この記事は2016年2月23日に投稿されました。
中国国防大学は「中国が内部崩壊」
米国の国防総省に近いランド研究所が1月、衝撃のレポートを発表した。尖閣諸島をめぐって日中が衝突すれば、日本はわずか5日間で敗北するという。シミュレーションは、中国の軍事問題や戦争シミュレーションの権威として知られる上級アナリストによるもので、概要は以下の通りである。
1日目、日本の右翼活動家グループが魚釣島に上陸し、日本の対応が遅れる隙に中国海警が日本人全員を逮捕・拘束する。2日目、日中両国が軍事力を展開し、米国も駆逐艦を派遣。3日目、交戦状態となり、海自艦2隻が撃沈される。続いて米潜水艦が中国駆逐艦2隻を撃沈する。4日目、中国軍は米国へのサイバー攻撃を開始。大停電、証券取引所の妨害などで数百億ドル規模の被害が生じる。5日目、中国軍の攻撃で海自は戦力の20%を失う。日本もサイバー攻撃を受け、送電システムが停止。米国は撤退し、中国が尖閣諸島を完全に確保する。
レポートの結論は「近代化された中国軍を前に、日本の防衛は困難」というもので、たとえ尖閣諸島をめぐって日中の衝突が起きても、米国は無視すべきではないかとの筆者の主張が付け加えられている。
背後に中国のチャイナマネー
これだけ現実にはあり得ない展開が次々と続くシミュレーションも珍しい。詳細は省略するが、たとえば防衛出動が下されない中で自衛隊が出動することはできない。また、米軍が本格展開した時点で中国は完全撤退するはずである。これは昨年の「航行の自由作戦」から見ても明らかだ。やはりこの記事の背後には、多額のチャイナマネーが流れていると考えるのが妥当である。
中国では尖閣諸島を「核心的利益」に指定して以来、引くに引けない状況に陥ってしまった。万が一偶発的な事故などから日中の衝突が生じた場合、習氏は手を引くことができない。国内から「弱腰」と厳しく批判され、政権基盤が揺らぐことになるからである。かといって強硬策に出れば、米軍に完敗するのは明らかだ。習氏はいずれのケースも避けなければならない。
そこで習氏が米オバマ大統領に繰り返し訴えたのが「新型大国関係論」だった。お互いの「核心的利益」には干渉し合わないという主張である。しかしオバマ氏は、この要請を断固として断り、さらに日本で「米国には尖閣諸島の防衛義務がある」と明言した。これには習氏も困ってしまった。
そこで習氏は第二の戦略を考え、情報工作を通して日米同盟が機能しないよう働きかけることにした。それがこの記事の狙いなのである。
中国では慎重論
中国国内では、全く異なるシミュレーション結果が習近平指導部に提出されているという。習氏が中国国防大学トップの劉亜州・同大政治委員(上将)に、「尖閣諸島奪還作戦」を強行すればどうなるか、研究結果を報告するよう命じた結果である。
1年をかけてまとめられたレポートでは、尖閣諸島への海からの上陸は海上保安庁に制止され、空からの接近は空自戦闘機に阻まれるために困難であるとし、中国軍の陸海空合同の大部隊に加え、中国大陸からのミサイル攻撃が必要だとしている。しかしその場合、「(中国と日米合同軍の)総力戦となり、戦闘が長期化することは必至」「民衆の不満が高まり、共産党政権が転覆されかねない」との結論を導き出している。「奪還は困難」との結論で、上述の分析結果とは正反対である。報告書の目的は、中国軍の内部で発言力を増してきた強硬派を牽制することにある。
二つの論文から読み取れるのは、習氏は米国を強く恐れており、衝突を何とかして避けようとしていることである。しかしこれを逆に見れば、もし米国が日本に関わらなくなれば、強硬派による攻撃がいつ起きるかもわからないということである。やはり中国に対する日米同盟の抑止力は極めて大きい。その意味で、日米同盟強化のための安保法制の制定は正しかった。「戦争法案」などとの批判はもってほのかである。
2016年2月23日


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