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File-19 社会主義的人間観のドグマが拍車

子供を家庭から奪い国家管理を強いた旧ソ連

思想新聞2000年10月1日号 シリーズQ&A 共産主義は間違っている!!

フェミニズムの仮面を被ったマルクス主義 3

社会遺伝子工学教育の愚

一層の隷属状態に置かれた女性


先回のロシア連邦軍縮局長のユーリ・オシピアン博士の見解は、非常に興味深いですね。「労働による社会的奉仕」を強いられた女性は、まさにエンゲルスが「専業主婦は男性というブルジョア階級から搾取された奴隷状態にある存在」と言った、それ以上の過酷な「奴隷状態」におかれてしまったわけですね。他の二点はどのようなものですか。


オシピアン博士が1999年のソウル平和国際会議の基調講演でスピーチした第二点は、次のようなものです。

ソ連でも子が紅衛兵化し親を告発

「(母親が過酷な状況に置かれ、家族が絆も実質的な効力も失い、社会の基礎単位としての家庭を破壊したという)このような環境の下、子供たちは成長の最も重要な時期の人間性教育が阻害され、社会主義的な人間観のドグマがそれに拍車をかけた。20年代、共産党指導者ブハーリンは《両親には自分の子を育てる権利はない》とまで言った。国家が子供の《管理者》だという思想は、子を早い時期に《社会主義化》するため、家庭よりも学校を教育の基本的機関として重視。国家教育は次世代を《共産主義理想への献身的な帰依者》に養成した結果、スターリン時代に何百万人の親たちが自分の子供に《国家の敵》として告発され、KGBに引き渡された。このような《社会主義的発展》のための《社会的遺伝子工学》による教育の後遺症は、自由民主主義を目指している今日のロシア社会における重大な心理的障害となった」
 この証言で非常に興味深いのは、「我が子に《国家の敵》として告発される」という悪夢です。これはすなわち、1960年代後半~70年代前半にかけての中国で「走資派」に実権を握られた毛沢東が「リベンジ」の動機に駆られて、四人組を通し権力を奪い返そうとした悪名高き「文化大革命」の嵐が吹き荒れましたが、そのロシア版と言っていいでしょう。

*「ドグマ」とは 特定の宗教や哲学、政治などの思想体系における基本的な教義や原理を指す。これは、その思想体系の信者や支持者が絶対的に信じるべきとされる教えであり、一般的には議論や疑問の対象外とされる。

理想と現実の乖離に悩むロシア

 F・A・ハイエクの指摘を待つまでもなく、これは共産主義と社会主義が本質的にもっている「国家主義」な側面にほかなりません。子供に対するイデオロギー的教育は、あのナチス政権下でヒトラーがやらせていたことでもありました。ですから、「子供は国家に属する」とは、それほど新しい考え方ではありません。実は古代ギリシア、都市国家アテナイ(アテネ)のライバルであったスパルタは、まさに国家社会主義的な政策を行っていました。教育は家族から引き離し全寮制の学校で厳しい教育を行いました。ここから「スパルタ教育」という言葉が出てきたわけです。スパルタは質実剛健で知られるドーリア人のポリス(都市国家)であり、軍事国家として有名でした。
 さらにオシピアン博士は第三点として、次のように言っています。
「ポスト・ソ連時代のロシアは今や、国連の《児童権利宣言》に示された民主主義社会における家庭の理想と、現実の家庭が直面している経済的環境との間の極端な矛盾に苦しんでいる。さらに、社会主義経済が崩壊した影響と、近年の金融危機は、社会保障制度の不備と相まって、追い打ちをかけるように教育環境にも深刻な状況をもたらしている」
 オシピアン博士の言及は、教育問題にすぎないように見えますが、やはり女性問題も教育問題も、つまるところは「家族観」の問題に収斂していくわけなのです。

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