この記事は2011年9月16日に投稿されました。
9・11同時多発テロ事件から10年。米国はテロとの戦いで、6000人の兵士を犠牲にし、1.3兆ドル(約100兆円)もの戦費を費やした。テロとの戦いが財政を悪化させ、2008年のリーマンショックへの対応が追い打ちをかけた。失業率は9%台で高止まり、景気も回復の兆しを見せない。今年8月5日には、史上初となる米国債の格下げを招いた。米国の財政危機は深刻な状況に陥っている。
オバマ大統領は9月8日、上下両院合同会議での演説で「国家的危機」を訴え、総額4470億ドルの新たな景気雇用対策を打ち出した。
米国の国力低下と中国の国力上昇
世界経済に占める米国GDPの比率を見ても、9・11前年の2000年は31%、2010年は23%である。(ストックホルム国際研究所資料)国際競争力順位も2000年は1位、2010年は4位に下落している(スイスの世界経済フォーラムの判定)。
クリントン元大統領が一般教書演説で「我が国は史上最強の状態にある」と宣言したのは2000年1月のことだが、この10年で、米国は「史上最強」の状態から「国家的危機」の状態へ移行したのだ。
米国が国力を低下させたのに対し、この10年で国力を増強したのが中国だ。中国はこの10年でGDPの世界経済に占める比率を5%以上伸ばし、世界第2位の経済大国となった。
米国の国力低下と中国の国力上昇、それを象徴していたのが、8月18日に北京で行われたバイデン米副大統領と周近平国家副主席との会談だった。中国は米国債を1兆1000億ドル以上保有する世界一の米国債保有国(債権国)だが、それを背景に周近平氏はバイデン氏に対して強気の外交姿勢を見せた。
国営新華社通信は「中国は最大の債権国として、米国の構造的な債務問題への対処や中国のドル資産の安全確保を求める当然の権利を有する」と主張。その上で、巨額の軍事費と社会保障費を削減しなければ、さらなる国債の格下げを招く」と財政再建の一環として、米国に軍事費の削減を求めた。(8月19日 読売新聞)
今後の米中関係は中国が米国と対等な立場で注文をつける場面が増えていくとみられている。
米国の軍事力削減を見据えた安全保障戦略の構築を
米国の国防予算削減という内政事情が、日本の安全保障にも直接的な影響を及ぼし始めている。米政府が沖縄に駐留する海兵隊8000人のグアム移転の内容を、司令部中心から戦闘部隊中心に切り替えるというのだ。司令部移転の場合には、家族住宅、医療施設、娯楽施設、下水道整備などで膨大な経費が必要だが、独身者が大部分を占める戦闘部隊を移転させれば、こうした施設を作らずに移転できるという理由からだ。当然、戦闘部隊が沖縄から減る分、抑止力が弱まるとの懸念も出ている。(9月15日 読売新聞)
日米同盟が日本外交の基軸であり、日米同盟深化が現在の日本の安全保障政策の最優先事項であることに変わりはない。しかし、米国の軍事力削減を見据えた上で、長期の安全保障戦略も同時に構築していかなければならない。自由アジアの平和と安全はアジアの国々が結束して守っていく、そういう気概を持たなければならない。


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