【思想新聞2001年3月15日号マスコミ・論壇ウオッチング】
実習船えひめ丸の衝突沈没事故は、舞台を米海軍の査問会議に移し、真相究明が続けられているが、戦後半世紀あまり、軍隊に対して悪感情のみが醸成されてきた日本国民にとって、米海軍がそのナンバー・ツーの作戦副部長のファロン海軍大将を謝罪のための特使に派遣した米国側の誠意は通じ難い。
さらに、「有能」な辣腕弁護士の指示で、訴訟を視野に入れたためにワドル艦長から日本側遺族への心のこもった謝罪が遅れれば遅れるほど、今回の事件の日米同盟に及ぼす心理的な負の影響は計り知れないものとなろう。かけがえのない日米同盟の維持・強化をふまえた報道や解説をメディアに望みたい。
ところで、『朝日』の御都合主義・ダブル・スタンダードがここにきて顕著になっている。その最たるものは、扶桑社が発行を予定している「新しい歴史教科書を作る会」編集の中学校歴史教科書をめぐる問題である。
家永三郎・東京教育大学名誉教授の高校教科書「新日本史」の検定をめぐる長年にわたる裁判で、『朝日』は検定制度の違憲性を主張する家永氏を支持する論調を展開してきた。ところが『朝日』は今回、西尾幹二・電気通信大学教授らが中心となって、これまでにない新たな視点からまとめられた中学の歴史教科書の検定不合格に向けて、「政治介入」を促す報道をつづけている。
2月21日の『朝日』朝刊一面には「政府介入せず、合格の可能性」という大見出しが踊っているが、これは、「中国・韓国両国がその内容に懸念を表明している『つくる会』の検定不合格に向けて、日本政府は介入すべきだ」というメッセージに他ならない。
新聞は報道機関と共に言論機関の機能をもつとしても、家永教科書の検定に際しては政府の政治介入を指弾し、一方西尾教科書の不合格に向けては「政治介入」の必要性を声高に叫ぶ『朝日』の姿勢には、自社の主張に合致する思想的傾向をもった人物や団体・書物と、そうでないものとの間で対応を180度変えるという『朝日』の体質がものの見事に表れている。


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