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「周辺事態法案」をめぐる詭弁

思想新聞19988月25日号

「躍進・共産党」の正体 Part 【3】

デタラメ反対論を徹底的に斬る

 日本共産党は先の参院選で勢力を飛躍的に増加させたことを弾みにして、全国各地で日米安保条約の破棄をめざして「周辺事態法案」の反対運動を繰り広げている。しかし、そこで展開されている共産党の反対論は国連憲章を踏みにじり、日本国憲法まで曲解する詭弁・暴論にしかすぎない。今回はそのデタラメぶりをあばいてみる。

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国連憲章を無視する暴論で「有事参戦法」とこじつける

 共産党は「周辺事態法案」について「アメリカの戦争と干渉に、日本みずから参戦するための法案であり、まさに『アメリカ有事』での自動参戦法案ともいうべきもの」(中央常任幹部会声明)と規定し、「アメリカ有事参戦法」などと呼んでいますが、アメリカのための法律なのですか……

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「米軍の軍事力が最高の安全保障」は世界の常識(横須賀に入港する米空母)

 アメリカのための法律などと表現するのは悪意に満ちた、とんでもないデマとしか言いようがありません。
 ご存じのように「周辺事態法案」の正式名称は「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案」といいます。この名称でも明らかなように「周辺事態法案」は、私たち日本の国の平和と安全を守るための、つまり日本国民のための法律です。
 しかも、国連憲章にのっとった法律なのです。周知のとおり、国連は世界の平和と安全の確保をめざして結成されましたが、国連憲章では「有事」が発生した場合、「国連安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」(第51条)とし、さらに「地域的行動に適当なものを処理するための地域的取決め又は地域機関が存在することを妨げるものではない」(第52条)として、加盟国が二国間や集団的な安全保障条約を締結して平和と安全を確保することを認めています。
 まさに、この国連の精神に則って締結されたのが、日米安保条約にほかなりません。事実、同条約の前文には次のように明記されています。
「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再認識し、(日米)両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次のとおり協定する」
 このように、日米安保条約は国連憲章の精神に則って締結されていることがうたわれています。
 そして、日本国憲法は、第98条2項において「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定しています。したがって、日米安保条約もまた、「誠実に遵守」されることは論を待ちません。
 同条約第四条において、「締結国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締結国の要請により協議する」
としています。
 同条文にもとづいて、自衛隊と米軍が侵略の未然防止や日本への武力攻撃、日本周辺地域での有事の際、どのように協力するかを示す基本構想が、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)です。ガイドラインは当初、昭和53年に策定されましたが、現状にそぐわない点が多々ありましたので、平成8年夏から見直し作業がすすめられ、昨年秋に新ガイドラインがつくれらました。
 これにもとづいて「周辺事態法案」が作成されたわけです。アメリカのための法律などというのは、ためにするデマ宣伝としか思えません。
 政府が新ガイドラインにもとづいて、国民の生命と財産を守るべく努力し、日米安保条約第四条に明記されている「極東における国際の平和及び安全」に対処することを目指した「周辺事態法案」を、先の通常国会に提出したことは当然のことと言えましょう。

憲法の平和原則は自衛権を認める判決を無視

 共産党は「周辺事態法案」について、「憲法の平和原則に真っ向から反するだけでなく、日米安保条約の建前にさえ反するものです」(日本共産党中央委員会発行パンフ『第18回参議院選挙ににのぞむ日本共産党の政策』)と述べていますが…。

 いったい、共産党は「憲法の平和原則」をどう捉えているのでしょうか、ここからして疑問です。
 共産党は憲法九条、つまり、
「【1】日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、これを放棄する。
 【2】前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
 の条文を根拠に、「周辺事態法案」が憲法の平和原則に反すると主張しているのでしょう。しかし、これはお門違いも甚だしいと言わねばなりません。
 すでに述べましたように、「周辺事態法案」の正式名称は「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案」です。ですから、あくまでも自衛のための法律です。言うまでもないことですが、憲法は自衛権まで放棄したわけでは決してありません。駐留米軍や自衛隊の存在について、昭和34年12月の最高裁判決(いわゆる砂川事件に対する判決)が「九条一項で永久に放棄することを定めたのは、いわゆる侵略戦争である」と明言して合憲判決を下したように(その後の最高裁判決もすべて合憲)、自衛権や自衛のための戦争を憲法は放棄したのではないのです。
 つまり、「憲法の平和原則」は侵略戦争を放棄するが、自衛のための戦争は保留するというものなのです。だからこそ、防衛庁を設置し自衛隊を置いているのです。それが日本の国の「平和原則」です。それを勝手に解釈し、自衛隊は違憲だ、在日米軍は違憲だなどと騒ぎ立て、その延長線で「周辺事態法案」も違憲だ、などと煽る共産党のほうが、よほど間違っているとしか言いようがありません。
 もちろん、現行九条は「誤解」や「煽動」を招きかねないので、これを改正して自衛権保持を明文化することが望まれます。とは言っても現行九条でも、これが自衛権放棄と捉えるのは曲解にすぎません。
 また「日米安保条約の建前にも反する」との解釈も理解できません。このこともすでに述べましたが、日米安保条約第4条において、「締結国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締結国の要請により協議する」と明記しています。
 有事になってから協議していたのでは遅いので「随時協議」することになっているのです。新ガイドラインはこの条約の条文から逸脱しているわけではありません。それに、「極東」がその範囲に含んでいることも明記されています。「周辺事態法案」のどこが「建前」にも反するのか、さっぱりわかりません。建前でも本音でも「周辺事態法案」は日米安保条約に則って、日本の平和と安全を守る意図でつくられているのです。 

