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習近平が繰り返す「中国夢」は国際社会への挑戦だ

この記事は2013年1月22日に投稿されました。

中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が、3月5日に北京の第一回会議で開幕し、同17日、習近平新国家主席による就任演説とともに閉幕した。
 習主席は25分間の就任演説で、「中華民族の偉大な復興という『中国の夢』を実現するため、努力と奮闘を継続しなければならない」と述べるなど、「中国夢(チャイニーズ・ドリーム)」という言葉を9回も用いた。実はこの言葉は、習氏が党総書記に就任した直後の昨年11月以来、繰り返し演説で用いられており、いわば習氏のキャッチフレーズのようになっている。
 これと似た言葉に「アメリカン・ドリーム」があるが、その内容は驚くほど対照的だ。「中国夢」とは、中国の強烈なナショナリズムを意味しているのである。

中国こそ宇宙の中心とみる「中華思想」

「中国夢」の原点は、アヘン戦争(1839年)にまでさかのぼる。
 アヘン戦争に敗れる前の清国は、モンゴル、チベット、ウイグルを組み込み、中国史上最大の版図であると同時に、当時の世界最大の帝国でもあった。彼らは、中国こそ宇宙の中心であり、中国の文化や思想こそが最も神聖であると考える「中華思想」を自負していた。ところが、この「中華思想」の世界観は、列強の進出によって完全に覆されてしまったのである。
 清国がアヘン戦争に敗れると、南京条約によって香港が奪われた。さらにイギリスは清国に対して賠償金の支払いと上海などの開港、治外法権、関税自主権の放棄などを課した。宇宙の中心だったはずの清国が、イギリスとの圧倒的な軍事力の差を見せつけられ、さらに不平等条約を無理やり飲まされたのだ。そしてこれ以降、この不平等条約に他の列強諸国も便乗し、清国の富と力はことごとく奪われてしまったのである。
 この「中国夢」が、現代の国際社会の法のもとに成し遂げられるのであれば何の問題もないだろう。中国がさらに経済成長を成し遂げ、世界の経済のエンジンとなること自体には何ら異論はない。むしろ中国が大国として、国際社会の秩序を維持する役割をさらに果たすのであれば、それは多くの国々が望むところだ。
 しかし習氏が語る「中国夢」とは、国際法に基づいて実現されるものでは決してない。むしろ「中国夢」とは、国際社会に対する挑戦を明確に意味しており、ここに大きな問題があるのである。
 習氏が強調する「中国夢」には、次のような中国人の意識が横たわっている。
 「かつて中国の富と力は、列強によって不当に奪われた。漢民族は宇宙の中心にあるべき民族だが、当時の中国の国力は欧米諸国に劣っていたので涙をのんで耐えるしかなかった。しかし今はそうではない。経済力、軍事力において中国は世界の大国としての地位を取り戻した。今こそ中国は、かつて欧米に力ずくで奪われた歴史を取り戻すべきだ。かつて欧米が圧倒的な軍事力で欧米中心の歴史を作ってきたように、これからは中国を中心とした歴史、中国を中心とした世界秩序を作るのだ。現代の国際法そのものが欧米の力によって不当に作られたものなのだから、これを中国が覆すのは至極当然のことなのだ。」
 習氏は、昨年11月に共産党総書記に就任して以降、自身の演説の中で次のように語っている。
「アヘン戦争敗北以来170年余にわたり屈辱の歴史を背負わされてきた我が中華民族が、ついに偉大なる復興への道を探り当て、世界を瞠目させる成果を収めつつある。中華民族の偉大なる復興こそが近代以降の中国人が最も強く待ち望んでいた夢である。この夢には過去のいくつもの世代の人々の深い思いが込められている。」

「中国夢」の覇権的野望を警戒せよ

そしてこの「中国夢」は、今やただのスローガンではなく、実現可能な施策となりつつある。全人代で公表された国家予算案では、中国の国防費は前年比10.7%増の約11兆1000億円だ。日本の防衛費は11年ぶりに増加されるが、それでも4兆7000億円だから、中国の防衛費は日本の2.4倍にもなる。
 イギリスの国際戦略研究所(IISS)が公表した報告書によれば、「中国の国防費は現時点で、近隣の日本、韓国、台湾を合わせた規模を上回っている」という。さらに中国の国防費が今のペースで毎年増え続ければ、10年以内に米国と同等の規模になるというのだ。
 中国は、アヘン戦争で開戦初日に海軍が壊滅してしまったという苦い経験をもっている。「中国夢」を真に実現するためには、海洋覇権を確固たるものにしなければならない。これが今回の全人代で強調された「海洋強国化」だ。清国でも実現できなかった海洋覇権の確立が、まさに「中国夢」実現のための大きな柱となっているのだ。
 このため中国は、国家海洋局の権限を大幅に強化し、海軍の支援も受けられるようにした。尖閣海域における日本の海上保安庁に対抗しようとしているのは間違いない。今後も尖閣海域における中国公船による領海侵犯が続くことは明らかだ。日本側が手をこまねいていれば、今後は日本漁船の拿捕や船員の拘束も十分起こりうるだろう。
 習政権は日本やアジアの安全保障に対する挑戦を明確に表明した。
 日本としては、集団的自衛権の行使を可能にし、日米同盟をより強固にすることで抑止力を高めることが最優先だ。ただし米国では、国防費の長期的な強制削減が見込まれている。中国の覇権主義から自国の領土を守るために、中長期的な日本独自の防衛体制を今から構築するべきである。

2013年3月22日

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