたものなのである。

2013年7月19日

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この記事は2013年6月21日に投稿されました。

日米への敵意をむき出しにした中国国防白書

中国の国務院は4月、2012年版の「国防白書」を公表した。2年ごとに公表される中国の国防白書は今回で8回目となる。
 中国の国防白書は世界各国が公表する白書とは内容が異なっており、国防政策の基本が広く解説されているものではない。中国が独自的に取り上げた項目が順次説明され、国防費の用途の説明などは一切ない。
 ここでは、今回の白書が意図している内容について特に二つの点を説明したい。一つは中国があらゆる国家戦略において軍事力を前面に押し出して活用しようとしていることであり、二つ目は日米を中心とした国際社会に対してこれまで以上に威圧的な態度を明確にしたことだ。

軍事力を前面に立てる強権的国家戦略

今回の白書の特徴の一つは、「軍事力をあらゆる方面で用いる」ことを強調していることだ。たとえば陸軍は、人民武装警察と連携することが明記されている。
 中国では、共産党政権に対する不満が爆発寸前であり、民主化を望む運動も随所に見られる。国内の騒乱の数は年間およそ18万件ともいわれている。通常の国家ならいつ破たんしてもおかしくない数だ。
 これを徹底して弾圧して取り締まるのが人民武装警察だが、白書では陸軍が連携することが明言された。つまり、「共産党政権をゆるがす勢力に対しては、断固としてこれを弾圧する。そのためであれば軍事力を用いることも辞さない」というのだ。
 陸軍以外にも軍の連携は明記されている。海軍と国家海洋局との連携強化がそれだ。
 日本では、海上保安庁が領海の警備活動にあたっているが、保有している巡視船は全国で117隻しかない。日本の国土面積は世界で61番目だが、排他的経済水域を含む海洋の面積は世界第6位である。この広大な海をわずか117隻の巡視船で守り、その中から工面して尖閣諸島の警備にもあたっている。
 これに対して中国では、3000隻の船が国家海洋局で運用されており、これらの公船が日本の領海などに次々と侵入してきている。これだけでも日本は物量的に対応しきれていない状況にあるが、白書ではさらに、この3000隻の公船の背後で海軍が協力体制を敷くことが明記されたのだ。言うまでもなく、「尖閣諸島を手に入れるためには軍事力を用いることも辞さない」と言っているのである。

米国との覇権争いをむき出しに

次は、日米に対する敵意を明確にしたことだ。
 米国は、中国の軍拡に対抗するため、アジア重視の姿勢を打ち出した。白書では、米国のこの立場を強く批判している。米国のアジア重視とは、米国が世界で新しい「攻撃対象」を見つけるためのものであり、地域に不安定化をもたらしているというのである。
 白書では次のように書かれている。
「ある国家(=米国)はアジア太平洋における軍事同盟を深化させ、軍事プレゼンスを拡大し、頻繁に地域の緊張局面を作りだしている」
 さらに白書では、尖閣諸島の領有権に関して日本を初めて名指しで非難した。
 今や中国の日米同盟に対する挑戦は明らかになった。日米両国は同盟関係を強化し、敵意をむき出しにする中国の脅威に対応できる体制を整える必要がある。そのためには、まずは集団的自衛権の行使の問題をクリアする必要がある。緊密な関係を築きあげると同時に、十分な実行力をもって抑止力とするべきである。

2013年6月21日

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