「基地提供は日本だけ」はまったくのデマ宣伝

 共産党は「(米軍の)部隊に半世紀以上にわたって基地を提供し、今後も21世紀にわたって無期限に基地を提供しようとしている国は、世界中さがしても日本以外にはありません」(前述パンフ)と述べていますが……

 こういうのを正真正銘のデマと呼ぶべきです。
 米軍に基地を提供している国を世界中でさがしてみますと現在、24か国・地域にのぼります。半世紀以上、提供している国はドイツやイタリア、イギリスなど先進主要国でも少なくありません。それに日本が「21世紀にわたって無期限に基地を提供しようとしている国」と決めつけていますが、日米安保条約は終了を通告すれば1年以内に終了することになっているのです(同10条)。
 ですから、この共産党の主張はすべてデタラメであることは明白です。よくも、ぬけぬけとウソが言える、としか言いようがないでしょう。
 共産党は世界情勢をまったく理解していません。日米安保条約を悪と決めつけているようですが、そもそも米国と安保条約を結びたいという国は増えているのが世界の現実です。たとえば、旧共産国だった中欧や東欧の国々がそうです。これら諸国は、こぞって米国を柱とする軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)に加わろうとしています。
 97年7月、マドリードでNATO首脳会談が開かれましたが、この会議で新たにNATOへの加盟を希望したのは、実に12か国にのぼりました。その内訳は、ポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、アルバニア、マケドニア、エストニア、ラトビア、リトアニア。大半の国は、かつてNATOと鋭く対峙していた、旧ソ連を中心とする軍事同盟ワルシャワ条約機構に加わっていた国です。
 それが一転して、こぞってNATO入りを希望する。それは、米国と軍事同盟を結べば、国家の安全が保障されると信じているからです。結局、同会議はポーランドとハンガリー、チェコの三国と加盟交渉をすることになりましたが、他の国々は自分たちも早く入れてほしい、と強く要求しています。
 これが世界の現実です。いまどき米国との安保条約を破棄するというのは、まさに共産党ならではの考え方でしょう。世界の笑い者です。

地方自治の本旨を覆す根拠のない協力拒否論

 「周辺事態法案」は地方自治体の長に対して「その有する権限の行使について必要な協力を求めることができる」(法案第九条)としています。しかし、共産党は「政府に地方自治を蹂躙する権限はない」として協力拒否を呼び掛けていますが…。

 地方自治体は、日本国の法律の外に存在する独立国家ではあり得ません。つまり、地方自治体は、日本国の法律によって構成され、かつ必要な国の法律の執行が法によって義務付けられている公共団体です。このことは「(地方公共団体の組織などは)法律でこれを定める」と憲法第92条に書かれていることからも明白です。地方自治法第148条にも、このことが明記されているところです。
 そもそも、憲法前文は冒頭で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」と述べています。しかも国会は「国権の最高機関」(第41条)と位置付けられています。その国会で決められた法律にしたがって、地方自治体も国民も行動すべきことは論を待ちません。
 にもかかわらず、国の法律にもとづく協力を拒否せよ、と共産党が強弁するのは、違憲のみならず、住民の福利を追求する地方自治の本旨をも侵犯する無法行為と言わざるをえません。

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 以上、「周辺事態法案」に反対する共産党の論理のデタラメさを見てきました。共産党は柔軟路線に変わったという人もいますが、こと日米安保条約になるとオールド・マルキストの本領を発揮していると言えないでしょうか。
 共産党の主張は宮本議長時代からまったく変わっていないのです。

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