国際勝共連合 機関紙 思想新聞は創刊56年 最新の主張はこちらから

スパイ防止法を制定せよ

思想新聞2002年6月15日号【主張】

防衛庁リスト問題

 防衛庁による情報公開請求者のリスト作成・漏えい問題についてマスコミは「情報公開」という側面からのみ論じているが、こうした論調は明らかに偏向している。国の情報とりわけ防衛情報は「情報公開」と「秘密保全」の両面からそのあり方を問わねばならない。

秘密保全と情報保護の二律背反

 国家にとって国民、主権、領土の安全保障は第一の任務である。とりわけ防衛機密は国家の安全上の死命を握っており、いずれの国もその保護に万全の態勢で臨んでいることは広く知られたことである。
 と同時に民主国家にとって「情報公開」は国家の運営に不可欠であることも事実である。選挙で為政者を決定する民主国家においては国民が広範で正確な国の情報を得ることが政治への正しい判断と選択ができる前提条件になっているからだ。
 したがって民主国家では「秘密保全」と「情報公開」という二律背反するこの問題に対して明確なルールづくり、すなわち法整備をもって対応しなければならない。その基本的姿勢は国家や個人の安全に関わる情報を非公開すなわち秘密とすることを大前提にし、その他の事項について情報公開を原則とするというところにある。
 米国では1966年に行政情報の公開を原則とする「情報の自由に関する法律」(FOIA)が制定されたが、同法は個人的利害関係の有無を問わず誰でも情報公開を請求する権利を持つと規定する一方で、国防、外交、行政人事、企業、金融政策など九つの分野の情報非公開を明記している。さらに国家の最高機密(トップ・シークレット)として【1】軍事計画、兵器、作戦【2】外国政府情報【3】情報活動、情報源、情報手段【4】合衆国の対外関係、対外活動【5】国家の安全に関する科学的、技術的、経済事項【6】防衛的核物質および同施設に関する合衆国政府の計画などを規定し、厳しく秘密保護に当たっている(78年、大統領行政命令12065号「国家安全情報」)。
 また合衆国連邦法典の中に「スパイ及び検閲」を設け、外国政府を授けるための国防情報の収集や引き渡しを行った者には死刑、無期または有期拘禁刑によって厳罰に処する(第794条)。米国は戦後、幾多のスパイ事件によって国の安全が揺るがされ、かつ莫大な被害を被ってきた苦い経験を持っており、情報公開に当たっては国家機密の漏洩防止に全力を挙げているのである。
 米国のみならずドイツは基本法、フランスやスイスは刑法、イギリスは国家機密法の中で情報保護の法整備(スパイ防止法)を行い、防衛秘密がスパイ行為を通じて漏洩する事態を防ぐ努力をしている。こうした大前提のうえに情報公開があることを忘れてはならない。
 つまり情報公開法は国家の存立を前提として情報を公開するものだが、スパイ防止法は国家の存立そのものを守る法制度として整備されているのである。にもかかわらず日本はスパイ防止法を制定しないままに情報公開法を制定している。このこと事態が「平和ボケ」を象徴する何ものでもない。
 こうした中でわが国は防衛に当たらねばならない。防衛は単に兵器と兵器のぶつかり合いではない。最初はすべて情報戦である。情報の取得、保護のいかんによって勝敗が決するのは古今からの鉄則なのだ。情報戦が平時から行われており、スパイ行為は公然非公然を問わずに繰り広げられている。このことは日本国内でスパイ事件が後を絶たないことからも明らかなところだろう。

 今年3月、元在日ロシア通商代表部員が元自衛官に空対空ミサイルの情報提供を求めて書類送検されたばかりである。一昨年9月には海上自衛隊三佐が在日ロシア大使館武官に自衛隊の機密情報を流し自衛隊法(守秘義務)違反で逮捕されるスパイ事件も起こっている。
 したがってリスト問題もこうした情報戦の延長線上で捉えなくてはならない。防衛当局の情報公開室には秘密保全を任務とする「調査」職メンバーが配置されており、リスト作成者が情報保護を念頭にリストづくりを行ったことは当然のことだ。軍事情報に接近を試みる人物は何物なのか。その中にスパイ人脈がいないとも限らず、その調査は許されてしかるべきである。
 しかもそのリストに基づいて請求者の目的を忖度(そんたく)して開示、不開示を決めていたわけではない。リストが情報公開を阻害していたわけではなく、リストによって実害が生じたわけでもない。問題はリストが漏えいしたことであり情報保護のあり方が問題なのだ。
 リスト問題は情報保護の厳格な法整備すなわちスパイ防止法が制定されていない問題点を浮き彫りにした。情報公開と裏表の関係にある情報保護の法整備すなわちスパイ防止法を早急に制定しなければならない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました