この記事は2011年1月18日に投稿されました。
中国が北朝鮮の植民地化に一段と力を入れてきたようだ。韓国・朝鮮日報によると(1月15日付)、中国軍が北朝鮮の経済特区で日本海に面する羅先(ラソン)市に進駐したという。それによると、施設警備や中国人保護が目的と見られるとし、北朝鮮で突発事態が起きた際に中国軍が介入する可能性が指摘される中、中国軍の羅先駐屯は異例のことだとしている。また中朝国境で最近、中国軍の動きが活発で、昨年12月15日ごろ、夜半に中国製の装甲車、戦車約50台が中国の三合(吉林省)から豆満江(中国名・図們江)を超え、北朝鮮の会寧(咸鏡北道)に入ったという。三合地区の住民は当時、装甲車が走る騒音で目覚めたという。会寧と羅先特別市は直線距離で50キロの距離にある。また、同じ時期に中国側の丹東(遼寧省)から軍用四輪駆動車が北朝鮮の新義州(平安北道)に入るのを目撃したとの情報もあるという。「中国製装甲車は騒乱鎮圧用に、四駆車は脱北者取り締まり用に使われる可能性がある」(消息筋)としている。
金正恩後継を「体制保障」し植民地にする
こうした動きをどう見るべきか。金正恩後継体制で注目すべきは中国が「体制保証」とも言える異様な歓迎姿勢を見せていることである。これはポスト金正日時代に北朝鮮を中国圏に完全に取り組んでしまおうとする戦略的判断を下したと見るべきで、中国軍進駐は当然、そうした思惑からだろう。
金正日総書記は昨年5月と8月に2度にわたって訪中した。中国はそれを認め、とりわけ8月の訪中では胡錦濤主席が吉林省長春市まで出向いた。2度の訪中は北朝鮮が中国東北部(旧満州)と一体となって経済再建を図る、つまり中国経済圏に加わるという北朝鮮の意思表示だった。金正日総書記は5月の訪中では平壌-丹東-大連-天津-北京とめぐって「開放」モデル地域を視察し、8月の訪中では平壌-集安-吉林-長春-ハルピン-牡丹江-図們をめぐり、吉林省では農業技術の展示施設や化学繊維製造工場、黒龍江省では食品会社や発電設備メーカーなどを視察した。北朝鮮の思惑は2012年に飢餓前すなわち金日成主席の全盛期だった1980年代後半の経済水準まで回復させ、「強盛大国の大門」を開きたいというものである。そのために軽工業と農業部門の生産増を図り生活水準を高めていく。それを中国東北部と連動させて実現しようという狙いだ。金正日総書記は8月の訪中で「地形的に隣り合い工業の構造も似ている。協力を強化し中国の手法、経験を真剣に研究しなければならない」(新華社通信)と、東北部との連動に意欲を見せた。
では、中国の思惑は何か。中国にとって東北3省は新疆ウイグル、チベットとともに鬼門となっている。漢族の明は東北部で勢力を強めた満州族によって滅ぼされたように歴史的にも中国全体を揺るがす。それが東北部の地勢的位相である。吉林省には200万人の朝鮮族がおり、北朝鮮崩壊の場合、動乱が東北部に波及する恐れが高いという危惧もある。それに東北3省は現在、内陸部と同様の深刻な格差問題を抱え経済発展に大きな課題を残している。それを中国は「長吉図計画」で打開しようと考えている。長吉図計画は09年8月、中国が国家プロジェクトにした地域経済開発計画で、長春市、吉林市、図們市を結ぶ経済ベルト地帯を作ろうというものだ。その輸出ルートを日本海に設定すれば、大連に比べて輸送時間が半減できる。だが、中国側には良港がない。それを図們市から80キロの近さにある北朝鮮の羅先港に担わそうとしている。
すでに中国は08年に羅先港の一部の使用権を獲得した。北朝鮮側も羅先市を特別市に昇格させ、中国側の意向に応じた。昨年9月2日に長春市で開催された「北東アジア投資貿易博覧会」で北朝鮮の具本泰貿易次官は羅先港について「国際的な加工貿易、中継貿易地として発展させるため、必要な法的条件の整備を行っている」と述べている(世界日報10年9月6日付)。中国はすでに北朝鮮の鉱物資源を支配下に置きつつある。吉林省の通化鉄鋼グループなどの中国企業(事実上の国営)が北朝鮮の茂山鉱山に投資し、05年以降、開発権を握ってきた。茂山鉱山は中国国境に接する咸鏡北道にあり、鉄鉱石の埋蔵量が北東アジア最大規模の30億トンとされる。さらに中国企業は龍謄鉱山(平安北道)、徳顕鉱山(同)、龍謄鉱山(同)、熊津鉱山(咸鏡南道)などの採掘権を獲得している。北朝鮮は中国に「国際相場より相当安い『友好価格』で資源を渡している」(韓国月刊誌「新東亜」10年9月号)との優遇策をとっている。
