この記事は2013年5月2日に投稿されました。
韓国で米韓両軍が2か月にわたり行ってきた合同軍事演習「フォーイーグル」が、4月30日に終わった。「フォーイーグル」とは、朝鮮半島有事を想定した米韓の総合軍事演習である。
今回の演習の特徴は、強硬姿勢を取る北朝鮮に対し、米国が徹底した対決姿勢を示してきたことにある。北のミサイル発射による威嚇をけん制するために、米軍は最先端のミサイル防衛システムを配備した。さらに3月末にはステルス戦闘機F22も演習に加わった。
米国が示しているのは、「北のミサイル攻撃による恐喝に米国は絶対に屈しない。それどころか、もし北が攻撃してくれば、ステルス戦闘機で北の中枢を攻撃する」ということなのだ。
北が強硬路線を取り続ける理由の一つは、米国との交渉を実現し、「北を攻撃しない」という確約(和平条約)をとりつけることにある。裏返して言えば、それだけ北が米国を恐れているのである。
金正恩が恐れる米軍の秘密訓練
実は米国は10年前、この演習で北に対する「秘密訓練」を行ったという。
レーダーに捕捉されないステルス戦闘機であるF22を密かに平壌上空に送り込み、金正日が住む宮殿をめがけて急降下や急上昇を繰り返させ、爆音と振動を響き渡らせて威嚇したというのだ。米軍事専門誌である「エアフォース・タイムズ」は、このときのパイロットの証言として、「私にとって最も記憶に残る任務は北朝鮮の領空をかき回したことだ」という内容を掲載している。もしこれが事実であれば、北はかなりの国家予算を軍事費につぎ込みながらも、平壌上空に飛来する一機の戦闘機すら撃ち落とせなかったということになる。この「秘密訓練」をスクープした軍事専門家の恵谷治氏は、「(このとき)金総書記は本当の恐怖というものを体験したはずだ」と語っている。
今回の演習でF22は、3月31日に参加し、4月3日には帰還した。恵谷氏は、F22が韓国にいた4日間に、「平壌に侵入しただろう」と言っている。平壌では4月1日、最高人民会議が開かれていた。米国が北に対して心理戦を仕掛けるには絶好の機会だったのだ。
さらにF22の到着3日前には、同じくステルス戦闘機であるB2が演習に参加した。B2は核爆弾を16個搭載可能であり、「核には核を」という米国の強い姿勢を見せつけたのだ。
当然北は、これを非常に恐れた。その恐怖心が、強硬発言となって帰ってくる。金正恩は、首都ワシントンを含む「戦略軍米国本土攻撃計画」を発表した。また、ミサイル部隊に「待機命令」が発せられた。そして、朝鮮戦争の「休戦状態」を自ら破棄する「南北は戦時状態」との特別声明が出されることになったのだった。
日米韓の緊密な連携が必要だ
合同軍事演習がいよいよ終わり、金正恩はさぞかし安心しているに違いない。韓国メディアは一斉に、「朝鮮半島の緊張が和らぐとの期待感が強まる」と伝えている。
しかしここで、問題が一つ残されている。韓国が北への対話に前のめりになりつつあるのだ。
韓国では朴新政権になり、長引く経済の低迷の打開を期待されている。しかし北が強硬路線を続けたことにより、貿易を中心とする韓国経済は冷や水を浴びせられた。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は韓国に5か所の生産拠点をもっているが、ダニエル・アカーソン会長は4月4日、「朝鮮半島での緊張が高まれば、生産拠点の移転を検討することがあり得る」と発言した。さらに開城工業団地の閉鎖である。韓国経済への打撃は深刻になり、ついに4月11日、韓国は北への対話を呼びかけた。事実上韓国政府は、北に「根負け」したのだった。
米国と日本は、北との対話には当然「核の放棄」を大前提にしている。しかしこの大前提も、韓国が対話に前のめりになってしまえば効果が薄らいでしまう。弱みを握られた韓国は、「核の放棄」に言及せずに事態を打開しようとするだろう。北は「韓国に対しては脅迫が通じる」と思い、ますます調子に乗ることになる。そうなれば、日本がどれだけ制裁を行い、毅然とした態度を示しても、意味をなさなくなってしまうのだ。
韓国が北との対話を成功させ、一時的に経済問題を解決しても、北が核保有国になってしまえば東アジアの安全保障は重大な危機にさらされることになる。だから日本は、米韓両国と緊密な連携をとらなければならない。特に韓国に対しては、両国の安全保障という共通目的のために、高い壁を乗り越えて、積極的な関係の構築を目指すべきである。
2013年5月2日


コメント