思想新聞2002年6月15日号【視点論点】
米下院 軍事小委員会議長
カート・ウェルドン氏
米国は極東から多くを学べ
5月24日の米ロ首脳会談は画期的なものだ。これまで米国とソ連(ロシア)の両国の大統領の議論は、互いを標的にした核兵器を背景に行われ、不満と非難を伴う条約に基づいて行われていた。超大国として双璧をなした両国間に、互いに対する不信感があった。
しかし、今回ブッシュ大統領は議会の超党派的な支持の上で訪ロした。一年前、米ロ関係を変えるため、私は米国のシンクタンクに働きかけ、米ロ両国民、両国の大学・政府機関との間に存するプログラムの目録作りから始め、これら機関に対し相互に意見の不一致がある問題を超え、両国がより幅広い関係を持つための提案を出すよう要請。
真に友好関係を保つために共通の関心事に焦点を当てる。議論の結果、農業、介護、環境、エネルギー、教育、技術、安全保障、文化、地方自治、法律などの分野に関わる具体的提案を示した文書が議会で作成され、昨年十月にブッシュ大統領に手渡した。私はソ連崩壊以後初めて、新しいパートナーであるロシアと本気で関わる準備が議会にできていることを示したかった。
だから、ブッシュ大統領は広範な支持に基く議題を持ってプーチン大統領に会える。それは両国が従来とは異なる新しい関係に入ることを明言し、まず両国民の間に相互の信頼を築かなければならないと謳ったものだ。またロシアの家庭に対し、教育や介護への私たちの関心を示し、ロシアの地方行政に対しても関心を持っていることを示した。この文書がブッシュ大統領に渡された際、同様の文書がロシアの議会からプーチン大統領に渡された。したがって、私は今回の米ロ首脳会談に対して非常に楽観的な見解を持っている。この文書は、新しい時代の始まりを告げるものである。
過去数十年間続いた米国の問題の一つは、国に対するのにリーダーに集中しすぎ、その国の人々と関わることの必要性を理解できなかったことだ。イランやロシアとの関係においてそのような失敗を犯した。これからの時代、他国と付き合うときの基本構造を改めなければならない。
新世紀には極東ほど重要な地域はなく、「戦略的アジア」と呼んでいる。なぜなら、世界における富、権力、企業、機会の変遷を見ると、この「戦略的アジア」が世界をリードしており、今後より大きな指導力を発揮することが予想されるからだ。米国は自らアジアに対し教えることよりもっと多くのことを、この地域の人々の文化から学べる。私はこの地域を旅する毎に、その文化と他者に対する感受性に深い感銘を受ける。
しかし、この地域は同時に多くの困難や課題を抱えていることも事実だ。中国と台湾の問題、北朝鮮と韓国の問題、我々同盟国である日本と韓国の安全保障問題、これらすべての課題について、深刻に考慮せざるをえない。1998年8月に北朝鮮が日本の領土上空にミサイルを発射した際、米国民はみな驚愕した。無辜の人々が同国に拉致されたことにも驚いた。と同時に私たちは北朝鮮の人々の健康を気遣い、台中の安定にも関心を払っている。
ではただ元首に頼るだけでよいか。否、世界の平和は各国の元首だけではなく、我々一人ひとりの双肩にかかっている。自分一人で何ができる、と思うかもしれないが、人類歴史上の偉大な運動はすべて、新しい何かを生み出そうというビジョンを持つ一人から始まった。「戦略的アジア」政策の成否は、私たち一人ひとりにかかっている。
私は下院議員として、年間1千億ドルもの軍事予算を監視する委員会の議長を務める。だが5人の子供の父親として、私の究極目標はこうした軍備を削減し、安全保障のための別の方策を見つけること。武器を増やして安全を保障することはできない。なぜなら政情不安な国家は武力で人々を押さえ、不満を抱えたテロリストは武器を取り大国に立ち向かうからだ。相互理解の不足、相互不信に起因する問題がある限り、私たちに危害を加えようとする人々は後を絶たない。
私たちは安定を作り出す新しいメカニズムを見つけ出さなければならない。これはとりわけ「戦略的アジア」において特に重要なことだ。ブッシュ大統領は数カ月前、北朝鮮・イラン・イラクを「悪の枢軸」と呼んだ。これを支持した人がおり、批判した人もいた。私は大統領のこの発言は、これらの国のいくつかの行動が、その国民の意思に反したものであるからだと理解する。しかし、私は今やこうした国々と関わる時を迎えたと思う。
米国は日本や韓国の協力なくして、北朝鮮や中国との関係をうまく結ぶことはできない。時としてこれらの国に対する感性に欠け、正しい歴史的視点を持つことができないからである。
(5月21日、国際指導者会議での基調講演より)


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