思想新聞【1999年11/15日号 視点論点】

スタンフォード大フーバー研究所顧問
片岡 鉄哉 氏
武力恫喝に謝罪と大金取られるだけ
日朝国交正常化交渉は、北朝鮮の武力恫喝で始まったものだ。日本は得るものはない。ただ大金と謝罪をとられるだけだ。こんな前例を作るよりは現状維持でいくべきだろう。
それにしても、どうして政府はこれほど不甲斐ないのか。答えは、憲法の制約で、武力の恫喝に言うなりになるしかないことだ。よど号を乗っとられようが、リマの大使館を占領されようが、こちらが頭を下げて、大金を払い、退きとってもらうしか道がない。政府がぐうたらなのは、国民が阿呆だからである。紛争を避けるために、いくらでも金を払うと国民がいうのだから、自民党の仕事は簡単きわまりない。森総理でもつとまる。
北朝鮮に拉致された日本人が十人ほどいる。ところが彼らの市民権は、外国人居住者の参政権ほど大事ではないのであろう。自民党には選挙の票の方が欲しいのだ。
日本の足かせで米軍は張子の虎
阪神大震災では六千人が死んだが、自衛隊の出動を拒否した村山総理は非難されない。災害救助はボランティアでやろうという国民運動が広まった。さすがに、オウム真理教の「人権」を国民の市民権より重視する政府は批判されたが、うやむやになった。
国際紛争に対する自民党の処方箋は、内政問題に対するものの延長である。すべては財政支出のばらまきで処理する。これは財政が破綻するまでやるのだろう。来年、消費税増税が不可避になる。これで自民崩壊か。
日朝交渉のきっかけは米朝交渉であり、これは武力恫喝で始まったのである。相手は核兵器と運搬手段を持っている。北朝鮮のポスターでは、三本のテポドンが飛んでいる。標的は日米韓だが、一番いいカモは日本である。日本は核攻撃の人質にとられている。これで米軍はお手上げとなった。
相手が先に攻撃すれば米軍は報復できるが、こちらから手は出せない。勿論、日本が独自の核報復兵器を持てば、米軍は、日本を心配しないで戦争をする自由を取り戻すことができる。だが日本は反核で動かない。ここに至って、アメリカは張子の虎になった。ペリー報告が暗に認めている点である。
クリントンがまともな大統領だったら現状維持で据え置きにしただろう。だが彼は票稼ぎのために何でもやる男である。イスラエルにも無理な和平を押しつけたので、逆に戦争になった。
北朝鮮にも懐柔と買収をやってみようとクリントンが考えた。これを見てとった金大中は、自分のイニシャディヴで懐柔をやることにした。ただし韓国に金はないから、日本政府に出させる。これでは解決にならないどころか、平和を脅かすことになる。ノーベル賞目当てのペテン師だといいたいところだが、クリントンの猿まねに過ぎない。
米国真似る韓国の真似をする森首相
今まで冷戦で分断された国家で統一されたのはベトナムとドイツである。双方とも、崩壊した側が吸収された。だが朝鮮半島ではこれはあり得ない。ましてや中国が北朝鮮という緩衝地帯を必要としている以上、統一は不可能である。現状維持しか選択はない。
金大中は一時的な風を起こしたに過ぎない。最近、クリントン訪朝が浮上したのは、金大中の対中のめり込みに対する牽制である。生意気なことするな、というのだ。韓国が米国の後ろ盾を失ったら、中国の属国になるしかないのである。
しかし金大中の軽薄な動きに韓国世論がうつつをぬかしている。韓国人は何をやらかすか私には信頼できない。「ヤンキーゴーホーム」となれば、日本にも飛び火するかもしれない。今アメリカを追い出したら、日韓は総崩れになる。
この世には現状維持しか選択がない場合があるのだ。だが森総理は、クリントンの真似をする金大中の、その真似をしようというのだ。そして国交回復で参院選挙の票をかせぐ魂胆である。しかし、兆単位の賠償を国民が歓迎するだろうか。拉致された日本人は日本が強く生まれ変ってから取り戻せる。


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