この記事は2014年7月25日に投稿されました。
空席だった韓国の駐日大使に、朴槿恵大統領が柳興洙・韓日親善協会理事長(76)を内定した。正式な就任は8月中旬になる予定だ。
柳氏は警察官僚出身で、国会議員を4期つとめたベテランだ。韓国生まれだが日本で幼少期から小学5年生までを過ごし、日本語も堪能だ。現在は韓日親善協会の理事長でもある。議員落選時に、京都大学で1年研修を積んだという経緯もある。
かつて安倍首相の父親とは親しい間柄で、死去した際には日本に弔問に訪れた。息子の安倍氏(現安倍首相)を慰めたともいう。日韓関係の改善を期待されての人事であることは間違いない。
柳氏本人も、「両国は今冷え込んだ関係だが、正常な関係を復元することが急務」と話し、「年を取って引退した人に仕事をしろというのは、それだけ韓日関係の深刻性を政府が分かっているということ」と語っている。
朴槿恵大統領の本音
朴槿恵大統領が日本との関係をどのように考えているのかは、正直なところ誰にもわからない。父親(元朴正煕大統領)と母親(陸英修)が公務中に殺害された経緯をもちながら、自らも大統領になったほどの女性だ。よほど強い信念をもっていることは想像に難くない。その心の内を話すことはほぼないのだ。果たして日本との関係を改善したいと思っているのか。それとも中国との関係をより重視しようとしているのか。それは誰にもわからない。
しかし彼女の人事を見れば、日本との関係改善を願っているだろうことが推察できる。昨年8月には、大統領府の秘書室長に金淇春氏を任命した。韓国は大統領制の国だから、秘書室長は大臣以上に重要なポストだ。金淇春氏と上述の柳興洙氏は、ソウル大法大16期の同窓であるとともに、韓日親善協会で柳氏が理事長、金氏が副会長という間柄だった。昨年1月にはともに来日している。つまり朴大統領は、自らの最側近に知日家を据えたのだ。また、金淇春氏と同時に任命された朴ジュン雨・大統領府政務首席秘書官も、外務省きっての日本通と言われた人物だ。
高まる中国依存
朴槿恵大統領が就任当時、国民から最も期待されたのは停滞した経済をいかに再生できるかだった。安倍政権がアベノミクスに対する期待から高い支持率を得たのと同じことだ。しかし韓国経済を立て直すことはなかなか容易ではない。国民全体の個人負債が1000兆ウォン(約94兆円)を超えるなど課題が重くのしかかっている。
特に注目すべきなのは、貿易依存度が高いことだ。輸出依存度は日本の11.4%(対GDP比)に対して韓国は43.4%だ。 内需が強い日本とは構造が違う。その韓国で、輸出先の4分の1を中国が占めている。これでは中国に強い態度を示せるはずがない。中国は戦略的に日本を歴史認識で攻撃して孤立させる立場をとっているから、それをすべて無視することもできない。こうした韓国の国内事情を知れば、たとえ朴大統領が日本との関係を重視していたとしても、それを表に出せない事情が理解できる。
安倍政権における集団的自衛権の閣議決定に対して、韓国国会が日本を非難する決議を採択した。しかし大統領制の韓国における国会の立場は、日本のそれとは異なる。政府は黙認を続けている。こうした情報に振り回されないことも大事だ。
両国の首脳は共に日韓関係の重要性をよく理解しているはずだ。今回の駐日大使の人事がそれを明確に表している。問題は国民の意識だ。互いに相手国の国内事情を理解することは容易ではない。むしろセンセーショナルな報道に振り回されがちだ。しかしそれでは問題解決が遠のくだけだ。中国と北朝鮮の脅威を考えれば、日韓の関係改善が安全保障上きわめて重要であることは論を待たない。関係改善の道を慎重に探るべきだ。
2014年7月25日


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