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世界に貢献する日本のODA・2

【思想新聞2004年5月15日号】 視点論点

強い日本を求めるアジア諸国

元中央大学教授 長谷山崇彦氏

◆自助努力の重視を

 日本のODAには借款比率が他の先進国と比較して高いという特徴がある。無利子や低金利で、返済期間が長期となる。対して、返還を必要とする借款は本当の「援助」ではないという批判が援助国からある。
 しかし、日本は戦後の飢餓と貧困のどん底から自助努力で先進国・経済大国になった。新幹線も愛知用水も世界銀行から借りて建設し、利子をつけてきちんと返した。それが終了したのはわずか14年前。その経験と教訓から、発展途上国には自助努力を喚起する援助にするのが日本の援助の基本方針になった。
 そこで、無償援助を少なくし、無利子でも良いから借金は返す自助努力を支援する方針にしたのは当然で、日本がケチだからではない。日本のODAに無償援助が少ないから打算的という批判は当たらない。
 さらに発展段階別に援助方法を変えるべきだ。最貧国には食・衣・住の基本的人間のニーズを無償援助。その上で、発展の基盤となる農業や社会経済のインフラを援助する。次の段階の国には、農業だけで増大する人口を吸収できないから、工業を発展させる援助、それも対象国の技術水準に応じた援助を行う。日本が援助した東アジア諸国が成功した経験では、「複線的成長メカニズム」が重要だ。
 まず軽工業を興し、発展すれば重化学工業を興すのが昔の発展理論だった。しかし、アジア経済研究所にいた当時、それに反論し、輸出指向型の軽工業と、原材料を提供する鉄鋼・化学など重化学工業を並行的に発展させるべきと主張し、現にそれで成功している。
 次の工業化の段階では、韓国や台湾のように発展途上国と競合しないよう、IT産業を発展させる必要があり、そのためハイテク先進国から技術を導入する。大きくみて、こうした発展段階に応じ援助の仕方を見直す必要がある。援助の内容は重要な研究課題で、アジアでもミャンマー、ラオス、カンボジアは発展が最も遅れているので、最貧国としての援助が必要だ。
 日本のODAや民間援助は平和時には強いが有事に弱い。イラクの復興支援に対する自衛隊の派遣が問題になっているが、日本が国際社会に貢献するには、平和時だけでなく有事にも援助できるようになるべきだ。ODAは軍事は除外しているが、災害救済や復興支援に自衛隊を派遣する場合には使えるようにしてもいい。
 現憲法を遵守する限り、有事に自衛隊を派遣することには限界がある。その度に国会で大騒ぎをし特別措置法を作らないといけない。今の国際情勢下では、武器を携帯した自衛隊の派遣も必要で、やはり現状に合わせて憲法改正も必要である。世論調査でも国民の過半数が改正に賛成している。
 小泉政権が支持されるのは、靖国参拝を信念で押し通す強さを国民が評価しているからだろう。特に、中・韓両国の反対で、多くの首相は公式参拝を見送ってきたが、こうしたいわば土下座外交を支持しない時代になった。
 戦後60年、国民は有事の際も世界をリードできる強い日本と政府を求めている。軍事大国を目指すわけではないが、軍事的に解決しなければならない国際問題がある場合、貢献できる強い日本になるべきだ、とのスタンスを国民が支持している。
 湾岸戦争の頃、私は国際交流基金から派遣され、フィリピンのデ・ラサール大学で日本の発展戦略を教えていた。日本大使館のパーティーの席上、日本留学経験のある米国大使館の若い一等書記官に、湾岸戦争に日本は130億ドル拠出したが一兵も派遣しなかったのは残念と言われた。同席のアジアの外交官も同じ意見だった。
 アジア諸国でも日本が友邦として憲法改正しアジアの平和維持に貢献できる軍隊を持つのに賛成する有識者が多い。彼らが恐れるのは中国の軍事的覇権。これに対抗するには日本が欠かせない。アジアの平和を守るため日本がハイテク軍隊を持つことには賛成で、むしろ期待している。それを聞いて驚くのは日本人の方だ。

◆顔の見える援助を

 これからは「顔が見える援助」が大切で、もっと小さい所に目を向けるべきだ。例えばインドの人口の70%以上が住む農村では、ほとんどの農家にトイレがなく女性たちは夜、集団で森や畑で用を足す。毒蛇や野獣、痴漢に襲われたりする悲劇をなくすには村に簡易式共同トイレを作ればよい。
 また各戸に井戸がなく、共同井戸を利用するためコレラなどが蔓延する。衛生的な水が出る井戸を掘るには約250ドルかかる。村に電線はあるが灌漑用で、各戸には配線されない。家に電線を引く金額は約60ドルにすぎない。こうした身近な援助は本当に感謝される。さらに、村に電灯が点く小学校の建設も大変な貢献。このような援助は道路やダムを造るより遥かに少ない額で、しかも感謝される「顔の見える援助」だ。(取材・協力=世界思想、文責・編集部)

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