国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 最新の主張はこちらから

File-92 唯物論批判の思考プロセス

思想新聞2003年12月1日号 共産主義は間違っている!!

マルクス主義とK・ポパーの哲学 3

「普遍的真理」として呼応する「第3世界」

「還元主義」を斥ける

Q カール・ポパーは科学哲学者でありながら、唯物論批判を展開できたのはどういった思考プロセスによるものなのでしょうか。

 はい。それには、まずポパーの「世界観」から見る必要があるでしょう。彼の「三つの世界論」は、唯物論や素朴実在論的世界観に対して非常に示唆的な内容を含んでいるからです。
 マルクスは「下部構造(経済的条件)が上部構造(観念・精神)を規定する」という経済主義を唱えましたが、ポパーは両者には相互作用があり、一方的に依存するものではないと反対しました。この「観念」の部分をポパーは二つの「世界」から成るとしました。一つは意識の状態または心理状態をさす「第二世界」、もう一つは「思考」、殊に科学・詩的思考・芸術作品という客観的内容の「第三世界」というものです。そしてこの二つの「精神にかかわる世界」に対して物理的対象や物理的状態の世界を「第一世界」と呼びました。
 ポパーは従来の哲学者、例えばデカルト、ロック、ヒューム、バークリー、カント、ラッセルらの哲学は、主観的信念とその基礎・起源に関心を持つ哲学で、「信念哲学」としています。従来の伝統的な認識論は、「《私は知る》《私は考える》という主観的な(「第二世界」における)意味での知識や思考を研究してきた」というのです。ですが、科学的知識などいわば「客観的普遍性を持つ知(理論・議論)」は「第三世界」に属するということになります。
 認識主体によって変わることのない客観的知識に自律的な第三世界の研究が認識論において最も重要で意義深いとする、それがポパーの客観主義的認識論の立場です。
 ここまで述べた段階で誤解されやすい点は、ポパーが「科学万能主義者」のように見なされがちだということでしょう。ところが、この《第三世界》こそ「真理としての世界」と見なすことができるのです。
 ポパーはこの三つの世界論をめぐり二つの見解があると言います。①プラトンなどの考え方で、三つが隔絶している②ロック、ミル、ディルタイらにとっては、第三世界は第一世界と第二世界の合併領域の一部にすぎない――それで②のグループにとっては、「永遠的真理などというものはリアルではあり得ない」ということになるのです。しかしポパーは、「《第三世界》の実在性、自律性を認めると同時に、この世界が人間的活動の産物であると認めることは可能」とし、この「第三世界」が人工的でありかつ超人間的である、「作品」は作者を超越しているというわけです。つまり、第三世界の「実在」は第二世界(人間の意識)を媒介にして第一世界(物理的現実)に巨大な影響を与えるからだというのです。
 ポパーはこう言いたいのではないでしょうか。マルクスの理論が正しいなら、彼の理論体系はすべて経済システムによって生じたことになる、と。
 ポパーはさらに、大脳生理学者エックレスと共同して著した『自己とその脳』(一九七七年)において「心身問題」を採り上げることによって、唯物論と機械論的世界観(特に還元主義)への容赦ない批判を展開することになります。
 いわゆる「還元主義」の世界観は、「高次元のものはすべて物質の分子構造に還元できる」というものですが、啓蒙主義時代の百科全書派ラ=メトリの『人間機械論』に代表されるような「人間は物質の集合体であるロボットにすぎない」という見方や還元主義を、ポパーは斥けます。
 唯物論も、「無からは何も生じない」と変化を否定するような「汎心論」というものも誤りであって、ポパーは「宇宙は創造的である。予知できないものが発生するということであり、生命の発生、特に人間の出現は創造的である」としています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました