この記事は2011年2月24日に投稿されました。
都市を襲う直下型地震の恐ろしさを見せつけた。2月22日に発生したニュージーランド地震ではクライストチャーチの語学学校が入っているビルが崩壊し、日本人留学生ら多数の人々が閉じ込められた。専門家によると、地震の規模はマグニチュード6・3で阪神大震災のM7・2に比べて規模は小さいが、震源が浅く、クライストチャーチを直下から襲ったため、倒壊する建物が相次いだという。存在が知られていない「未知の断層」が動いたようだ。ここから日本の防災対策に教訓を残している。「災害は忘れた頃にやってくる」と寺田寅彦は言った。いつか日本でも必ず大地震が起こる。今回の地震で建物の耐震化の重要性を改めて示したことを肝に銘じるべきだ。全国の小、中、高校ではクライストチャーチの語学学校と同様に、耐震化がなされていない校舎が数千にのぼっている。耐震化をすぐに進めなければ、語学学校と同じ悲劇が全国で起こるだろう。菅内閣は数兆円もの無駄遣い、すなわち「子供手当」を即刻止め、それを全国の学校校舎の耐震化に回すべきである。
地震列島・日本には2000ヵ所以上の活断層
日本は地震列島である。これは地球が動いている限り、致し方ない。地球を覆う巨大なプレート(岩盤)の下に高温・高圧の岩石によるマントル層があり、それがゆっくりと地球規模で対流し、それに乗るプレートも動いているからだ。日本列島は北米プレートとユーラシアプレート、太平洋プレート、フィリピン沖プレートの4つのプレートにまたがっている。これらプレートは互いに押し合い、ひずみを貯めている。それが定期的に跳ね上がって、巨大地震を引き起こす。大正12(1923)年の関東大震災がその典型だった。これは海溝型地震と呼ばれる。ほぼ数10~数100年周期で発生している。この影響で内陸部にもひずみが生じ、それがしばしば地殻変動(地震)を起こす。その時、断層ができる。この断層のうち、約200万年前から現在までの期間に繰り返し動き、将来にも動く可能性のあるものを「活断層」と呼ぶ。その断層にまたひずみが貯まり、数千~数万年単位で地震を起こす。早い場合だと1000年に1度ぐらいの割り合いで断層がずれる。これが阪神大震災や新潟県中越地震をもたらした直下型地震である。日本列島には2000カ所以上の活断層があるとされている。だから、いつ、どこで地震が発生しても不思議ではない。断層が地中に隠れている場合も多く、阪神や新潟のように突然の大地震となる。今回のニュージーランド地震もそうだ。日本人は地震の上で暮らしているも同然なのである。これは変えることのできない宿命である。だから古来、日本人は「地震、雷、火事、親父」と、恐ろしいものの第1番目に地震があげた。我々は地震に真っ正面から向き合っていかねばならないのである。
東京直下なら全壊建物85万棟、死者1万2000人
もしニュージーランド地震のような直下型大地震が東京都心を襲ったらどうなるのか。密集する住宅地。迷路のような地下街。林立する高層ビル。新幹線だけでなくJRや私鉄、地下鉄が網の目のように走っている。至るところにガソリンスタンドもある。道路を埋める自動車の群れ。そこに電柱が倒れ自動車が身動きできなくなれば、救急車や消防車は走れない。大地震が起こった時、いったい大都心で何が起こるのかー。政府・中央防災会議の専門調査会は2004年12月、首都直下で地震が発生した場合の想定を発表している。首都圏での18パターンの地震を想定し、このうち都心付近を震源とする「東京湾北部地震」「都心東部直下地震」「都心西部直下地震」の3地震で甚大な被害が出ると予測している。最大の死者を出すのは、東京・西新宿の都庁直下でM6・9の地震が発生した場合で、冬の午後6時、関東大震災時と同じ風速15メートルの強風を想定すると、都内の広範囲が震度6強となり、JR中央線沿線の中野区や杉並区、世田谷区などの密集した木造住宅地で発生した火災が延焼を続けて焼失、死者は1万2000人に達する。このうち火災で8000人、建物倒壊で3300人が死亡すると見ている。一方、東京湾北部地震の場合、全壊建物が約85万棟にのぼる。この地震は関東地方が乗る北米プレートと、その下に沈み込むフィリピン海プレートの境界で起き、M7・3の巨大地震になると見られ、近い将来発生が懸念されているものだ。同条件で想定すると、揺れによる全壊15万棟、液状化による全壊3万3000棟、火災による焼失65万棟で計約85万棟が全壊や焼失、死者は1万1000人。焼失地域はここでも中野区や杉並区など山の手に集中する。
これらは阪神大震災の被害をはるかに上回るものだ。阪神大震災では死者は6432人、全壊建物は約11万棟、焼失建物は約7500棟、被害総額は約10兆円だったが、首都直下の場合、死者はほぼ2倍、焼失建物は86倍にものぼる。経済的損出は3倍弱の25兆円規模になる。想像を絶する被害といってよい。
東海など3地震の同時発生で巨大津波も
大地震が想定されるのは首都だけではない。宮城沖地震について政府の地震調査研究本部は「30年以内にマグニチュード7・5前後の地震が発生する確率は99%」と発表している。30年以内に発生が予想されている地震は、海溝型で12カ所、直下型で28カ所(発生確率1%以上)にものぼっている。99%の宮城沖地震、84%の東海地震は「明日起きても不思議ではない」と専門家が言うほど切迫しているのである。駿河湾での東海地震の場合、規模はM8で、静岡県や愛知県を中心に想定死者は7900人から9200人で、このうち津波による死者が400人から1400人。全壊建物は23万から26万棟、このうち津波による全壊が7000棟。その被害は三重県にまで及ぶ。東海地震では海溝型特有の津波被害が大きい。
しかも、東海地震は東南海地震と南海地震を同時発生させる恐れがある。駿河湾から四国県沖に至る南海トラフが連なっているからだ。1ヵ所でひずみがずれれば、それをきっかけに連続してずれ、大地震になる可能性がある。過去にこの地域で100~150年間隔で大地震が発生しており、1605年と1701年には東海と南海が同時発生したとされる。この3カ所で大地震が同時発生すれば、大津波が四国沿岸などを襲い、津波や倒壊、火災などで最悪の場合、死者2万5000人、全壊建物90万棟、経済的損出81兆円にのぼると想定されている。
直下型地震の場合は、どこでいつ起こるのか、予想はきわめて難しい。活断層は2000カ所以上も存在するが、調査は進んでいない。地震対策はこれまで関東大震災を教訓に海溝型が中心だったからだ。阪神大震災以降、直下型が顧みられるようになり、政府の地震調査委員会は1997年に2000カ所のうち98カ所を危険性の高い活断層と選定し調査に乗りだしている。しかし、これ以外にも危険なものが多数存在する。実際、2004年の中越地震は想定外だった。
減災の決め手の耐震化が遅々として進まず
耐震化の重要性については阪神大地震で実証済みだ。犠牲者の99%が家屋内で、このうち77%が家屋倒壊による圧死、9%が焼死、8%が家具での圧死だったからだ。前述の地震想定も建物の倒壊で多くの犠牲者が出ると見ている。住宅の耐震化がハード面での減災のカギとなることはニュージーランド地震でも明白なところだろう。政府は住宅の耐震化率を2015年に90%にする目標を掲げているが、現在75%にとどまり、このままでは全国の約1千万戸が倒壊する恐れがある。とりわけ災害拠点病院や救急センターの38%が耐震基準を満たしておらず、また避難所になる公立小中学校施設の約7800棟が震度6強で倒壊すると予想されている。にもかかわらず民主党政権は2010年度予算で学校の耐震化予算の6割をカットするなど防災予算を大幅に削り、11年度予算も十分とは言いがたい状態にある。政府も自治体も予算不足を理由に耐震化対策を怠っているのだ。だが、予算はある。金持ちにもばら撒く「子供手当」を即刻止めて、校舎の耐震化に振り向ければ済むはずである。数兆円規模の予算措置なら学校や病院の耐震化を一挙に進めることができるはずだ。ニュージーランド地震の語学学校のような悲劇を2度と繰り返さないために政府の責任は大きい。
2011年2月24日


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