この記事は2011年1月21日に投稿されました。
当たり前の話だが、中国には言論の自由がない。国家指導者が海外で語った発言も国内では報じられなかったり、都合よく修正したりして伝えられる。こんな国とは、まともな外交関係を望むほうがどうかしている。米中首脳会談も例外ではなかった。
朝日新聞によると、中国の胡錦濤国家主席が1月19日の米中首脳会談後の共同会見で「人権の普遍的な原則を尊重する」と発言したことについて、中国外務省が中国主要メディアに対し、「強調しすぎないように」と報道に自制を求める内部文書を出していたことが分かったという(1月21日付=ワシントン峯村健司記者)。それによると、内部文書は「メディア報道参考内部資料」と題され、A4用紙7ページにわたって共同声明の各項目の説明と、報道すべき部分について指示が書かれており、「成果のみを積極的に報道し、世論を正しく誘導する」よう求め、「指示を厳格に守り報道に当たること」と命じ、首脳会談直後に中国の主要メディア各社に示された。これを受け胡氏の人権関連発言について中国の主要メディアはまったく報じなかった。人権問題で米メディアの記者が「あなたは質問に答えていない」と胡主席に詰め寄る記者会見の場面は中国国内ではシャットアウト、北京で視聴できるNHK国際放送のニュースでもこの場面や胡主席に対する抗議行動の場面は遮断され、真っ黒になったという。いつものことながら、官製(共産党製)歪曲報道である。
文革期以来の言論弾圧が進行中
ことほど左様に中国には言論の自由はなく、国民世論を共産党のもとで掌握しようと血眼になっている。とくに今年は辛亥革命100年(10月10日)、中国共産党創立90周年(7月1日)を迎えることもあって徹底した言論統制に乗り出している。年明けの1月1日に開かれた共産党統一戦線組織・人民政治協商会議の新年茶話会で胡主席が「調和・安定の促進」を強調、これを受け4日には党全国宣伝部長会議が開催され、全国で「愛国主義教育」を徹底して行うことが確認されたという。党中央宣伝部は5日、全10カ条からなる報道規制をメディアに文書で通知した(日本経済新聞1月19日付=北京支局・尾崎実記者)。通知は「2つの記念日に向け、良好な世論環境を構築」するよう要求し、次のような規制をしている。▽災害・事故=発生地と異なる地域のメディアは取材不可。重大な災害や事故は中央メディアの現場中継も認めない▽土地収用問題=暴力的撤去や立ち退き過程で起きた自殺、抗議などの報道禁止▽抗議デモ=問題の矛先や焦点が党委員会や政府に向かうことを防ぐ▽腐敗問題=政治体制改革に関する問題提起などをしてはならない。政府と対立する立場に立つことは絶対に許さない▽不動産問題=不動産価格の独自調査や市民の意識調査は禁止。極端な価格変動した事例を取り上げ騒ぎ立ててはならない―といった内容である。中国メディア関係者は尾崎記者に対して「国民生活のすべてを党が掌握した文化大革命以来の言論弾圧だ」と述べている。これが中国の実態である。
中国に尻尾を振り続ける朝日新聞首脳陣
こうした中国のメディアの実情を日本のメディアはどう考えるのか。親中の朝日新聞においても上記の峯村健司記者のような現場記者は言論弾圧に憤っている。朝日1月7日付オピニオン面の「記者有論」では、中国総局の古谷浩一記者が「中国の言論規制 弾圧の陰湿さ知らない国民」と題し、中国当局の弾圧の陰湿さを報告している。中国には強力な指導力を発揮し経済発展しなければ国民が豊かにならないという強権容認論が内外にあるが、古谷記者はこれを真っ向から批判し、「こうした主張に首をかしげてしまうのは、政権を批判する人々への弾圧の仕方が『陰湿』を極めているからだ」と指摘、この数カ月に取材できたケースだけでも例は絶えないとし、理由も言わず夜中に自宅を訪ねて幼児とともに連行する。軟禁して外国人記者との接触を絶つ。裁判も弁護士もなしに何年も収容所に拘留する。刑期を終え、釈放された活動家は失踪したままだ。そして、そのいずれもが国内では報道が許されない―と具体例を列挙し、「『法治』はどこにいったのだろう。政権を維持するためなら、何でもできるみたいだ。中国政府が自らの主張に本当に正義があるなら、せめて、もっと堂々と、言論規制の『闇の部分』を国内外に明らかにすべきではないか。…少なくとも、国民の人権を尊重しない国が、隣国との関係を本当に尊重してくれるとは思えない」と厳しく中国批判を展開、返す刀でこうした独裁国と良好な外交関係が築けると信じている親中派を暗に批判している。
その親中派とは朝日新聞の首脳陣(とりわけ論説室)にほかならない。論説室は朝日1月4日付の社説で「中国と向き合う 異質論を超えて道を開け」と、「異質論」を否定し、独裁中国との関係を深めよとする融和策を強調しているのだ。異質論を超えて、とは聞こえがよいが、「陰湿な弾圧」や「独裁」から目を逸らせと言うことである。米中首脳会談を伝える1月20日付朝刊では1面でオバマ、湖錦濤両首脳が笑顔で握手を交わす写真を載せ、見出しは「汎太平洋時代 米中と歩む」とし、まるで米中によって太平洋を仕切ってくれといわんばかりの記事を載せた。かつて中国海軍幹部が米海軍幹部に「太平洋を西と東で分け合おう」と持ちかけた太平洋分割論を思わせる論調である。朝日新聞は現場の声に耳を傾けず、ひたすら中国に尻尾を振っているのだ。
自由のなきところには自由言論を!
日経の尾崎記者によれば、中国紙記者は「報道規制が強まった2008年の北京五輪や09年の建国60周年の際にも、これほど広範囲な指示はなかった」と批判し、「なりふり構わぬ世論誘導は、自らの統治能力に対する指導部の危機感の表れだ」と指摘しているという。自由主義国の日本のメディアは、自由のない国の言論を支援すべきであって、安易に「異質論を超えて」などと独裁政権の言論弾圧を容認すべきではない。朝日新聞は恥ずべきである。
2011年1月21日


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