「中朝血盟」を強調し軍事的関係を深める
中国は金正恩後継の「体制保証」を決めて以降、畳み掛けるように北朝鮮との関係を強化している。金正恩氏の“お披露目”となった昨年10月10日の朝鮮労働党創建65周年記念日の軍事パレードには中国共産党の治安担当、政法委員会書記の周永康政治局常務委員を送り込み、ひな壇で金親子と並んで閲兵した。新たな経済技術協力協定にも調印した。昨夏以降、北朝鮮の国家安全保衛部と中国の武装警察は中朝国境のみならず中国各地で「脱北者狩り」を共同で行っているとされ、その中国側の責任者が周永康氏なのである。また昨年10月12日には北朝鮮の金桂官第一外務次官が訪中し、13日には吉林省図們市に北朝鮮特産品の販売市場を開設、北朝鮮労働者約100人を図們市が受け入れた。14日には北朝鮮の辺仁善人民武力次官が訪中、16日には朝鮮労働党の文景徳書記(平壌市党責任書記)を団長とする親善代表団が訪中した。直轄市と道の最高責任者が参加する異例の代表団である。そして10月下旬には中朝でそろって朝鮮戦争への中国義勇軍参戦60周年記念式典を開催した。中国から元参戦兵代表団や郭伯雄中央軍事委員会副主席を団長とする軍事代表団が相次いで訪朝したのである。北京で昨年10月25日に開催された記念行事に中国の習近平副主席が軍事委副主席として初デビューし、中国の朝鮮戦争参戦に対して「偉大な抗米援朝戦争」「侵略に対抗した正しい戦争」「中朝の人民は両国の人民と軍隊が流した血で結ばれた偉大な友情を忘れたことがない」と、北朝鮮の南侵を容認するかのような「中朝血盟」発言を行った。
こうした発言を中国指導部は近年、慎んできただけに韓国は歴史的事実を歪めているとして批判したが、こうした発言が飛び出すほど中朝関係が親密になっていると見ておかねばならない。さらに昨年10月26日、北朝鮮は異例の駐中国大使の交代を行った。前任の崔秉官氏は昨年4月に着任したばかりだが、新たに池在竜朝鮮労働党国際部副部長を任命した。池氏は金正日総書記の義弟・張成沢国防副委員長に近い人物で、中国共産党との交流に精通しているとされ、中朝関係の深化を目指すのは確実である。このように金正恩氏の登場後、中朝関係は緊密さを増している。こうして中国は北朝鮮を飲み込もうとしているのである。
中国艦船が寄港し日本海の覇権も狙う
そして今回の中国軍の羅先進駐である。朝鮮日報によると、昨年12月から同地に中国代表部が常設され、現在中国は、羅先港の埠頭(ふとう)の改良、補修を終え、東北地区の資源を南方に輸送しているという。1月3日、中国の新華社通信と吉林省の現地メディアは、中国が昨年12月7日に吉林省琿春市の鉱山で生産された2万トンを上海などに輸送する際、羅先港を初めて使用したと伝えた。今年4月からは中国側の電力が羅先地区に供給されるという情報もあるという。
軍事的視点として見逃してはならないのは、羅先に中国軍艦が寄港する可能性である。金田秀昭・岡崎研究所理事(元海将)は日本経済新聞で次のように述べている(1月16日付)。
「中国は自国艦船利用をも念頭に、インド洋に面した各国で港湾建設など『真珠の首飾り』と呼ばれる海洋戦略を進めている。今回の羅先の拠点化もその延長線と見るべきだろう。マラッカ海峡に依存するリスクを少しでも分散するために、欧州から北極海を経てベーリング海を通り日本海へ抜けるルートを開拓しようとしている。北朝鮮で石油などの資源や物資を荷揚げし、中国へ運搬するためにも、羅先は将来、要所の一つになり得る。羅先港は伝えられる港湾の規模などからみて、単なる商業港のみならず、軍艦の寄港も想定されている可能性もある。日本海は今後、安全保障を含めた国際的な海上交通路の要衝としての意味あいが高まるだろう。日本政府は中国の動きを注意深く観察するとともに、その意図が何であるかを絶えず確認していく必要がある」
中国軍の羅先進駐は日本海に波乱を呼び起こす一歩になる可能性がある。中国は日本海の覇権も狙っているのだ。韓半島情勢だけでなく東アジア情勢全体への影響を我々は注視しなければならない。
2011年1月18日


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