思想新聞2003年10月1日号【マスコミ論壇ウォッチング】
8月発行の岩波書店の『世界』に、「国際共同プロジェクトとしての『韓国からの通信』」と題する記事が掲載された。これは、同誌が昭和48年5月から同63年3月までの間掲載し、後に同社が「岩波新書」として刊行した「T・K生」による「韓国からの通信」という捏造レポート作成の裏話である。
これまで、同通信は韓国在住という「T・K生」の名を借り、「世界」編集長であった故安江良介氏が書き綴ったのでは、と言われてきた。
しかし、同誌の記事により、「韓国からの通信」が世に出るにあたり、安江氏は極めて重要な役割を担っていたものの、実際に執筆したのは、70年代初めからわが国で亡命同然の生活を送っていた池明観氏(韓国放送公社前理事長)だったということが明らかになった。
池氏は日本に身を潜めながら、様々なルートを通じ韓国から寄せられた虚実ない混ぜの情報をもとに、最終執筆者「T・K生」として「韓国からの通信」の体裁にまとめ、それが安江編集長の意向で同誌に掲載されていたという。
その際、掲載誌の安江編集長の基本姿勢というのは、同通信は「韓国の異常な状態における地下通信であるから、すべて秘密でやらなければならないし、ときには情報を部分的に変えたり、国内で噂されている未確認の話などを集めて出すこともある。しかし、それが異常な事態における言論の不可避な役割である」というものだったという。
当然、掲載された内容は全てが事実ではなく、安江氏も八八年に韓国の雑誌『月刊中央』の取材に、「だいたい70~80%は事実だと思う。……60%ぐらいは事実だ」と応えている。(『諸君!』2003年10月号)
論壇左翼を代表する看板誌の編集長ともなれば、ジャーナリズムの「原則」を踏み外し、30~40%の偽りや誤りが含まれていても、そのまま掲載・発行するのが「言論の不可避的な役割である」と言い放つ“特権”があるようだが、これこそジャーナリズムの範疇を超えた煽動であり、「異常事態」とは言えまいか。


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