思想新聞 1999年7月5日号 主張
北朝鮮が黄海で韓国領域に侵入して軍事挑発したり、金剛山観光の韓国女性を拘束、さらにミサイル再発射の動きを見せるなど、金正日政権の強硬姿勢が目立ってきた。そうした中で金大中韓国大統領は訪米し、クリントン大統領と首脳会談を行い、「太陽政策」への理解と支援をあらためて求めた。米国はもとより日本も金大中大統領を支援し、一体で北朝鮮に対応する必要がある。
北朝鮮の三国分断工作を封じること
まず我々が理解しておかねばならないことは、北朝鮮の戦略についてである。 その第一は、米軍を韓半島のみならず日本からも追い出し北東アジアにおける軍事的優位の構図を作り出すこと、第二には、米韓日の三国一体化関係を切り崩し韓国の孤立化をはかること、第三には、韓国内の政情不安を醸成しテロ・ゲリラ戦の基盤を造成すること、第四には日本と独自に交渉し「資金源」とするばかりか韓国工作の土台とすることなどである。
これらの北朝鮮の対外工作は「南北赤化統一」を実現しようとする金日成時代からの一貫した戦略に基づいている。
とりわけ見逃してならないのは、金正日時代に入って著しい経済破綻を招くようになった結果、軍事をすべてに優先し「交渉カード」にも使いつつあることだ。金正日総書記を軍事委員長との「元首」にいただき「強盛大国」をめざす北朝鮮にとっては、軍事力だけが「一流」で、それ以外は取り立てて誇るものがないのが現実であり、それだけに軍事があらゆる「カード」として浮上してくる。
それゆえに北朝鮮の今後の「軍事挑発」に対して、日韓米は連帯して厳戒体制を敷いていく必要性があるといえよう。
言うまでもなく、北東アジアにおいて日韓両国は米軍を主軸にした安保共同体を形成している。有事に対して三国がどのような態勢で臨むか、その対応を誤れば莫大な被害を招くことは必至である。
そのためには対北朝鮮政策で三国は歩調をそろえることが重要だ。ペリー米政策調整官(元国防長官)が5月に訪朝し、「核・ミサイル問題」などで北朝鮮との対話を前進させ、また金大中大統領は「太陽政策」で北朝鮮の対外開放政策を促そうとしている。
このいずれの政策も一見、宥和政策に見えるが「堅固な安保体制の構築が大前提」(金大中大統領)となっていることは論を待たない。もともと「太陽政策」とは 1.いかなる武力挑発も許さない 2.韓国は北朝鮮を傷つけたり吸収する考えはない 3.南北間の和解と協力は可能な分野から積極的に推進するという三原則から成っており、「堅固な安保体制」をすべての出発点としている。
日本は周辺事態法の実効性を高めよ
このことを我々は十分理解すべきである。金大中大統領とクリントン大統領が表明しているように、ミサイル再発射はたとえ事前通告があったとしても断じて許してはならない。日本としては米韓両国との情報交換を密にし、さらに新ガイドライン関連法に基づく周辺事態への対応に実効性をもたせるため、その具体策づくりを急がねばならないであろう。
そして、北朝鮮に付け入る隙を与える安易な日朝交渉を行ってはならない。その意味で村山訪朝団が延期されたことは当然のことである。日本には対北朝鮮政策の基本原則があいまいで、かつ取り立てて「交渉カード」をもっていない。そうした中での日朝交渉は北朝鮮を利するばかりか、日韓米の分断工作に利用されかねない。あくまでも日韓米連携が大前提である。


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