この記事は2011年1月8日に投稿されました。
フランスの自動車大手ルノーの幹部3人が日産自動車と共同開発中の電気自動車(EV)の技術を漏洩した事件が波紋を広げている。ルノーの株主でもある仏政府が「産業スパイ事件」とみて捜査を開始すると、AFP通信などが伝えている。漏洩したのはルノーと資本提携する日産とともに進めているEV開発技術だ。つまり、この事件は他人事ではない。わが国の日産のEV技術が盗まれたことになる。漏洩させたのは中国スパイで、幹部らに大金が流れているという。
朝日新聞によると(1月8日付)、仏下院の経済情報部会長のカラヨン議員は数年前から企業の機密保護を進める法案づくりを訴えてきたが、今回の事件について「産業スパイ事件であるのは明らかだ。新興国である中国は先端技術を取り入れるのに必死だ。中国企業の利益と密接に結びついているのは間違いない」と語った。7日付の仏フィガロ紙も、ルノー関係者の話として漏洩情報が最終的に中国側に渡った可能性があると報じた。 ベッソン産業・エネルギー担当相は今回の事態を「経済戦争」と表現している。
世界中でスパイ活動する中国。矛先は日本にも
この事件は中国によるスパイ活動の一端を露呈させたにすぎない。フランスのみならず世界中でスパイ活動を行っているからだ。むろん、わが国も例外ではない。警察庁の平成21年版「治安の回顧と展望」は、中国の対日スパイ活動について先端科学技術をもつ企業や防衛関連企業などに研究者や留学生らを派遣し、「長期間にわたって巧妙かつ多様な手段で先端科学技術の情報収集活動を行っているとみられる」と警告を発している。
また「回顧と展望」は米議会公聴会での元FBI捜査官の証言やドイツにおける中国の産業スパイ活動などを紹介し、秘密政治情報の獲得工作や先端科学技術スパイ活動が日本でも巧妙に行われているとしている。それによると、米国議会公聴会での元FBI捜査官の証言は①中国が対米スパイ活動に情報収集分野で最大額の経費を投入②米国の高度技術や高度製品の製造法を盗むだけでなく恒常的に米国政府の秘密政治情報なども獲得しようとした。また中国の産業スパイ活動によって機械・兵器製造企業などのドイツ企業が年間500億ユーロの損失を受け、3万の職場ポストが失われているとするドイツ情報機関の報告を引用し、中国が日本でも先端科学技術をもつ企業や防衛関連企業などに研究者や技術者、留学生を派遣し、「長期間にわたって巧妙かつ多様な手段で先端科学技術の情報収集活動を行っているとみられる」と警告した(産経新聞09年12月10日付)。ルノー・日産が今回、標的にされたのだ。
トヨタ・デンソーでは大量の機密漏洩
トヨタはすでに被害にあっている。07年3月、トヨタグループの一翼を担う日本最大手の自動車部品メーカー「デンソー」において、中国人技師が製品図面を盗み出し横領容疑で逮捕された。盗まれた情報は実に17万件。そのうち機密情報は約1700件、産業用ロボットやディーゼル噴射装置などデンソーの最高機密が280件もあった。中国人技師は中国ではミサイル・ロケット開発を行なう人民解放軍直営の軍需工場に勤務しており、日本に留学しデンソーに入った軍事スパイである。
ヤマハ発動機は中国スパイに身を売った。07年2月、静岡、福岡両県警は農薬散布や空中撮影などで使う無人ヘリコプターを中国・北京の航空会社に輸出しようとした容疑で、ヤマハ発動機の幹部らを外為法違反で逮捕した。無人ヘリは軍事転用に可能なため外国為替法で輸出が規制されているが、ヤマハ発動機はそれを承知の上で性能を故意に過少申告して中国へ不正輸出を続けていたのである。中国への輸出先のひとつに中国人民解放軍直属の兵器メーカー「保利科技有限公司」(ポリテク社)もあった。ポリテク社は中国軍事産業の中心的地位を占め、1996年には自動小銃AK47を2000丁、米国に大量密輸を図った事件で容疑対象になった、いわく付きの会社である。中国軍は台湾への軍事侵略を念頭にヤマハ発動機の無人ヘリを「敵地情報収集用」UAV(無人機)に転用、配備に躍起となっていた。02年5月には中国国営新華社がヤマハ発動機の無人ヘリを基礎に中国の国産無人ヘリを研究開発し「科学研究面、軍事上で重要な価値がある」と報じており、軍事転用されているのは確実である。この事件では中国人ブローカーが暗躍、その一人は中国共産党中央対外連絡部の関係者とされ、明らかにスパイである。いずれ中国はヤマハの技術をもとに「国産無人ヘリ」を製造し、世界中で販売してヤマハを駆逐するだろう。実に馬鹿なヤマハ経営陣である。
海自潜水艦の技術も中国スパイに奪われた
こうした日本国内の事例も氷山の一角にすぎない。警視庁公安部は07年2月、防衛庁(現防衛省)技術研究本部の元技官を在職中に潜水艦に関する資料を持ち出した窃盗容疑で書類送検した。資料は中国に渡っており、単なる窃盗事件ではなく中国によるスパイ事件だった。元技官は1971年に防衛庁に入庁し、技術研究本部で潜水艦を造る鉄鋼材料の強度向上の研究などを担当。02年、同本部第一研究所の主任研究官で定年退職。資料を持ち出したのは在職中の2000年のことで、「高張力鋼」と呼ばれる潜水艦の船体に使われる特殊鋼材や加工に関する技術報告書(B5版34ページ)をコピーし、無断で持ち出した。報告書は防衛庁が自衛隊法で定める防衛機密と指定していなかったので、警視庁は自衛隊法違反容疑ではなく、窃盗罪で書類送検したという。だが「高張力鋼」情報の漏洩は潜水艦の潜航深度や魚雷などによる破壊程度を教えるばかりか、それを「敵」の潜水艦建造に利用されれば、わが国への脅威が増す。まさに売国的スパイ活動である。
元技官は中国大使館の武官らと付き合いの深い貿易会社元社長の要求に応じて報告書のコピーを渡していた。元技官は現職中の01年末に元社長に誘われて中国・北京に渡航しているばかりか、国内では在日中国武官らと再三、飲食をともにしていた。明らかに金につられてスパイに成り下がったのである。元社長は防衛関係者と広く接触し、04年までの10年間に約30回も中国に渡航している。中国の海軍力増強は実にスパイ活動によって日本の技術を盗み出して行っているのである。
ちなみに、大手精密機器メーカー「ニコン」は06年にロシアのスパイ活動の被害にあった。元研究員が光通信に関する機密部品をロシアの在日通商代表部員に渡していたのである。部員はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)に所属している。機密部品を軍事転用すればミサイル探知の画像送信システムに利用が可能とされている。 これらもほんの一部の例にすぎない。これでもスパイ防止法を制定しないというのか。
2011年1月8日


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