この記事は2014年8月27日に投稿されました。
韓国内で、日本の植民地支配からの解放を記念する「光復節」(8月15日)に、朴槿恵大統領が演説を行った。昨年同様、日本のマスコミでは「慰安婦問題で日本に謝罪を要求」などとの見出しが並んだが、実際の演説内容は抑制的なものだった。
朴大統領が演説で対日関係に言及したのは、セウォル号問題に関わる国内問題や、北朝鮮問題などを一通り話し終えた後の最後の部分だ。分量としてもさほど多くない。具体的には、「来年は韓日国交正常化50周年を迎える」「両国は新しい50年を眺めながら未来志向的な友好協力関係に進まなければならない」「来年は新しい未来に向けて共同で出発する元年になることを望む」などと述べている。
もちろんそのためには「日本の政治指導者の知恵と決断を期待する」と、日本側の謝罪を要求しているが、これまでの演説に比べれば明らかにトーンダウンしている。たとえば今年の3.1独立記念日の演説の際には、「(日本は)歴史を否定するほどみすぼらしくなり、窮地に追い込まれる」「政治的な利害だけで考えれば孤立を自ら招く」などと厳しい対日批判を展開した。今回の演説は、これまでにない柔らかい表現になっているのだ。
現実を直視し始めた有識者らの発言
この背景には、韓国内で日本との関係改善を求める声が出始めていることがあげられる。代表的なものは、韓国国際政治学会のナムグンヨン会長の「安倍政権の歴史認識は問題だが、北東アジアで最も近い韓日両国が緊密に協力する部分は非常に多い」(韓国紙『中央日報』8月16日)、元外交部北東アジア局長で東西大学特任教授の趙世暎氏の「日本の態度の変化が前提だが、南北統一にとって日本は重要なパートナーだ」(同8月12日)などだ。韓国内の世論を意識して言葉は慎重に選んでいるが、いずれも関係改善をかなり強く主張している。これまでにはない現象だ。朴大統領は支持率が低迷し世論にかなり敏感になっているから、こうした変化も意識しているだろう。
中国と北朝鮮は共産主義と人治・独裁国家だが、日韓両国は民主主義と法の支配という価値観をもつ。協力関係を強化することは、経済面でも安全保障面でも、さらには南北統一に対しても極めて重要なのはだれが考えても明らかだ。韓国は歴史的に中国との関係が深かったから今でも親中派が多いのは事実だが、中国当局者の「朝貢外交に戻るのはどうか」(韓国紙『朝鮮日報』5月18日)発言など、高圧的な態度が露わになる中、警戒感も高まっている。
特に韓国は経済的に中国への存度が高い。安全保障面でも対北政策について中国との関係を切るわけにいかない。日本、米国との関係が薄れれば、中国に飲み込まれる可能性ががぜん高くなる。安倍政権が毅然とした態度をとり続け、日韓関係が悪化する中、ようやく韓国内でも現実を冷静に分析する発言が出てきたのだ。
国交回復50周年を契機にせよ
新しい駐日大使に任命された柳興洙氏が23日に来日した。知日派で関係改善を強く望む柳氏は、「今、韓日関係には雨が降っているが、今後関係は一層固くなると信じている。雨降って地固まるということわざは韓国にもある」(韓国紙『中央日報』8月21日)と話している。柳氏を送った朴大統領の本音を反映していることは間違いない。
来年は両国の国交正常化50周年だ。民間のレベルでも多くの記念事業が開かれるに違いない。両国政府はこの貴重なタイミングを生かし、朴大統領が演説で述べたとおり「共同で出発する元年」にしてほしい。
2014年8月27日


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