この記事は2014年5月13日に投稿されました。
南シナ海で大変な事件が起きている。ベトナムの海上警察の巡視船に中国の大型監視船が体当たりし、高圧放水銃を発射している。これまでに、5月の3日、4日、7日、そして9日と四日間にわたって事件は繰り返されている。ベトナム側の船は損傷し、9人の負傷者が出ている。現場の海域では今なお、中国側の船が80隻、ベトナム側の船が30隻にらみ合いを続けている。
ベトナム政府は事件後、衝突された瞬間の映像を公開し、中国を非難している。一方中国側は、「この海域は中国の領域であり、ベトナム側が中国企業の活動を妨害することは絶対に受け入れられない」と述べている。
真の狙いは対米軍事計画の強化にある
今回の事件現場は、ベトナムの排他的経済水域にあたるが、中国も領有権を主張している。中国の国有企業が海底油田を掘削するための装置を5月3日に持ち込み、ベトナム側が激しく反発していた。
では事件現場がどちらの国の領域なのかといえば、間違いなくベトナムの領域だ。事件現場周辺には多くの島があり、その島々は西沙諸島と呼ばれている。かつてはベトナム人が住む島も多く、漁業などを営んでいた。
しかしベトナム戦争中の1974年、突如として中国の海軍が進出し、武力で実行支配した。その後、西沙諸島最大の島である永興島には滑走路が作られ、中国の軍事拠点になっている。1992年には領海法という法律を中国国内で制定し、この海域は中国の海であると一方的に規定した。今年の1月には、付近で漁業をしていたベトナム漁船が中国の監視船に襲撃され、漁船の漁具と収穫した5tの魚を没収された。
実はこれらの問題は、ベトナムとの間にだけ起きているわけではない。フィリピンの領域であるスカーボロー礁やミスチーフ礁などでも同様の事件が起きている。ただし、フィリピンは米国と同盟関係を結んでいるためそれほど強硬ではない。ベトナムは米国と軍事協力関係を結んでいるが、同盟関係ではないため、その弱みに付け込まれているのだ。
中国はなぜ南シナ海にこだわるのか。南シナ海に石油資源が埋蔵されているからだというのは表面的な見方だ。中国の真の狙いは、米国との軍事的な争いに勝ち、中国を中心とした国際秩序を形成することにあるからだ。
中国は1982年、当時の最高指導者である鄧小平の意向で、第一列島線と第二列島線を軍事戦略として打ち出した。その目的は台湾の奪取にある。台湾の奪取は中国の歴史的悲願だが、もし本格的に奪取を始めれば米国が台湾を支援する。そこで中国は、米国が台湾を支援できないようにするために、2010年までに第一列島線の内側に米軍が侵入できないようにするという計画を立てた。2020年には第二列島線だ。この計画は多少遅れているが、現在、尖閣諸島沖には中国艦船の侵入が常態化し、南シナ海でも軍事拠点が次々と建設されている。第一列島線内を中国の海にするという計画は着実に進められている。
米国の出方を伺う中国
今回の事件の背景には、4月末に行われたオバマ大統領のアジア歴訪がある。オバマ大統領は、尖閣諸島は日米同盟の適用対象であると明言し、48年ぶりに訪問したマレーシアでも対中政策を共有した。フィリピンでは、22年ぶりに米軍が駐留することも決定した。オバマ大統領のアジア歴訪の大きな目的は、中国包囲網を形成することにあったのだ。
これに危機感を抱いたのが中国だ。今回の事件の本質は、米国との関係がまだ弱いベトナムに強硬な態度に出ることによって、米国の出方を確かめようとしたことにある。米国は経済面で中国への依存が大きく、本音では、中国との対立はできるだけ避けたいと考えているからだ。オバマ大統領の内向き志向もある。実際米国は、今回の事件について中国を厳しく批判したが、対応に苦慮していることは間違いない。今後も米中間の神経戦は当面続くだろう。
現在のアジア情勢は、まさに一触即発の状況だ。各国の利害が複雑に絡み合い、解決の糸口を見出すことは容易ではない。こうした状況の中日本は、「日本だけが平和であればいい」という一国平和主義をとってき。これはすでに限界だ。安倍政権が掲げる積極的平和主義、並びに現在議論されている集団的自衛権の行使容認、これらをぜひ推し進めてもらいたい。
2014年5月13日


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