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韓半島の平和プロセス

思想新聞 2000年3月15日号

ソウル世界平和会議分科会 新千年紀の韓半島統一

韓国・統一研究院院長
  郭 台煥

 北朝鮮経済は90年代になって深刻な状況に陥り、95年9月には同国史上初めて世界食糧計画(WFP)に食糧支援を要請せざるを得なくなった。同年以来、WFPをはじめ、韓国や米国など多くの国の政府、赤十字、非政府組織(NGO)が食糧支援を続行してきた。しかし、94~98年の間に飢餓と関連する疾病で約250万人が死亡したと推定されているように、北朝鮮の食糧状況は依然として危機的なレベルにある。毎年200万トンの穀類が不足しているのに、海外からの援助はせいぜい100万トンにすぎないからだ。しかも、国家経済は90年以来、9年連続でマイナス成長を記録している。

 北の軟着陸が韓国の国益に

 94年7月に金日成主席の死去に伴い権力を継承した金正日氏(97年10月、朝鮮労働党総書記に就任)は、こうした経済状況の下で、人民軍の支持に極端に依存することで権力維持を図ってきた。その結果、影響力を増大した軍の強硬路線が北朝鮮の国家政策を支配し、韓半島の平和と統一への様々な努力を阻害してきたといってよい。
 北朝鮮は外交的にも孤立している。かつての同盟国であったソ連(現ロシア)と中国は、それぞれ90年、92年に韓国と国交を樹立。一方、北朝鮮の米国、日本との国交交渉は暗礁に乗り上げたままだ。北朝鮮は国際的な足場が不安定なのにもかかわらず、独自の生き残りの論理に頑に固執している。
 こうした状況では、韓国の北朝鮮に対する強硬路線は、北朝鮮国内の強硬論者の立場を強めることになるだけだ。端的にいえば、韓半島に戦争が勃発する可能性が非常に増大する。第二の韓国動乱は韓半島の地勢学的な位置からも世界大戦に拡大するのは必至。それ故、北朝鮮の経済状況を改善し、同国が国際社会に十全な資格を持ったメンバーとして参加できるように支援することは、韓国の国益にもなるのだ。
 北朝鮮の「軟着陸」、いいかえれば同国の経済開放を進め、漸次的に市場経済や自由の空気を吹き込もうとすることは、それがどんなに制限されたものであろうと、この「スターリン主義国家」の内部に逆行できない変化をもたらすだろう。孤立し不安定な北朝鮮はますます「要塞」に閉じこもるが、適正な自信をつけた北朝鮮の方が一国家二制度下での体制の生き残りのために韓国との対話を求めるようになるのではないか。

 南北に政治的意志あれば可能

 こうした政経分離に基づく金大中・韓国大統領の「太陽政策」は、1.北朝鮮による武力挑発には断固として対処する、2.北朝鮮の政権奪取や併合は行わない、3.南北間の和解と協力を拡大する、という明確な原則を設定した上で、韓半島の急速な統一よりも、まず両国の平和的な共存関係の確立を重視したものである。そして、同政策は韓半島の緊張緩和に一定の貢献をしているといえる。
 例えば、金大統領が就任した98年2月から99年11月の間に(金剛山観光客を除き)8,335人の韓国人が北朝鮮を訪問。金剛山観光事業は南北の民間交流の一里塚で、同事業が開始された最初の月(99年11月)に約14万6千人が参加した。また、南北貿易額も89年の千8百万ドルから99年には3億ドルに拡大。スポーツ、文化交流も進み、両国の相互理解に役立っている。
 米朝関係では、99年9月の北朝鮮による「ミサイル再発射の凍結」表明、及び米国の北朝鮮に対する包括的アプローチである「ペリー報告」は、あくまで北朝鮮が協力的であればだが、韓半島における冷戦体制の終結に寄与するだろう。また、韓国、北朝鮮、米国、中国による四者協議は実質的な進展を見ないままだが、何とか現在の休戦協定に変わる「韓半島の包括的平和構想に関する共同声明」のような、実質的な四者の平和条約の調印にまでこぎ着けることも不可能ではない。
 従って、南北関係の将来は私見では、控えめながら楽観的だといっておこう。韓半島に関わる主要四大国と韓国、北朝鮮のいずれの国も第二の韓国動乱を望んでいない以上、特に南北に本当にその政治的意志があれば、平和の確立は可能なはずである。
 現段階では、南北首脳会談の実現が特に待望される。首脳会談は暖かい雰囲気を醸成し、相互間の敵意を軽減するだろう。双方が譲歩に向かう契機となるのだ。


