この記事は2011年11月10日に投稿されました。
中国の覇権主義は海洋にとどまらず、宇宙空間とサイバー空間にも及んでいる。財政再建のため長期的な国防費削減を余儀なくされている米国は、中国の覇権主義に対して、アジア・太平洋地域での旧来の同盟国である日本と韓国に防衛力強化を求めている。
顕在化する中国の脅威
近年の中国軍事研究で強い関心を集めているのが中国の海洋戦略である。海洋覇権拡大を目指す中国は、遠方から来る敵を防衛線内に入れさせず(接近阻止:Anti-Access)、防衛線を突破されてもその内側で敵に自由な行動を許さない(領域拒否:Area-Denial)という「A2AD」コンセプトにより、複数の空母と潜水艦を建造し、「空母キラー」と呼ばれる中距離弾道ミサイル東風21Dの実戦配備を進めている。
海軍力増強もさることながら、中国の海洋での無法ぶりも脅威である。中国は国連海洋法条約で定めているEEZ(排他的経済水域)域内での外国船舶の自由航行を認めず、国際紛争解決のための国際機関への提訴の義務付けも受け入れない。1992年の「領海法」で南沙諸島や西沙諸島、尖閣諸島が自国の領土であると宣言し、1998年の「専管経済区及び大陸棚法」で中国のEEZは沿岸だけでなく大陸棚を含むと宣言するなど、国内法を定めて一方的な主権の拡大を唱えている。
さらに今年の夏以降、中国軍の脅威は宇宙空間とサイバー空間でも顕在化している。
中国は11月3日、宇宙実験室「天空1号」と無人宇宙船「神舟8号」のドッキングに成功し、2020年完成予定の有人宇宙ステーション建設に弾みをつけた。日米欧露など15カ国で建設した国際宇宙ステーションは2020年には運用を終えるため、2020年以降は中国の宇宙ステーションが宇宙で人間が滞在できる唯一の施設となる。中国の宇宙開発は人民解放軍が主導しており、有事の際に軍事転用されることは間違いない。
中国が関与するサイバーテロ攻撃も日本の安全保障を脅かす問題としてメディアを騒がせている。9月18日に日本の防衛産業の中枢を担う三菱重工に対するサイバー攻撃が発覚して以来、防衛関連企業、衆議院と参議院、在外公館や総務省などの省庁に対するサイバー攻撃が次々と報じられた。読売新聞は9月19日から『サイバーウォーズ』という特集を連載し、サイバー攻撃関連ニュースを連日1面で報じた。朝日新聞も11月7日号1面で『サイバー戦に備えよ』と題し、「中国軍が見えない戦争に向けた準備を進めている」と訴えている。
米国が望む日韓の防衛力強化
10月下旬、パネッタ国防長官は米軍のアフガニスタンとイラクからの戦力削減に伴い、アジア・太平洋地域のプレゼンスを強化すると宣言した。11月9日には米国防総省が「ジョイント・エアー・シー・バトル構想(統合海空戦闘構想)」導入を発表した。しかし、その実現は米国議会の動向に委ねられている。今月23日までに超党派の予算委員会で、今後の具体的な予算削減案がまとまらない場合、6000億ドルの国防費の追加削減が強制的に決まる。米軍にアジア・太平洋を守る意思はあっても、それが実現するかどうかは微妙である。いずれにせよ、米国の長期的な国防費削減は避けられない。米国は中国の覇権主義対策として、アジア・太平洋地域での旧来の同盟国である日本と韓国に防衛力強化を求めている。
米国で「中国脅威論」を強く唱えてきたシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授(政治学)は、「アジアにおいては、中国が東西冷戦時代のソ連以上の脅威となる」と述べている。ミアシャイマー教授はその理由について、「旧ソ連は全盛期に国内総生産(GDP)が米国の3分の1で、人口も米国を少し上回るだけだったが、それでも驚異的だった。現在の中国はGDPが米国を追い抜く勢いにあり、人口は4倍を超える。さらに、ソ連の軍事戦略の中心が欧州にあったのに対し、中国は戦略の中心を北東アジアに置いている」と指摘している(朝鮮日報日本語版10月10日)。
ミアシャイマー教授の指摘どおり、アジア諸国、特に日本と韓国は中国の脅威に真剣に向き合い、早急に防衛力強化に努めなければならない。
2011年11月10日


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