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軍拡路線ひた走る中国 5年でアジア最大の軍事大国に

思想新聞2001年4月1日号【ニューススコープ】

国防費、13年連続の2ケタ増

 中国は国内安定と競争力強化を二大目標に経済成長に余念がない。さる3月15日に閉幕した全国人民代表大会(全人代=国会)は政府活動報告と第十次五カ年計画(2001~5年)を採択したが、その中で注目されるのは突出した軍事費増額である。2001年度予算では国防費は前年比17%増の1410億4百万元(約2兆円)となった。これで国防費は天安門事件が起こった1998年以来、13年連続で前年比2ケタ増という驚異的な伸びを見せた。軍事費増で「ハイテク化による戦闘力の増強」(江沢民主席)に取り組むとしており、中国が軍拡路線をひた走り東アジアでの軍事プレゼンスを獲得しようとの野望を抱いていることが歴然としてきた。

ハイテク軍拡が「経済発展に不可欠」

 全人代で政府活動報告を行った朱鎔基首相は軍事力増強が「国の安全と現代化建設における重要な保証」とし、積極的に国防建設を推進し、新型兵器・装備を充実してハイテク条件下の戦闘力向上をはかることが国民経済の発展に伴って必要不可欠と強調した。
 また項懐誠・財務相は国防費を前年比17%増額したことについて「世界の軍事分野での深刻な変化に適応し、現代技術、特にハイテク条件下での防衛戦に備える必要がある」と述べ、中国首脳らが相次いでハイテク化に言及、中国軍のハイテク化の軍拡に余念がないことを証明した。
 こうした異常な軍事費増について日本経済新聞は「中国の国防予算の大半は人件費に充てられ、新兵器の開発、外国からの兵器購入費などは別予算に計上されているというのが、西側軍事専門家共通の見方である。英国際戦略研究所は、中国の総軍事費は公表額の三倍と見積もっている」と指摘、「これを額面通りに受け止め、物価も考慮すると、中国の軍事費はほぼ日本と同じ水準に達していることも考えられる。中国がこの5年間、計画通りに七%成長を実現し、国防予算の二ケタ増を続けるなら、アジア最大の軍事国家となるだろう」と警告している(3月17日付・社説)。
 中国は「ハイテク条件下の軍事力増強」を目指してロシアからの新鋭兵器購入やラインセンス生産を進めているとされている。すでにスホイ27、30戦闘機、ソブレメンヌイ級駆逐艦、キロ級潜水艦などを購入したほか、新たに同駆逐艦二隻を購入する計画とされている。これらは米艦隊迎撃の役割を担っており、加えて空中警戒管制機「A50改良型」の購入交渉も進めているという。
 こうした新鋭兵器購入は、90年代初めに鄧小平主導のもとに決められた「海軍発展戦略」に基づくものだ。同戦略は海底油田の宝庫とされる南沙諸島や東シナ海の制海権の確保と台湾の武力統一を念頭に、現在の海軍の航空母艦二隻を自力編成し外洋警備型(米国の第7艦隊を想定)に脱皮させようというもので、2003年を空母保有の目標年としている。
 すでに中国は最新鋭ミサイル艦、ソブレメンヌイ級誘導ミサイル艦と艦対艦ミサイルなどを購入し海軍力増強をはかってきたが、この路線を軍事費増でひた走ると見られる。3月15日付のワシントン・タイムスは、中国軍がこのほど、台湾海峡に近い福建省仙游県に新たなミサイル基地を完成させ、短距離弾道ミサイル「M11(東風11号)」(射程三百キロ)約百基と移動式発射装置を配備したと報じた。
 これらのことから中国が台湾の武力統一に向けて軍事力増強に取り組んでいることは明らかなことだろう。
 このため米国は中国の軍事力増強に警戒感を強めている。さる2月に台湾を視察した米議会スタッフ(ドラン上級専門官=アジア・太平洋問題担当)は3月に入って台湾政策の報告書をヘルムズ上院外交委員長(共和党)に提出、「中国の軍事力増強に伴い、台湾は2005年までに軍事バランスの上で致命的な危機を迎える可能性がある。米国は台湾とのホットライン設置や軍事情報の共有、米軍演習への台湾参加などを通じて支援を増強する必要がある」として、台湾が求める四隻のイージス駆逐艦や潜水艦などの供与を促している(毎日新聞3月13日夕刊)。

米国に代わる覇権国家をめざす

 このように米国に警戒される中国の軍拡路線は、東アジアで米国に代わって軍事プレゼンスを拡大し、21世紀の覇権国家になろうとしているからにほかならない。
 だが、当の中国はこれを欧米の「覇権主義」への対抗と捉えており、軍事力増強を正当化しようと躍起である。中国は毛沢東時代から西側諸国による包囲網によって危機にさらされているとの独特の被害妄想的な脅威論を抱き続けてきたが、ソ連・東欧の崩壊によってこうした脅威論に拍車をかけている。
 張万年・中央軍事委副主席は全人代の軍代表団の討論(3月6日)で「覇権主義と強権政治は新たな進展を見せている。局地戦争と武力衝突はいつまでもやまず、世の中はまったく平穏でない」と危機を煽っている。
 中国共産党が軍事力増強を行うもう一つの理由は、共産党一党独裁政権を強権で維持するためである。それは民主主義のない大国の中で中国共産党の権力掌握基盤が依然として人民軍にあるからだ。人民軍は元来「中国共産党の軍」である。天安門事件では軍が弾圧の先頭を切ったが、民主化や少数民族独立運動が起こった際、共産党が頼るのは軍にほかならない。
 そうした軍を掌握し、その軍を使い共産党一党独裁を堅持するため、軍歴や軍人脈に乏しい江沢民主席が軍拡路線をひた走っているのである。張副主席は「軍の『非党化』『国家化』は誤り」と述べ、人民軍が共産党の軍隊であることを将兵に徹底しようと努めている。
 3月9日に開かれた全人代の軍代表団の会議で江沢民主席(中央軍事委主席)は「軍を党の絶対的な指導の下に置き、人民の軍隊としての性質は永遠に変えない」と演説、また軍事費増に触れ「絶えず武器装備の科学技術レベルを向上させなければならない」とハイテク化の充実を強調した。
 以上の背景から将来も中国の軍拡が継続するのは必至である。事実、張副主席は「今後5~10年が軍の現代化建設加速の重要時期」と言明する。
 このような中国の正体を知れば、ブッシュ米政権が中国を警戒する理由がわかるだろう。ブッシュ政権は中国をクリントン時代の「戦略的パートナー」から「戦略的競争相手」(パウエル国務長官)へと厳しい対中政策に転じた。すでにクリントン前大統領が「台湾の独立不支持」などを中国に保証した「三つのノー(三不)」政策を放棄することを決めている。
 日本はこうしたブッシュ政権と歩調を合わせ、日米同盟を一層強化して東アジアの平和を守る諸体制作りに当たることが不可欠と肝に銘ずるべきである。

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