国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 最新の主張はこちらから

中国のA2/AD戦略を想定した安保体制構築を

この記事は2012年3月8日に投稿されました。

中国の軍事的脅威が高まっている。中国のA2/AD(Anti Access/Area Denial)戦略に対して、米国は1月5日に新国防戦略を打ち出した。韓国、ベトナム、フィリピン、インドなど中国の周辺諸国も軒並み防衛力を強化している。それに比べて日本の防衛戦略はどうか。2010年12月に閣議決定された「防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画」のいずれもA2/ADにはまったく触れていない。国防戦略も55年前のままである。我々は激変する東アジア情勢を正しく認識し、時代に即した安全保障体制を構築すべきである。

「革命的兵器」の登場

米国防情報局のバージェス局長は2月16日の上院軍事委員会の公聴会で、「中国がDF-21Dの配備を準備している」と証言した。DF(=Dong Fen:東風)-21Dは世界初の対艦弾道ミサイルで、射程距離は1,500km以上。移動中の空母を精密に捉える能力を持つため「空母キラー」と呼ばれ、米国中心の軍事ゲームのルールに革命を起こしたという点で「ゲームチェンジャー」とも呼ばれる。
 中国のDF-21D配備により、台湾や朝鮮半島など東アジア地域で有事が生じた際でも、米海軍は空母艦隊をうかつに派遣できなくなった。中国に近い沖縄に海兵隊を集中させることにもリスクが生じ、米国はミサイルの射程圏外であるオーストラリアやハワイに海兵隊の兵力を分散する戦略を余儀なくされた。DF-21Dの出現が米国の国防戦略を大きく転換させたのである。

※DF-21Dの配備時期について、中国共産党系の『環球時報』は2011年2月に配備を開始したと報じている。DF-21Dの射程距離について、米シンクタンクの戦略予算評価センターは2,130 kmと推察しているが、人民解放軍総参謀長の陳炳徳氏は2,700kmと公表している。

中国のA2/AD戦略

米国議会の複数のシンクタンクの報告によれば、東アジアにおける有事で米中対決が本格化した場合、中国は人工衛星への攻撃やサイバー攻撃で米軍の指揮通信網をマヒさせ、先手必勝で米軍の主要基地に弾道ミサイル、巡航ミサイルで先制攻撃を仕掛けてくる。横須賀、佐世保の米海軍基地が中国のミサイル攻撃を受ければ、停泊中の艦船はDF-21Dの格好の標的となり、基地の破壊は免れない。基地機能を失えば、米海軍は台湾や朝鮮半島のみならず、日本列島全土を含めた第一列島線の領域内に接近(アクセス)できなくなる。これが中国の接近阻止(アクセス拒否:Anti Access)戦略である。中国はDF-21Dの配備によって、人民解放軍の躍進前期(2000年~2010年)の戦略目標である第一列島線内の制海権を確保する能力を獲得したのである。
 さらに中国は2020年までに複数の空母を建造し、第二列島線の領域内における米海軍の自由航行阻止(エリア拒否:Area Denial)を目標としている。年内には改修中の空母ワリャーグが訓練用空母として正式に就役し、「東洋のハワイ」と呼ばれる海南島の海軍基地に配置される。中国はワリャーグの改修作業と同時に、上海市郊外の長興島で2隻の国産空母の建造も進めている。このまま中国の海洋覇権が拡大していけば、いずれ、米国第7艦隊と中国空母艦隊が西太平洋の制海権を争うことになる。ティモシー・キーティング前米太平洋軍総司令官の証言によれば、中国はハワイを起点に太平洋の西側を中国が、東側をアメリカが分割管理するという戦略目標を持っている。

米軍の切り札

米太平洋軍は中国の接近拒否能力を、防空システム、潜水艦、弾道ミサイルの組み合わせと見ている。対抗策として、新型の巡航ミサイルや無人攻撃機の空母配備、無人潜水艦や新型長距離爆撃機の開発を進め、空と海の兵力の一体運用を通した長距離攻撃を柱とする戦略を準備している。これが「ジョイント・エア・シー・バトル(空海統合戦略:ASB)」である。詳細は明らかにされていないが、現在開発中の空母搭載型のステルス無人戦闘攻撃機「X-47B」が米軍の切り札になるのは確実だ。昨年2月4日、X-47Bはエドワーズ空軍基地で初飛行に成功した。2013年に実際の空母を使った離着陸テストを行い、将来は米海軍第7艦隊の空母打撃群に配備される。X-47Bは作戦半径が3,000km近くに及び、50〜100時間の連続飛行が可能なためDF-21Dの射程外から作戦を遂行することができる。

日米同盟を深化し、緊急事態に備えよう

米国がASBの実施に取り組む姿勢をはっきり打ち出した以上、同盟国の日本も中国のA2/ADへの対応を検討しなければならない。今こそ米軍のトモダチ作戦に報い、真の同盟関係を築く時だ。戦略予算評価センターは「ASBの成功は同盟国日本の積極的な参加に懸かっている」と強調する。日本は米国のASBを積極的に支え、強固な日米同盟で中国の覇権主義に立ち向かう決意を固めるべきである。
 日米同盟を深化すると同時に、自国の防衛政策を整備し、防衛力を強化することも必修である。専守防衛、武器輸出三原則、非核三原則、集団的自衛権非行使といった悪しき防衛政策を放棄し、日本版NSC(国家安全保障会議)や防諜組織の創設、スパイ防止法などの法整備が不可欠である。中国のA2/AD能力を脅威として認識していない「防衛計画の大綱」及び「中期防衛力整備計画」を改正し、国の守りに必要な防衛予算と人員を備えるべきである。野田佳彦首相が2月17日の衆議院予算委員会で「国防の基本方針」の見直しに前向きな考えを表明したことは評価できるが、問題は政治の決定力だ。国民の生命と財産を守る安全保障政策に与野党が一致して取り組むことを国民は期待している。
 まもなく東日本大震災から1年を迎える。さまざまな研究者が3・11を契機に首都圏直下型地震の起こる可能性が高まったと報告している。大災害発生の際は、政府は速やかに緊急事態宣言を発令し、安全保障会議を開催して東アジア有事にも対応できる二正面の備えをしなければならない。「乱にあっては乱に備えよ」である。東日本大震災での対応の過ちを繰り返してはならない。緊急事態において、アジアと日本の平和と安全を守ることこそ東日本大震災で犠牲になられた同胞を慰霊することになる。

2012年3月8日

コメント

タイトルとURLをコピーしました