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対テロ情報戦 本格的なスパイ防止法制定を

【思想新聞2001年11月1日号】【主張】

 テロ特措法案や自衛隊法改正案など対テロ関連三法案が10月中にも成立する。米英軍が対テロ軍事行動を進めている現在、法案成立後に速やかに自衛隊派遣など対テロ行動を起こすべきである。
 しかし三法案による対応はあくまでも緊急即応で、本格的な対応策ではないことを想起しておかねばならない。とりわけテロ対策で重要となる情報戦において、日本は不備だらけである。この際、本格的なスパイ防止法、すなわち外交・防衛機密法を制定することを求めたい。
 テロ対策で最も重要なのが情報戦である。今回の多発テロは情報戦で米国が敗北したと指摘されている。CIA(米中央情報局)はテロ予測情報を得ていたものの、犯人グループの所在や決行の目標、日時などを分析できず、結局、数千人の犠牲者を出した。その後、炭疸菌テロに遭遇し、犠牲者が相次いで出ているが、テロリストを逮捕できず、この点でも情報戦の敗北が取りざたされている。
 これを踏まえてブッシュ大統領はCIA強化策を打ち出し、情報体制の改革に当たっている。その一環として機密保全にも万全の体制を作ろうとしている。田中外相が米国務省の避難先を明らかにしてひんしゅくを買ったように、テロとの戦いに情報保全は不可欠である。そもそも情報とは、収集―分析―保全の三位一体のもので、保全体制が不備であれば、同盟国はもとより日本の治安当局も安心してテロ対策に当たれない。
 とりわけ日本はかねてから「スパイ天国」と呼ばれてきた。わが国の防衛、外交、政治など重要な国の命運のかかわる国家機密を外国のスパイが勝手に盗み出しても取り締まる法律が存在しない。外国のスパイの手先になって外国に通報する目的をもってこれら国家機密を不法に探知、収集しても、あるいはその情報を外国に売り渡しても、これを取り締まる法律もない。国際テロ集団がテロ目的で国家機密にかかわる情報を盗み出しても取り締まれないのだ。
 昭和55年に発覚した宮永元将補と現職自衛官の3人がソ連に防衛機密を売り渡していたスパイ事件では、3人は自衛隊法五九条違反(懲役1年以下または3万円以下の罰金)で起訴され宮永は懲役1年、他の二人は懲役8カ月の実刑判決を受けた。同法違犯の最高刑懲役1年は軽すぎると言うので警視庁は当初、窃盗罪(懲役10年以下=刑法二三五条)を適用した。しかし窃盗罪は有体物または管理可能の「物」(電気、ガスなど)を保護法益するもので、防衛庁が盗まれた「紙」に適用できてもそこに印刷された情報は該当しないとして結局、窃盗罪での起訴は見送られた。
 ちなみに懲役1年以下の犯罪というのは、道で拾った他人の物を自分のものにする(遺失物横領罪違反)、無許可でバーを開いた(風俗営業取締法違反)といった軽犯罪の範ちゅうに入る。だから「スパイ天国」と呼ばれ、北朝鮮スパイは本国で「日本で捕まっても死刑にならないから安心して日本に潜入せよ」との指導を受けていた。
 今回、自衛隊法を改正し「秘密保全のための罰則強化」を盛り込り、「防衛秘密を取り扱うことを業務とする者、していた者が漏えい」した場合、5年以下の懲役、「防衛秘密漏えいの共謀、教唆、煽動」には3年以下の懲役の罰則を設けて防衛機密の保全に当たることになった。だが、外国に通報する目的の探知、収集についての条項がないばかりか、外交機密を除外しており国家機密の保全上、不十分きまわりない内容である。
 諸外国では国防機密を漏えいした場合、米国やフランス、ロシア、中国は最高刑が死刑、ドイツは無期懲役といった重罰で臨んでいる。これと比較すると、今回の改正は穴だらけであり、しかも罰則は軽すぎ、「スパイ天国」の汚名を返上するにはとうてい至らない。

米国も秘密保護法の制定求める

 自衛隊法改正を朝日など左翼マスコミは、「冷戦思考の国家秘密法復活」などと批判しているが、冷戦終えん後も漏えい事件が相次いで起こっていることを忘れるべきではない。たとえば98年には防衛庁の装備品納入をめぐる背任事件の一環として航空自衛隊のバッジ(自動防空警戒管制)システムの秘密情報漏えい事件が発覚したし、昨年には海上自衛隊幹部によるロシアへの内部情報漏えい事件が起こっている。同事件では、自衛隊情報ばかりか米海軍情報も漏えいしたといわれる。
 昨年秋、アーミテージ現国務副長官ら超党派の安保・外交専門家がいわゆる「アーミテージ報告」の中で、日本に秘密保護法の制定を求めているのはこうした背景からである。そうしたときに同時多発テロが勃発、テロ情報を収集していたなら悲劇を防止できた可能性があるところから、テロ対策としてあらためて情報の重要性が問われている。
 情報戦に備えてスパイ防止法制定は待ったなしである。

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