この記事は2011年3月3日に投稿されました。
米軍と韓国軍による定例の合同軍事演習「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」が2月28日から始まった。今回の演習は「情勢急変への備え」を主眼としており、北朝鮮における有事すなわち金正日総書記の急死など権力の不在で北朝鮮国内が不安定化し、内戦や暴動の発生や核管理能力を喪失させるなど6種類の「急変事態」を想定している。このために米軍特殊部隊による北朝鮮侵入や核脅威の除去訓練も実施されると伝えられる。このうち「キー・リゾルブ」は3月10日まで指揮系統の確認を軸として展開、「フォール・イーグル」は野外機動演習を主に行う。米軍は在日部隊を含め約1万3千人、韓国軍は予備役を合わせて約20万人が参加し、ほぼ例年並みの規模で行う。米韓共同の「作戦計画5027」に基づいて全面戦争を想定した演習・訓練となるとしている。4月30日まで続けられる。
「ソウルを火の海にする」と恫喝する北朝鮮
昨年の同時期にも米韓軍事演習が行われたが、北朝鮮はこの演習に対抗する形で3月に哨戒艦「天安」を魚雷攻撃で撃沈した。昨年11月の北朝鮮による延坪島砲撃事件を受け米韓両国は11月28日から12月1日まで黄海において米原子力空母「ジョージ・ワシントン」など最新鋭の装備を投入して行った。全面戦争に対して米韓は「作戦計画5027」で対応し、核兵器に対しては米国が「核の傘」を提供する核抑止力で臨んできたが、局地戦への対応策は不十分だった。延坪島砲撃はその隙をつかれた。そのため11月の訓練は局地戦への対応がメインだった。今回は再び「作戦計画5027」に基づく全面戦争への対応を訓練する。
これに対して北朝鮮は「ソウルが火の海になる」と恫喝している。2月28日の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「北南対話を破綻させる許せない反民族的行為」と非難し、「朝鮮半島で核戦争が起きる危険が一層高まった」と拳を振りあげている。共同通信によると、対韓国窓口機関「祖国平和統一委員会」幹部は同日、ホームページ「わが民族同士」で演習を「われわれを狙った侵略戦争演習だ」とし、李明博政権への批判を強めているという。米韓両軍は北朝鮮の軍事挑発への警戒を強化し粛々と軍事演習を進めていくとしている。
米韓両国は昨年11月の延坪島砲撃を受け軍事同盟の強化に乗り出しているが、東アジアの安全は米韓両国だけでは機能しない。米軍が在日米軍基地をメインに据えて東アジア情勢に対応しており、米韓だけでなく日本がこれに加わり、米韓日の3国軍事同盟によって対応していかねば真の防衛にならない。それにはもとより日本側の「憲法の壁」と韓国側の「反日感情の壁」を越えねばならない。北朝鮮有事は韓半島だけの問題に終わらず東アジア全体に及ぶ。日韓両国とも「アンシャン・レジーム」(旧体制)からの脱却が急がれる。
第2次朝鮮戦争は日本攻撃で火蓋が切られる
韓半島有事すなわち第2次朝鮮戦争の戦火が北緯38度線(軍事休戦ライン)から切って落とされると考えたら大間違いだ。対日本攻撃から始まるというのが専門家の見方だ。北朝鮮が敗北を免れるためには最終的には米軍を抑えねばならず、それには在日米軍を叩くことが不可避だからである。つまり、第2次朝鮮戦争では北朝鮮の第1撃は日本から始まることを想起しておかねばならない。クリントン元米大統領の回想録(『マイライフ クリントン回想』)によれば、1990年代の核危機では「たとえ戦争のリスクを冒しても、断固として北朝鮮の核兵器開発を拒むつもりだった」と述べている。当時、米国と韓国の参謀本部は合同で『危機に備えた米韓の連合作戦』(1992年)と題して、第2次朝鮮戦争のシナリオを描いていた。
