思想新聞2003年3月1日【マスコミ論壇ウオッチング】
昨年秋の小泉・金会談で金総書記が、拉致事件を公式に認めて以来、わが国における北朝鮮報道は、それまでと手のひらを返したような反北朝鮮一色に染められている。
特にテレビ番組にその傾向が顕著で、なかでも日本テレビの『ザ・ワイド』とテレビ朝日の朝の『スーパーモーニング』がその双璧といってもよいほどに、北朝鮮の現政権に対しては徹底的に批判的な姿勢を貫いている。
『スーパーモーニング』などは、「金正日研究」と銘打って連日、金氏の理解し難い行動や人となりについて紹介し、さらに北朝鮮の日本人の常識を超えた文物について報じている。
このようなネガティブな情報をここ五カ月あまり流し続ければ、視聴者が北朝鮮に否定的な思い持つようになるのは当然であろう。その中の何人かの不心得者が腹いせに在日朝鮮人の女子学生の制服を切り裂くといった、心無い事件も起きている。そのような事件が起こる度ごとに、これらの番組のキャスターたちは、口々に「北朝鮮政府と在日の人たちは違う」と視聴者に自重を求めるのだが、マッチポンプの印象は拭えない。
それ以上に不快なのは、金総書記が認めるまでは北批判に口をつぐみ、拉致事件の解決を願う人々の叫びを無視し、北朝鮮への警戒を説く人々を「反共主義者」と罵倒してきた面々が、前非を悔いることもなく拉致問題の解決や日朝交渉の進め方について、厚かましくも自説を開陳し続けていることである。
自分たちの抱いていた北朝鮮像が、昨秋の首脳会談によって変えられたのであれば、沈黙を守り、これまで変わることなく北の非道さを指摘し、日本の対北朝鮮政策のあるべき姿を説いてきた専門家の意見に謙虚に耳を傾けるといった姿勢は、どの番組の“コメンテーター”諸氏にも見られない。
たとえ、コメントを求められたとしても「この問題については、これまで見当違いの発言をつづけてきたので、専門家のご意見を拝聴するだけです」といって、視聴者を情緒的でない冷静で客観的な問題解決の方向に促すのが、彼らにできるせめてもの罪滅ぼしだと思うのだが。


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