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共産党 ここが間違い 「日本人民共和国憲法草案」を堅持する ―― 偽りの護憲政党

思想新聞 1999年7月25日号 共産党 ここが間違い1999

 憲法調査会を設置する国会法改正案が7月6日の衆院本会議で賛成多数で可決され、参院に送付されました。これによって同改正案は今国会で成立し、いよいよ衆院に憲法調査会が作られる見通しです。ところが、この憲法調査会の設置に大反対しているのが、「護憲政党」を名乗る共産党です。憲法の中に憲法改正条項があるにもかかわらず、憲法論議を「改憲への第一歩にしようとするもので断じて認められない」(不破委員長)などと主張しています。この共産党の反対論は矛盾だらけ、国民を愚弄する呆れた内容です。

国民の憲法意識と全く乖離(かいり)憲法調査会への設置反対論

 共産党は「そもそも日本国憲法は国際的にも誇れる先駆的、先進的なものであり、この憲法を変えるための『調査』など必要ない」(東中光雄議員の反対表明)と述べ、「憲法と現実が『かい離』しているというが、それは現実のほうがおかしい」と言っていますが…。

 日本国憲法が「国際的に誇れる先駆的、先進的」と言うのは、一部の「護憲論者」や共産党の主観にすぎません。共産党は「第9条に値打ちがある」(不破委員長)と述べていますが、これも共産党が値打ちがあると考えているだけで、世界でいったい誰が値打ちがあり先駆的と言っているのでしょうか。残念ながらそんな声は全く聞きません。

 そもそも国際法は自衛権、つまり個別的自衛権のみならず集団的自衛権を「国家固有の権利」として認めており、兵力保持は世界の常識であり当然のことです。たとえば、国連憲章第43条には「加盟国は安全確保のため、42条(平和への脅威や侵略行為に対抗するため陸海空軍による示威行為、封鎖行動などの軍事行動を規定)が発動されたならば、必要な兵力を提供し、支援し、便宜を共する事を約する」とあり、国連は加盟国が「非武装」などという事態を毛頭だに考えていません。
 もし9条でいっさいの戦力を持てないとするならば、わが国は憲法98条第2項の「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」に違反する、つまり憲法違反になります。9条を尊重すれば98条は無視せざるを得ず、逆に98条に従えば9条は成り立ちません。こういう事態を矛盾といいますが、憲法は矛盾だらけなのです。

さて、憲法を考える際、日本国民が憲法をどう考えているのかが問題です。共産党がいつも口にするように「国民こそ主権者」なのですから。その国民は、各種世論調査で憲法と現実が「かり離」しており、憲法の改正を考えたほうがよいとする人が過半数を占めています。

 たとえば、読売新聞社の調査によると上図のように、91年に憲法改正に賛成する人が反対を上回り、それ以降、賛成派が常に反対派を上回っています。99年3月の調査では賛成が53%で、反対の31.1%を凌駕しています。憲法を論ずることが望ましいとする人は73%にのぼっています(同紙99年4月9日付)。
 同調査では憲法改正の理由について「人格権やプライバシー権、環境権など、新たな権利についての考え方を盛り込んだ方がよい」「国として自衛権を持っていることをはっきり書いた方がよい」「国際機関の平和活動や人道的支援に自衛力の一部を提供するなど、積極的に協力することを書いた方がよい」「緊急事態に対応できるように、首相や内閣の権限を強化する規定を設けた方がよい」など多彩な回答があります。
 他社の世論調査でもほとんど憲法改正賛成派が反対派を上回っています。このことからも共産党がいかに国民の願いから「かい離」しているかが知れます。現実の方が憲法から「かい離」しているから現実の方を合わせろ、などという「憲法絶対信仰」の教条主義は、国民生活と国際社会のルールを無視した珍論にしかすぎません。

現行憲法にある改正条項を無視する態度こそ憲法違反

 憲法99条の「国会議員は憲法を尊重し擁護する義務を負う」を根拠に、共産党は憲法を「改悪」するための「憲法調査会」の設置は憲法違反であるかのような主張をしていますが…。