その第1幕には「日本」とのタイトルがつけられていた。戦いの最初の天王山は日本の”争奪戦”になると見ていたからだ。北朝鮮はまず、政治的に日米を分断して日本を戦線から離脱させるために在日米軍基地や主要都市にミサイル攻撃を仕掛け、さらにゲリラを日本に侵入させて基地や原発などを襲撃、左翼マスコミに「米軍がいるから日本が攻撃される」との論調を張らせ、厭世気分を高めて米軍の行動を封じ込めようとすると見ていたのだ。この日本攻撃と同時に北朝鮮の機甲部隊が38度線の軍事境界線を突破する。朝鮮人民軍は①第1段階として24時間以内にソウル市内を流れる漢江まで占領②第2段階で韓国中部の大田市まで占領③第3段階として1週間で釜山市まで占領する(1996年にミグ19戦闘機に韓国に亡命した李チョルス大尉の証言)。北朝鮮軍はこの計画のもとで軍事訓練を行っているという。言うまでもなく第2次朝鮮戦争ではこの「即戦即決戦略」を発動するというのだ。
核兵器や生物兵器の危機も迫る
日本が第1段階で北朝鮮の”謀略”を封じ、後方基地として持ちこたえ、周辺事態方を発動して米軍支援をスムーズに行えば、米韓両軍の反攻が開始できる。例えば米軍は沖縄に展開している海兵隊、横須賀と佐世保を母港とする第7艦隊、さらには青森・三沢と沖縄・嘉手納の空軍が韓国支援に出動する。そしてハワイから軽歩兵師団、米西海岸ワシントン州から第1軍団などが東京・横田基地などを経て韓半島に出撃する。最終的に米軍は陸軍50万、空軍1600機、艦隊200隻(うち空母5隻)を集結させて北朝鮮軍を押し返し、逆に北朝鮮全域を制圧して韓国主導の南北統一が達成される。『連合作戦』はそう描いているのである。だが、犠牲者の数はおびただしい。ソウルを中心に3日間で100万人規模の死傷者が出るとシュミレーションしている。ただし、日本での犠牲者は入っていない。もちろん、これは90年代のシナリオで、それ以降、米軍の軍事革命は著しい。しかし逆に北朝鮮は核カードを持つに至っている。米CIAによると北朝鮮は炭疸菌やコレラ菌、天然痘などの病原体を使った生物兵器の実戦化を図っているという。こうしたシナリオを見ても韓半島有事が日本にとって対岸の火事でないことは明白だろう。
国連軍の後方基地となっている日本を直視せよ
そもそも韓半島で衝突(全面戦争でなくとも)が勃発した際、在韓米軍司令官(在韓・国連軍司令官でもある)が戦時作戦統制権を持っていることを忘れてはならない。平時における作戦指揮権は1994年に韓国軍に移管されているが、戦時は依然として在韓米軍司令官が握っているのだ。わが国は国連との間で、朝鮮動乱が休戦した直後の1954年、米英仏国など11カ国と「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」(国連軍地位協定)を結んでいる(現在8カ国)。協定では現在、東京都の横田基地に国連軍後方司令部(在日米陸軍後方司令部)を設置し、ここに協定国から23人の連絡将校団が常駐している。さらにキャンプ座間や横須賀・佐世保の在日海軍基地、嘉手納・普天間・ホワイトビーチの沖縄在日米軍基地が国連軍基地として使用されている。だから韓半島有事で米軍(国連軍)が動けば、同時に在日米軍基地も動く仕組みなのである。当然、わが国は周辺事態法に基づいて対応するが、その場合、後方地域支援や後方地域捜索救助活動、船舶検査活動にとどまることになっている。これでは東アジアの安全を守れない。
こうした現実を直視し、防衛態勢を抜本的に改革し、米韓同盟に日本も加わって米韓日3国軍事同盟を視野に入れて東アジアの安全を守るべきである。
2011年3月3日


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