思想新聞2002年9月15日号【マスコミ論壇ウオッチング】
わが国の一部の大手マスコミや論壇の偏向はすでにその体質と化した感があり、その変化を望むのは絶望に近い。このようなわが国の言論状況の異常さの本質を理解するために一助となる書物を紹介したい。
それは8月24日付の「産経新聞」が、その名物コラムの「産経抄」で取り上げた小学館文庫の「GHQ作成の情報指南書『眞相箱』の呪縛を解く」(櫻井よしこ著)である。同書は、戦後のわが国の世論がどのようにして「形成」されてきたかについて見事に解明している。
「眞相箱」は、それに先立つ「眞相はこうだ」と同様、GHQの民間情報教育局が日本国民を反軍国主義者へと導くためのラジオ番組で、今回発行されたのはその台本であり、アメリカ側から見た「太平洋戦争の政治・外交・陸海空戦の眞相」である。
櫻井女史は、「米国の対日再教育、洗脳というべき検閲と情報操作によって、私たちの考え方や価値観は無意識のうちに日本断罪の影を引いているはずだ」と述べている。
戦後の日本は、GHQ側からばかりでなく左翼陣営からも情報操作が巧妙に行われた結果、冷戦終結によって共産主義思想や社会主義陣営の優位性は根底から覆ったのにもかかわらず、いまだに「共産主義者=平和愛好主義者」という神話が論壇や報道機関に生き残るばかりか、さらに強まりつつある。
最近、NHKのBS放送で黒澤明特集が組まれ、一連の黒澤作品が放送された。その中で1946年に封切られ、伝説の名女優、原節子を主人公とする「我が青春に悔いなし」という作品は、戦前の京大・滝川事件とゾルゲ事件をモデルとしたものだが、自由主義者である滝川教授とみられる人物が、尾崎秀実に擬した教え子を「理想に殉じた」として称えるという内容だった。
これはまさに、日本共産党の歴史観を映画にしたような作品だ。黒澤監督自身は共産主義者ではなかったかもしれないが、後に世界的巨匠として賞賛されることになる「世界のクロサワ」にして、終戦直後の1946年当時はこのような作品を製作するほどの時代状況だったことを痛感させられる。


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