 99条は「天皇または摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う」と書かれており、一般国民と公務員を区別しています。
 これは直接、間接に国家の権力と関わる公務員に対して、国の最高法規である憲法を尊重することを求めたもので、いわゆる憲法保障条項と呼ばれています。わざわざこうした条項が設けられているのは、憲法制定当時のGHQの意向とも指摘されていますが、なにも公務員のみならず一般国民とて憲法を尊重することは法治国家では当然のことです。
 尊重するとは「憲法の条項を守ること」であって、その守るべき条項をどのように決めるかは、国民自身が考えることです。それが主権者の責任です。ですから、憲法自体の中にわざわざ第9章に「改正」(96条)の項目が設けられているわけです。
 ご承知のように、96条は「この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない」として、国会にのみ、憲法改正の発議権を与えています。
 その憲法改正の発議権をもつ国会が憲法の「調査」を行う。この当たり前のことが共産党にかかると「違憲行為」になってしまうのですから、まるでペテン師です。

共産党はしばしば自らのことを「護憲政党」と言います。真に「護憲政党」なら、96条を尊重して改正論議を歓迎すべきではないのでしょうか。また「第一章 天皇」の条項を尊重し、天皇を「日本国民統合の象徴」として認めるべきではありませんか。
 自分の都合のよいところだけを取り出して「護憲」を名乗る。このような態度こそ反憲法的と言わざるを得ないでしょう。

さて憲法改正は、いわば世界の常識です。表にあるように、世界の国々は頻繁に改正を行ってきました。それは世の中の変化が著しく、その変化に対応するには、憲法も必要に応じて改正するのは当然のことと理解されているからです。憲法は決して「不磨の大典」ではないのです。
つい最近では、ドイツが例のコソボ紛争など旧ユーゴスラビア問題に対応するために、与野党一致でドイツ軍のNATO(北大西洋条約機構)域外への派遣を認める憲法改正を行いました。
 共産党は改正どころか、論議すら禁止しようとします。思想・言論の自由を密かに封殺しようとする同党の体質がいみじくも露呈したと言えるでしょう。

なぜ堂々と「憲法草案」を国民に発表しないのか?

 共産党は本当に「護憲政党」なのですか。かつて「人民共和国憲法草案」を発表したことがあると聞きますが…。

 その通り、共産党は「憲法を守る」とか「唯一の護憲政党」などと言いますが、その実、「人民共和国憲法草案」を保持しています。
 この憲法草案は1946年6月に発表したものです。当時、憲法議会(第90回帝国議会)が開催されており、ここで共産党は現行憲法の草案、とりわけ天皇条項や9条に猛反対していました。そこで代案として天皇制廃止を柱とする「人民共和国憲法草案」を発表したのです。
 この共産党の憲法草案は1936年にスターリンによって制定されたソビエト連邦憲法(通称、スターリン憲法)とウリ二つの内容です。共産党はスターリンやソ連批判を行いつつ、一方ではこの憲法草案を今なお後生大事に党の基本的考えとして堅持しているのです。
 たとえば、日本共産党中央委員会出版局が96年11月5日に初版を発行した『日本共産党綱領文献集』(98年9月・第4版)には、わざわざ「付」として「日本共産党憲法草案」を全文掲載しています。この共産党の憲法草案は「天皇制廃止」を「日本人民の民主主義的発展と幸福の真の保障となる」と位置付けているものです。昨年夏、不破委員長は天皇制を容認するかのような発言をしましたが、天皇制廃止の本音はまったく変化していないことがこの憲法草案からもうかがい知れます。
 実際、日本共産党綱領には共産党が将来めざす政権の性格として「君主制を廃止し、反動的国家機関を根本的に変革して民主共和国をつくり」と明記しています。
 このように見れば共産党を「護憲政党」と呼ぶのは、まったく筋違いと言わざるをえません。共産党はなぜ堂々と「憲法草案」を国民に発表し啓蒙しないのでしょうか。それを隠し、自らを「護憲政党」と名乗るのは国民を愚弄する態度です。

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