統一への長い道のり

米国際戦略研究所首席顧問
  ウィリアム・J・テイラー

 私は、国際政治も他の政治分野同様に権力闘争だとみなす「現実主義学派」に属している。しかし、現実主義者は国際政治とは「実現可能なこと」を現実化する技術であると理解してもいる。

 厳然と存する主要国の思惑

 確かに、韓半島の統一は誰もが口にする偉大な理想ではあるが、北東アジア情勢に関わる主要国(韓国、北朝鮮、米国、中国、ロシア、日本)のどの国も各々の安全保障上や政治・経済的な思惑から早期にそれが実現することを望んではいないのが厳然たる現実だ。

 早期暴発防ぐ危機回避戦略

 米国の「ペリー(北朝鮮政策調整官)報告」にある、北朝鮮に対する短期的な「建設的関与」戦略は、金大中・韓国大統領の「包容政策(太陽政策)」を基礎にするものであるが、それはこうした北東アジアの現実に加えて、北朝鮮の軍事力に対する率直な評価、及び政治的な緊張下で韓半島に偶発的に戦争が起きる可能性が高いとの認識に立った上で策定されたものである。
 北朝鮮は通常兵器による戦争では米韓合同軍の前に早期に敗退するかもしれないが、そうなれば同国は大量破壊兵器の使用に訴えるだろう。約5千トンといわれる化学兵器、最低10種類の生物兵器、それに少数だが核兵器が長距離砲、多連装ロケット砲、短・中距離ミサイルなどの手段で韓国に飛来することになる。ノドン、テポドンの長距離ミサイルで日本も攻撃されるだろう。そして、これも厳然たる現実だが、北朝鮮のミサイルに対抗する戦域ミサイル防衛(TMD)構想などは今後6~7年内に完成する見込みがない上に、技術的にも不確実なものだということだ。
 従って、米国、韓国、日本による「関与」政策の狙いは、まずこれらの国が強力な通常戦力を維持する一方で、北朝鮮の早い時期の暴発を防ぐために最小限の投資で「時間を稼ぐ」ことにある。過去1年半における人道的援助や経済支援は米国とアジアの同盟諸国にとっては北朝鮮の組織的な崩壊を遅らせ、危険を回避する効果があったといえる。
 とはいえ、北朝鮮のような「ならず者国家」との外交交渉は、日韓米各国の政治家の多くには人気がない。例えば、先頃の米国と北朝鮮による「テポドン・ミサイル再発射の凍結」合意は一部政治家から米国が「譲歩」しすぎているとして激しい非難を浴びた。
 しかし、これら批判者も「関与」政策に対する明確な代替策をあえて打ち出し、北朝鮮の危険な政策を抑止したり、懲罰したりしようとはしない。強硬路線を用いて、同国に強い圧力をかければ、戦争の偶発につながりかねないと感じているからだ。
 こうした手詰まりを打開するにはどうしたらいいのか。「関与」政策自体も日米韓三国と北朝鮮の間に信頼を築くためのメカニズムとして次の大きな一歩を踏み出す必要がある。北朝鮮の現体制の存続が保証され、その繁栄が地域にとっての最善の利益になることをわからせる措置なくしては、同国の指導部は従来通りの危険な外交を継続するだろう。

 信頼を築くメカニズム

 具体的には、第一に人道的援助を続行すること(ただし、どんなに困難でも食糧、医薬品などがどこに配給されるのかの検証を要求すべし)。第二には、1994年10月に調印された(北朝鮮の核開発凍結と関係改善への道筋を定めた)「枠組み合意」実施の意思を確認すること(同合意は米朝関係におけるすべての意思と目的にとって今日でも最重要の取り決めである)。つまり、軽水炉二基の建設促進、米国による経済制裁の解除である。第三は、米朝の外交関係の早期正常化。平壌(ピョンヤン)とワシントンに双方の大使館が設置されれば、米国が北朝鮮の信頼を得る踏み台になるのではないだろうか。これらは北朝鮮への「譲歩」ではなく、むしろ積極的な戦略といえる。

 建設的関与は唯一の選択

 もちろん、韓国・北朝鮮間の平和条約の締結、韓半島における駐留米軍の問題、それに北朝鮮の核兵器・ミサイル開発など大きな懸案が残ったままだが、私はそれらの交渉は米朝関係の正常化を交渉条件とするよりも、正常化を達成した後に行ったほうが解決に向かう可能性が高いと思うのだ。
 結論をいえば、北朝鮮に対しては偶発や誤算による戦争勃発の危険に直面し、関係国すべてが敗者になるような政策はとれないということだ。「建設的関与」は単なる最善の選択ではなく、金大統領の言葉を借りれば「唯一の選択」なのだ。

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